モトリーフール米国本社、2023年3月12日 投稿記事より
シリコンバレー銀行を巡っては、過去の時点ですでに危険信号が点滅していた
シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻に関して、現在の状況については、もはや説明は必要ないと思われます。そこで、時計を巻き戻して見てみましょう。
後悔先に立たず。振り返ってみると、シリコンバレー銀行を巡っては、ハリケーンシーズンのビーチに立つ赤旗以上に、多くの危険信号が点滅していました。以下では、格段に大きく、そして明るく光っていたにも関わらず、誰もが見逃していた危険信号を紹介します。
経営破綻を招いたと思われる8つの危険信号
基本情報として、シリコンバレー銀行は一般的な地方銀行というよりも、ハイテク業界のための個人向け融資銀行のような存在でした。ハイテク業界は、利益を生み出すまでに多額の現金を消費する傾向があるため、シリコンバレー銀行が過剰債務の状態にあったとしても意外ではありません。
しかも、それは秘密になっていたわけでもありませんでした。
危険信号1:
シリコンバレー銀行は2023年1月に発表した2022年第4四半期決算の中で、株主資本115億ドルに対し、第3四半期に満期保有目的有価証券の時価評価による損失が160億ドルに達したことを明らかにしました。つまり、同行は、全資産を清算しなければならなくなった場合、市場価額が簿価を下回るということです。
危険信号2:
損失の原因はシンプルです。数百億ドルに上る顧客の預金を、大きな金利リスクがある債券に大量に投資していたのです。さらに悪いことに、満期まで10年以上が残っている長期債券に過度に投資していたため、それが資産と負債のミスマッチにつながりました。
危険信号3:
米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、2022年12月の時点で預金の約95%が、米連邦預金保険公社(FDIC)が定める預金保護上限の25万ドルを超えていました。これは間違いなく高リスクのギャンブルです。
危険信号4:
もしかしたら、危険を回避する手段はあったかもしれません。しかし、2022年4月から2023年1月まで、シリコンバレー銀行の最高リスク責任者(CRO)のポジションは空席でした。9ヶ月間にわたってリスク担当責任者が不在だったのです。
危険信号5:
シリコンバレー銀行で2007年から最高総務責任者(CAO)を務めているジョセフ・ジェンタイル氏の前職はリーマン・ブラザーズです。同氏はタイミング悪かったようです。2回連続で不運に見舞われました。
危険信号6:
グレッグ・ベッカーCEOはCROを必要としていなかったようです。シリコンバレー銀行が経営破綻のきっかけとなった18億ドルの損失を公表する数日前に、同CEOが保有する信託が360万ドル相当のシリコンバレー銀行株を売却しました。
危険信号7:
ブルームバーグの報道によれば、ハイテク業界向けベンチャーキャピタル「ファウンダーズ・ファンド」の創業者で影響力も大きいピーター・ティール氏は、シリコンバレー銀行に持っていたファウンダーズ・ファンドの口座から、少なくとも3月9日までに数百万ドルを完全に引き出し、さらに投資先企業にも資金を引き揚げるよう提言しました。
危険信号8:
ピーター・ティール氏が動けば、ハイテク企業の多くのリーダーもそれに続きます。閉鎖された小さなこの業界では、事実上、トレンドに追随する人ばかりであふれています。結局のところ、Web3.0を追求するためにすべてを投げ出すような人ばかりなのです。言い換えると、シリコンバレー銀行のすべての顧客が一斉に、銀行の経営破綻につながるような行動を取るように仕向けられたという点で、これは非常に大きな危険信号だったかもしれません。
1度あることは2度ある
FDICは3月11日にシリコンバレー銀行の入札手続きを開始し、3月12日午後には入札が締め切られました。入札プロセスはまだ完了していませんが、金融当局は3月12日の夜、シリコンバレー銀行の破綻が波及するのを食い止めるための措置として、FDICがシリコンバレー銀行の銀行預金全額を保護すると発表しました。また、ニューヨーク州当局は、「システミックリスクを回避するための同様の措置」として、シグネチャー・バンクを閉鎖したと発表しました。
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