今週は夏休みという方が多いでしょう。夏は行楽や帰省など消費が嵩みますので、そのために予算を組んでいらっしゃる方も多いと思います。ただ今年のように例年にない酷暑、雷雨の繰り返しとなると体力的、精神的だけでなく、お財布的にも参ってしまう方が多いかもしれません。今年は新たに「猛暑貧乏」なる言葉が生み出されています。
新しい言葉といえば、「金融老年学」(金融ジェロントロジー)という言葉をご存知でしょうか。まだ学問としての定義が正式には確立してはいないようですが、米国の富裕高齢層に対する金融サービスに関わるビジネスを研究することを始まりとし、加齢が経済や金融行動に与える影響を研究するもので、まだまだ新しい研究分野です。
もう一つ「老年学」と呼ばれる学問があります。認知機能などの医学、高齢者心理、生きがい等の心理学、福祉、年金をはじめとする社会保障や暮らし方といった社会学など幅広く研究するものです。今後、金融老年学、老年学を経済学や認知科学などと組み合わせた総括的な学問体系になっていくようです。
前回の老齢年金の話以外にも、老後資金については何度も取り上げてきていますが、人生100年時代と言われ、誰もが漠然とした不安を持っています。
FPの行うファイナンシャル・プランニングは「老後」だけに焦点を当てているわけではなく、現在から老後にいたるまでの生涯の経済面のサポートとなるべくプランをするもので、その過程において「どういった生活がしたいのか」「何を目標としたいのか」といった点を見つめ直し、年金や保険といった必要事項の確認と見直しを行います。将来、資金が足りないと考えられた場合、どのようにしてお金を増やすべきなのか、投資方法や金融商品についても相談します。
「老年学」および「金融老年学」を連携させた内容とも言えますが、新しい研究分野にある加齢による判断力の変化や認知機能という点についてはFPのプランの中では触れていません。現役時代に自身の老後までのプランを考えることが目的だからですが、今後年齢を経てプランを見直していく際には、将来の自身の判断力を過信せずに「成年後見制度」に至る前に「任意後見制度支援信託」「家族信託」などを活用することも検討することが必要となってくるでしょう。(「成年後見制度」は判断力が不十分になってから利用されます。)
人はいきなり高齢者になるわけではありません。高齢者としての枠組みの年齢になった途端に学問対象としてあれこれ周囲に考えてもらっても、本人が望む、満足するものを得られるとは限りませんし、それどころか手遅れになってしまう・・・経済面だけではく、精神面でも老後破綻となりかねません。
冒頭の「猛暑貧乏」もひと夏だけで済み、涼しくなって「今年の夏は大変だったね」と笑って言えるものであればよいのですが、こうした異常気象はいつまで続くかわかりませんし、それが少しずつ積み重なると長期的に影響が出る可能性もあります。
投資には短期から長期と様々なスパンと投資スタイルがありますが、資産を形成していくことに関しては様々な事態を想定し、長期的視野と余裕を持つようにしていきたいものです。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員