モトリーフール米国本社、2023年2月14日 投稿記事より

主なポイント

・アルファベットのAI製品は、自らの性能を発表する場で間違いを犯してしまった
・アルファベットは長年、AIに投資している
・過去の水準と比べると株価は割安である

自らの失態で、アルファベットは1,500億ドル以上の時価総額を喪失

アルファベットの検索エンジンであるグーグルはこれまで、競合他社を圧倒してきました。実際、マイクロソフトが運営する検索エンジンのBing上で、2021年に最も検索された言葉は「google」でした。

しかし、マイクロソフトが、OpenAIの開発によるChatGPT技術を搭載した新たなBing機能を発表したことで、投資家の間では、アルファベットの支配が終わるのではないかとの憶測が広がっています。本当にそうなのでしょうか。それとも、アルファベットは、今後も市場での地位を維持できるのでしょうか。確かめてみましょう。

1つの間違いがアルファベットにとっては大きな代償に

マイクロソフトが新たなプラットフォームを発表した翌日、アルファベットも人工知能(AI)に関するイベントを開催しました。ところが、アルファベットが発表した「Bard」が1つの間違いを犯したことに投資家は動揺し、株価は急落しました。アルファベットはわずか1週間足らずのうちに、1,500億ドルを超える時価総額を失ってしまったのです。

しかし、この下落は行き過ぎだと思われます。

アルファベットは長年、AI技術に投資しており、サンダー・ピチャイCEOは6年以上前から、「AIファースト」という企業ビジョンを明言しています。アルファベットはマイクロソフトに先制された形となりましたが、一般ユーザー向けのAIサービスを近いうちに開始する予定であるため、そうなれば新ツールの分析はさらに進むはずです。

また、アルファベットはグーグル・クラウド部門だけでなく、開発者向けのAIツールにも投資しており、その多くが既に実用化されています。

プレゼンでちょっとした不手際があったとしても、アルファベットのAI技術は確実に進歩しています。とはいえ、業績の大部分を検索が占めるため、問題があれば修正する必要があります。

アルファベットの業績の大部分を占めるグーグル検索

2022年第4四半期のグーグル検索の売上高は426億ドルに上り、同社売上高全体の56%を占めました。同セグメントがアルファベットの財務の健全性にとっていかに重要であるかを考えると、経営陣はこのAIを駆使した検索エンジンの戦いに負けるわけにはいかないのです。

アルファベットとマイクロソフトの製品はまだ一般公開されていないため、たった一度の出来事でアルファベットを見放すべきではないでしょう。しかも、新しく改良された検索エンジン競争の口火を切ったOpenAIのChatGPT製品も失敗することが知られており、アルファベットのBardだけが間違うわけではありません。

では、今回の下落は買いのチャンスなのでしょうか。今回の急落でアルファベットの株価収益率(PER)は約21倍と、歴史的にも低いバリュエーションとなっています。

景気の不透明感から企業は広告予算を切り詰めており、アルファベットは厳しい広告環境にも直面しています。経済が良い方向に向かえば、アルファベットの広告収入は年末までに改善し始め、利益も押し上げられるでしょう。

さらに、グーグル・クラウドは、数あるクラウドプロバイダーの中で最も好調な四半期となりました。同部門は好調が続いており、黒字化も間近とみられます。

アルファベットの投資家にとって、AIサービスの市場投入は気になるところでしょうが、株式を手放すほどではありません。企業側は問題を修正しなければなりませんが、たった1回のプレゼンで敗北と判定するのはあまりにも尚早です。最近の下落でアルファベット株は絶好の買い場に見えますが、同社のAI製品が正式に市場投入されたときにどの程度受け入れられるか、注視する必要がありそうです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Keithen Druryはアルファベットの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、マイクロソフトの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。