米ドル買いの動きが加速
先週2月15日に発表された1月の米小売売上高は、前月比3.0%(コアは2.3%)と3ヶ月ぶりにプラスの伸びを示しました。同月の米国では、2022年と異なりコロナ感染者数の減少が見られ、比較的良好な天候に恵まれた模様です。
その結果、実店舗での買い物や出勤、旅行などの活動も活発化したようです。ただし、その背後で個人の貯蓄率が低下し、クレジットカードのリボルビング払いなど、ローンの利用が急増し、すでにカード会社の不良債権比率が急激に上昇しているという裏事情も押さえておく必要があるでしょう。
また、2月16日に発表された2月のフィラデルフィア連銀景況指数は、前月のマイナス8.9からマイナス24.3へと大幅な悪化を示していました。それでも、2月に入ってからの市場では米ドル買いの動きが一気に強まっています。
強めの米物価指数や相次ぐタカ派発言に市場が反応
なにしろ、2月14日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)が、住居費を除いたコアサービスのインフレ、いわゆる「スーパーコア」まで前月比で上昇し、その時点から米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが、3月、5月に留まらず「6月も」と囁かれ始めているのですから無理もありません。
加えて、2月16日に発表された1月の米生産者物価指数(PPI)も、前月比では想定超の高い伸びとなり、にわかに複数の米地区連銀総裁らによる、タカ派寄りの発言が相次いで耳に飛び込んでくることとなりました。
「3月の米利上げが0.5%ポイントとなる可能性を排除しない」といった発言でしたが、それを「やや日和見的」と受け止めたのは私だけでしょうか。
前年比で見れば、1月の米CPIは総合もコアも伸びが鈍化していましたし、米PPIも前年比では総合の伸びが、前月の6.5%から6.0%(コアは前月の5.8%から5.4%)と大幅に鈍化していました。
もちろん、強めの米物価指数や相次ぐタカ派発言に、市場が敏感に反応していることは事実として、しっかり受け止めねばなりません。その結果、米ドル/円が当面の上値抵抗として意識されていた、一目均衡表の日足「雲」下限の水準を足元で上抜けてきたことも軽視することはできません。
かくなるうえは、2022年10月高値から2023年1月安値までの下げに対する38.2%戻しの水準=136.66円処や、日足「雲」の上限を上抜けてくるのかどうかが、当面の焦点になると見ておくことが必要でしょう。ただ、それらの重要な節目が当面の上値抵抗として意識される可能性も当然あるものと思われます。
米ドル/円は円安影響で上昇、ユーロ/米ドルは弱含みで推移
なお、このところの米ドル/円の上昇には「円安」の要素が大いに関わっていることも再認識しておきたいところです。また、ユーロ/米ドルが弱含みで推移するなか、ユーロ/円の方は強含みでの推移を続けています。
言うまでもなく、それは新たな日銀正副総裁候補の顔ぶれが、一段の円買いに「待った」をかけていることによると思われます。その意味からすれば、やはり、今週2月24日に予定される、正副総裁候補の「所信聴取」で、どのような政策の方向性が示されるかを注視しておくことが極めて重要となります。
先週末、米国ではプレジデンツデーの3連休前ということもあり、NY時間の終盤には米ドルを売り戻す動きも見られました。加えて、リッチモンド連銀のバーキン総裁から「0.25ポイントの段階的な利上げを支持」との発言があったことに市場が反応した部分もあるものと思われます。
その結果、ユーロ/米ドルの週末終値は日足「雲」上限の水準で下値をサポートされる格好となりましたが、週明け以降に再び日足「雲」のなかに潜り込む展開となる可能性もあると思われます。その場合は、ひとまず1.0600ドル処の節目が意識されやすくなるものと見られます。
今回で本コラムの執筆は終了します。これまで長らくご愛読いただきまして誠にありがとうございました。今後も素晴らしい“戦果”を挙げられますようお祈り申し上げます。