立春を過ぎて、東京では山茶花や椿の花が落ち、紅梅・白梅が咲き始めています。梅のツンとした匂いを嗅ぐと、春が来たことを感じます。そしてこんな風に春が近付いてくると、東京では何故か雪が降ります。気圧の配置などがそうさせるのでしょう。

「花の色は雪にまじりて見えずとも香をだににほえ人の知るべく」(古今集・小野篁朝臣)ー小野篁(おののたかむら)と云えば、昼は朝廷で官吏をし、夜は冥府(地獄のこと)で閻魔大王の補佐をして人世界から落ちてくる人の裁判をしていたとの伝説のある人です。京都の六道珍皇寺に、小野篁がこの世とあの世を往き来したとされる井戸が残っています。

「(白梅の)花の色は雪が降ってきて混ざってしまい見分けることが出来ない。だからせめて香りを出してくれ。そうすればどこに花があるか誰にでも分かるから。」

小野篁はスーパーマンで、巨漢であり、政務能力に長け、漢詩と和歌と書の当代一の達人だったそうです。そのたかむらも、やはり梅の香には強く惹かれたのですね。明日はどこかで、降る雪の中に白梅を見付けたいものです。