3日からの5連休に入る前、日経平均は3日連続で年初来高値を更新し、約8ヶ月ぶりの高値まで駆け上がった。そうしたタイミングで迎えた大型連休後半である。米国では地銀の破綻懸念がくすぶる中でFOMCや雇用統計というビッグイベントが控えていた。僕もその一人だが市場関係者は気が気ではなかったことだろう。
果たして2日、東京市場が閉まった夜のNY市場で米国株は急落した。ダウ平均は300ドルを越える大幅安を演じ、その後も3日続落となった。3日間の下げ幅は900ドルを越えた。ポジションをキープしたまま連休に入った投資家は、この時点で天を仰いだに違いない。ところが、である。週末5日の雇用統計が強く、米国の景気懸念が和らぐと、売り込まれていた地銀株のショートカバーも巻き込んでダウ平均は500ドル超の大幅反発に転じた。ナスダック総合に至ってはそれまでの下げを取り戻して年初来高値をつけた。
連休で東京市場が閉まっていたことが結果的に「吉」となりそうだ。週明けの東京株式市場は、先週末5日の欧米株市場の大幅高を好感し、堅調に始まるだろう。
そうは言っても上値追いには慎重にならざるを得ない。最初の関門は9日に発表されるFRB(米連邦準備制度理事会)による上級銀行貸出担当者調査(SLOOS:Senior Loan Officer Opinion Survey)だ。今回の4月調査の期間は1-3月期のもの。シリコンバレー銀行破綻に端を発した金融不安がすでに始まっており、融資態度がどこまで厳格化しているか注目が集まる。その程度によっては米国景気の先行きに対する悲観的な見通しが強まりかねない。
次には10日に米CPIの発表がある。雇用統計では平均時給の伸びが前月より加速した。CPIの総合よりも賃金インフレを反映しやすいサービス価格の上昇率が注目される。サービス・インフレの粘着性が統計で明らかになるとFRBの利上げ長期化の思惑が高まり、売り要因となる。先日のFOMCは声明文では利上げ停止を明確に示唆したが、その後のパウエル議長会見で分からなくなった。6月のFOMC以降の利上げ継続を見極めるうえで今回のCPIは重要な意味を持つ。
国内要因としては決算発表が佳境を迎える。見どころは多いが、あえて1社に絞れば10日のトヨタだろう。先んじて発表されているトヨタ系自動車部品メーカーの好決算や、トヨタの自動車生産台数が過去最高を更新したとの発表を考慮すれば、前期実績の上ぶれ着地と今期予想の良好な見通し発表が期待できる。トヨタの好決算は日本株市場全体のセンチメントを明るくするだろう。
予想レンジは2万8900円~2万9600円とする。