“It’s the economy, stupid” (経済なのだ、愚か者)。大統領選挙でクリントン政権がこの標語を掲げ、外交政策で成果を示すブッシュ陣営に対抗し勝利しました。その後も折に触れ聞かれる言葉ですが、株式市場においても当てはまるでしょう。

GDPと株式市場は同じ方向に動き、期待が乗ればバリュエーションの拡大を伴い成長以上に株価は上がります。米国株の長期上昇トレンドは成長と期待に沿った動きであり、一方日本株は長期デフレ下での株価もみ合いから、脱デフレと共に持ち直してきました。中長期の株価を占う上では持続的成長性が注目されますし、短期的には世界経済の鈍化が気になります。

米国で銀行が破綻し、欧州でも大手銀の苦境が取り沙汰されています。共にリスク管理が稚拙であったことによる個別要因もありますが、金融引締めによる景気減速の影響が顕在化してきたのでしょう。

昨年終盤に英国年金基金が急速な金利上昇で危機的状況に追い込まれたこともありましたが、ダーウィンの進化論でも言われるように変化に対応しないと生き残れない事例を目の当たりにしているのではないでしょうか。

急速な利上げによって環境は大きく変化しています。今後も借入比率の高い事業分野やマーケットの振れに脆弱な運用分野などから利上げ・景気減速の影響が出てくる可能性には注意が必要です。

加えて、テクノロジーの進化もあり影響の顕在化やそれに対する対応策など、一連の変化が非常に素早いものになっています。よって過去の経験則は参考にならず、市場の反応も大きく振れを伴っており、このようなボラティリティは市場参加者の思惑やノイズも含み短期的にやむを得ないものと思いますが、資産運用においてはその判断の中心に、実体経済はどうなっているのか?を考えることが重要でしょう。

金融システムに対する救済策は景気をも反転させるものなのか?景気を引き締める利上げスタンスはどうなるのか?予想される新たな規制の影響も含め様々な注目点がありますが、金融環境が引き締まる中で当面景気減速基調が継続することを念頭に置きながら、各種対応による景気の変化の可能性に注目しています。

景気減速時の資産運用には忍耐強さが求められます。資産クラスを分散させ、安定的なリターンを目指すべき局面でしょう。また冷静になれば、世界が変化に対応し再び進化していく中で、長期的な観点で魅力的な資産積み増しの好機でもあります。当面は景気サイクルの鈍化基調に合わせると共に、新たな景気回復サイクルに備えることも大切です。運用面でも変化に対応していくことが肝要です。