モトリーフール米国本社、 2023年3月28日 投稿記事より
主なポイント
・銀行危機の影響で、バンク・オブ・アメリカの株価も下落
・目先の懸念材料はあるものの、バンク・オブ・アメリカにはそれを乗り越えて反発する力がある
・足元の株価は、非常に魅力的なバリュエーション
新たな投資先を見つけるのに有効な、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオ
銀行セクターが危機に直面する中、ウォーレン・バフェット氏が同業界に精通していることから、同氏が率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が地方銀行株に投資するのではないかとの憶測が広まっています。
確かにその可能性はありますが、今すぐにも新しい投資アイデアが欲しいなら、バークシャー・ハサウェイの既存のポートフォリオを見るだけで十分かもしれません。同社は多くの業界でさまざまな銘柄を保有していますが、中でも注目の銘柄はバンク・オブ・アメリカです。バンク・オブ・アメリカは、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中で2番目に大きいポジションを占めていますが、現在は他の銀行株と共に激しく売られています。
株価は、新型コロナウイルスが猛威を振るっていた2020年半ば以来の安値となっており、ここにきて米国最大の銀行に投資する好機が訪れています。
大きくて無視できない存在
バンク・オブ・アメリカの株が3月に入って売られたのには、それなりの理由があります。SVBファイナンシャル・グループ(SIVB)の破綻を受け、市場は満期保有目的(HTM)債券のポートフォリオで多額の含み損を抱える銀行に注目しています。
HTM債券とは、銀行が満期まで保有する意思を持っている債券を指し、四半期ごとの株主資本の計算には含まれません。そのため、仮にバンク・オブ・アメリカで多額の預金流出が起こり、そうした債券を損失覚悟で売却しなければならなくなった場合、株主資本を大幅に毀損することになります。2022年末時点で、バンク・オブ・アメリカの有形自己資本は約1,720億ドル、一方でHTM債券ポートフォリオには1,090億ドル近い含み損が眠っています。
この含み損は十分に多額ですが、バンク・オブ・アメリカは、SVBとは事情がまるで違います。バンク・オブ・アメリカは、米国内はもとより世界中で事業を展開し、企業向け融資は世界最大級の規模を誇ります。個人預金は1兆ドルを上回り、投資銀行業務やウェルスマネジメント業務も大規模に展開しています。
バンク・オブ・アメリカの預金基盤はSVBよりもはるかに多様であり、多様性においては業界内でも間違いなくトップクラスです。2022年末時点で、バンク・オブ・アメリカの銀行口座のうち、米連邦預金保険公社(FDIC)によって保護される25万ドル未満の口座数は1億1,270万件を上回りました。
流動性問題について心配はない
バンク・オブ・アメリカが債券を満期まで保有する限り、含み損が表面化することはありません。また、10年米国債利回りが3月上旬から70bp(0.70%ポイント)近く低下しているため、バンク・オブ・アメリカが保有する米国債の含み損が減少し、バランスシートの組み替えができるようになる可能性もあります。
それに、バンク・オブ・アメリカが流動性に問題を抱えているという兆候はありません。3月中旬にシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行が破綻した直後、メディア各社はバンク・オブ・アメリカに150億ドルに上る預金が流入したと報じました。3月22日には、バンク・オブ・アメリカは、固定金利と変動金利のシニア債合計10億ドルを1年以上前倒しで償還したと発表しました。さらに、バンク・オブ・アメリカは50億ドルの預金をファースト・リパブリックに注入しており、いずれも同行が流動性問題に直面していないことを示唆しています。
預金残高の動向を考える上では多くの変数があるため、こうした動きがどのように展開するか、現時点では明言できません。確かに、バンク・オブ・アメリカにはより多くの預金が流入しているとみられますが、同時に、金利の低い当座預金口座の顧客の多くが金利の高い預金商品に移行している可能性もあります。
また、ボラティリティを考えると、バンク・オブ・アメリカが満期の長い債券に新たな預金を投入することに積極的になるとは思えず、資金を投入するとしても短期証券になると思われます。バンク・オブ・アメリカが保有債券の売却を迫られるような流動性問題に直面しているとは考えられません。それどころか、同行の預金残高は2023年第1四半期に、SVB破綻前に予想していたよりも、増加している可能性があります。
今回が絶好の買い場かもしれない
依然として不透明な要素が多く、混乱が一巡したのかどうかは判断できかねます。経済がリセッションに向かっている可能性もあります。しかし、業績面では若干の逆風に直面するかもしれませんが、バンク・オブ・アメリカは引き続き、長期的に良好なパフォーマンスを維持すると予想されます。
現在、バンク・オブ・アメリカの株価純資産倍率(PBR)はわずか1.23倍であり、2017年以来の低バリュエーションとなっています。
バークシャー・ハサウェイが過去3年間に他の銀行株を売却する一方で、バンク・オブ・アメリカのポジションを増やしてきたのには理由があります。バンク・オブ・アメリカは困難な環境に耐え、切り抜ける力があるのです。今回もそうなると考えられます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。SVBファイナンシャル・グループは、モトリーフール米国本社にクレジットおよび銀行サービスを提供しています。バンク・オブ・アメリカは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。元記事の筆者Bram Berkowitzは、バンク・オブ・アメリカの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はバンク・オブ・アメリカ、バークシャー・ハサウェイ、SVBファイナンシャル・グループの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。