先週発表された米雇用統計で雇用者数が市場予想を大幅に上回って増えた。これを受けて労働市場の需給ひっ迫が改めて意識され、それまで高まっていた早期利上げ停止期待が後退したとする論調が大勢を占めている。果たしてそうだろうか。非農業部門雇用者数の前月比は、そもそもぶれやすい統計だ。日経新聞も書いていた通り、今回の雇用統計は年初に伴う改定や大規模ストライキなど特殊要因が多い。額面通りには受け取らないほうがいいだろう。

肝心なのは労働需給がひっ迫して賃金インフレにつながっているかだが、平均時給は前月比0.3%増、前年同月比では4.4%増で市場予想通り、賃金上昇は加速していない。

株式市場もそれほど大きな反応を示していない。先週金曜日のNY市場でダウ平均は続落し、前日比127ドル安となったが、下値は堅く、上げに転じる場面もあった。雇用統計はそれほど重荷にならないだろう。

一方、表面的には「早期利上げ停止期待の後退」と受け止められているようだから、それはドル高・円安要因で日本株を支えるだろう。実際、先週末のシカゴ日経平均先物は、米国株の下げとは逆行高で引けている。

今週の注目材料は、10日に政府が国会に提示する日本銀行の正副総裁の後任人事だ。それを巡って日銀の政策修正の思惑が交錯し、為替・金利が大きく変動すれば、株式市場の波乱要因になることに注意しておきたい。

米国でもイベントがある。バイデン大統領は一般教書演説、パウエル議長はワシントンエコノミッククラブでのインタビューがある。このところの金利低下・米国株高を受けてパウエル議長は利上げ効果を緩めないために市場をけん制するとの見方がある。強い雇用統計の後だけに相場の調整のきっかけになるかもしれないが、ここでも述べている通り、「けん制」だということは分かっているので、それほど悪材料にはならないだろう。

米国は先週のハイテク大手の決算発表でピークを超えたが、国内では今週も決算発表が佳境を迎える。6日にはアステラス(4503)、エーザイ(4523)、7日には三菱重(7011)、任天堂(7974)、ソフトバンクG(9984)、8日には東レ(3402)、富士フイルム(4901)、9日には日本製鉄(5401)、トヨタ(7203)、東京エレク(8035)、三菱地所(8802)、NTT(9432)、10日には資生堂(4911)、ENEOS(5020)などが発表予定。

日経平均は先週末、2万7500円台を終値で約1ヶ月半ぶりに回復して終えた。日本株相場は2022年12月の中旬から急落したが、日経平均の2万8000円から2万7500円を割り込むまでは窓を空けて下げており、この価格帯は真空地帯だ。戻り待ちの売り圧力は大きくない。外部環境が落ち着き、決算後半戦が良好ならば、2万8000円へ戻す目もじゅうぶんあるだろう。

予想レンジは2万7300円 ~2万8000円とする。