シリコンバレー銀行(SVB)破綻に端を発した金融システム不安は、当局や大手行の迅速な対応で落ち着きつつあるが、それでもまだ余震が続き、マーケットは不安定な状況だ。そうした中、今週は21〜22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。FOMCを巡っては様々な見方が錯綜している。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを継続する姿勢を示せば、金融システムや実体経済に悪影響を与えるとの懸念から利上げは一旦、停止されるというものから、利上げをしなければそれだけ事態が深刻だと当局が認識していると市場に受け止められ、かえって不安を助長するので、ここは毅然と利上げを断行するだろうという見方もある。
僕は0.25%の利上げをして、パウエル議長が会見で今後については柔軟に対応するというようなコメントをして市場に一定の安心感を与えるものと予想する。いずれにせよ、この状況では過度にタカ派的な結果は示せないので、今回のFOMCは市場に配慮した穏当なものとなるだろう。ただし、金利先物市場が織り込む年内複数回の利下げ観測は行き過ぎで、ドットチャートはそれを示唆するものにはならないだろう。だからと言って、失望売りもないと思う。
先週は外国為替市場で円が買われ、1ヶ月ぶりに1ドル131円台に上昇する場面があった。ただし、これは「安全通貨」としての円がリスクオフで買われたというよりも、単純に米国金利が急低下したというだけの話である。では、その米国金利の急低下は「安全資産」としての米国債が「Fly to Quality(質への逃避)」で買われた結果ではないか、と言われると、解釈が難しい。CDSやVIXなどがそれほど跳ね上がっているわけではないので、全面的なリスクオフという感じがしない。米国債市場のボラティリティが高まっているのは事実なので、今週も米国金利の動向から目が離せない。
その金利低下はハイテク・グロース株の息を吹き返させている。ナスダック総合はすでに今回の下げを取り戻して3月月間の高値近辺の水準だ。フィラデルフィア半導体株価指数(SOX)も同様で、チャートの形状は昨年10月をボトムに逆三尊を形成している。3200ポイントを明確に上抜ければ、ネックラインを超え、完全な形の逆三尊となり、底入れ感が強まるだろう。日本の半導体関連銘柄の追い風となる。
反対に米国金利低下をきっかけに、様々なポジションのアンワインドが起きたせいで、これまでロングされることが多かったバリュー株が売られている。そろそろ売り一巡感が出てもいい頃と思われ、期末接近で配当取りの動きが復活するか注目したい。
予想レンジは2万6500円 ~2万7900円とする。