モトリーフール米国本社、2023年2月21日 投稿記事より

主なポイント

・キャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシーはこれまで、革新的な新興テクノロジーに積極的に投資している
・アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシーのAI業界に関する予想は、ウォール街史上でも稀に見る強気
・予想が実現すれば、テスラ、アップスタート・ホールディングス、マイクロソフトは最大の勝者になる可能性がある

AIは、かつてない規模の経済成長をもたらす可能性がある

まだ2月ですが、ハイテク業界関係者の間では、今年は早くも人工知能(AI)の話題で持ちきりです。まるでスイッチを入れたように、一夜にして突然起こったように見えますが、きっかけとなったのは、オープンAIが開発した対話型AIプラットフォーム「ChatGPT」の人気が急上昇したことです。

しかし実際には、一部の大手ハイテク企業は何年も前からAIに取り組んでおり、注目のスタートアップ企業もあります。

アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシーが大胆予想

キャシー・ウッド氏が率いるアーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシー(以下、アーク社)はこれまで、自社で運用する上場投資信託(ETF)を通じて、新興のテクノロジーに積極的に投資してきた実績があります。先日も、同社はAI業界について、ウォール街史上でも稀に見る強気な予想をしていることが明らかになりました。

アーク社は「Big Ideas 2023」と題されたレポートの中で、AIが2030年までに200兆ドルの経済効果をもたらすと予想しています。レポートには、工学、科学、法律、情報技術といった専門職に従事する世界中のナレッジワーカーの生産性が飛躍的に向上するなど、その具体的な内容まで詳しく書かれています。

同社によると、ChatGPTのような言語モデルの学習コストは、2030年にかけて毎年70%ずつ減少し、これにより一般的なソフトウェアエンジニアの生産性は10倍に増加する可能性があります。

しかし、AI技術は現在でも既に驚くほどのインパクトを与えています。例えば、アーク社の調査によると、人間が5時間かけて150ドルで作成するグラフィックデザインを、生成AIは1分もしないうちに、わずか0.08ドルで作成することができます。こうしたコストや時間の削減を他の業界に当てはめて考えれば、アーク社が経済全般におけるAIに強気なのも納得できるはずです。

この激しいAI競争における最大の勝者候補は、投資先として魅力的だと考えられます。その中から、テスラ、アップスタート・ホールディングス、マイクロソフトを取り上げてみます。

テスラ

電気自動車(EV)メーカーのテスラがAI企業だと考える人は少ないかもしれませんが、AI技術は同社のあらゆるところに組み込まれています。同社の2022年のEV納車台数は過去最高の130万台となり、こうした業績だけを見ても、テスラ株には投資価値があると思われます。

しかし、テスラが主導的地位にいるのはEV業界だけではありません。同社は世界で最も先進的な自動運転ソフトを開発していると言っても過言ではなく、将来的には、完全自律走行型ロボタクシーのシステムとして採用される可能性があります。これこそが、テスラの株価が現在の水準から636%上昇して1,533ドルに達するとアーク社が考える大きな理由の1つです。

テスラはまた、人型ロボット「Optimus」の試作機を披露し、2027年に発売予定であることを明らかにしました。現在は人間が行っている単純作業をロボットが代わりに行うようになれば、生産性は大幅に向上し、製造業を永久に変える可能性があります。工場が最小限の人員で、24時間体制で稼働することによる経済的効果は計り知れません。

テスラの株価は、最近のハイテク売りの中で48%下落しており、長期的には理想的な買い場となっています。短期的には世界をリードするEVメーカーとしての、長期的にはAI企業としての株価上昇の可能性に参加するチャンスなのではないでしょうか。

アップスタート・ホールディングス

今回紹介する3銘柄の中で、アップスタート・ホールディングス(以下、アップスタート)は最もリスクが高いかもしれません。テスラやマイクロソフトとは異なり、アップスタートの歴史は浅く、初期にありがちな問題を抱えています。実際、株価は最高値から95%も下落しています。しかし、状況が好転すれば、市場機会は数兆ドルに上るでしょう。

アップスタートが開発したAIモデルは、融資業界を大きく変える可能性があります。30年以上にわたり、銀行は信用度を測定する主要な指標として、フェア・アイザック(FICO)が開発したFICOスコアを利用してきましたが、FICOスコアは融資を決める判断材料として、ほんの一部の指標しか考慮していません。アップスタートの指摘によると、これでは借り手の質について、偏った、不公平で、さらには不正確な評価をすることになります。

アップスタートのアルゴリズムは1,600件ものデータポイントに基づいて評価し、しかもAIのおかげで、それをわずか数分で実行することができます。これまで、約82%の確率で融資を即座に決定しています。この作業量を人間の査定人が行えば、数週間、あるいは数ヶ月かかります。これは、AIによって生産性が大幅に向上することを示す好例であり、アーク社の強気の根拠となっています。

アップスタートの株価は大きく下落していますが、最近、事業改革に取り組んでおり、今後数四半期で結果が表れると思われます。同社が成長を取り戻し、信用リスクを適切にコントロールできるようになれば、株価は長期的に大幅な上昇が期待されます。

マイクロソフト

冒頭でChatGPTに言及しましたが、アーク・インベストメントの楽観の最大の根拠となっているのが、ChatGPTの進展です。マイクロソフトは2019年に、ChatGPTを開発したオープンAIに10億ドルを投資し、先日も追加投資を発表しましたが、その額は100億ドルとも噂されています。マイクロソフトの事業が次の成長段階に進む上で、これが大きな足掛かりとなるのは明らかです。

マイクロソフトは既に、自社のクラウドサービスプラットフォーム「アジュール」にオープンAIを統合し、法人顧客に対して既成の言語AIモデルや生成AIモデルへのアクセスを提供しています。アジュールは現在、マイクロソフトの中で最も急成長している事業であり、同社は、アジュール内の機械学習セグメントの売上高が5四半期連続で倍増したことを明らかにしています。これは、AIを搭載したテクノロジーに対する需要が急速に高まっていることを浮き彫りにしています。

しかし、真のゲームチェンジャーは、マイクロソフトの検索エンジンである「Bing」かもしれません。Bingの現時点でのグローバル市場シェアはわずか3%で、市場シェア93%のアルファベット(GOOGL)のグーグル検索を追い落とそうとしており、ChatGPTが大きなカギを握っていると思われます。

Bingに対話型AIモデルを組み込むことで、マイクロソフトはオンラインでの情報アクセス方法に革命を起こしています。アプリ解析企業Appfiguresによると、Bingのモバイルアプリは、ChatGPTの統合発表後の1週間のダウンロード数が75万件に上り、2022年の年間80万件とほぼ同数のダウンロードを記録しました。

市場を支配するまでの道のりは平坦ではないでしょうが、アーク社による業績予想は言語AIモデルの開発の進展に大きくかかっているため、マイクロソフトはAI競争において早くもリードしていると思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット、マイクロソフト、テスラ、アップスタートの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はフェア・アイザックを推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。