「経済的自由のためのsideFIREを目指す」。そんな思いを胸に、夫婦でインデックスファンドを中心に積立投資を続けながら、強固な資産を築いてきた個人投資家のMinさん。過去には800万円の損失を抱えるといった失敗を経験しつつも、痛みを伴いながらの学びや日々の創意工夫により、6年で1億5000万円の資産形成を達成。今回は、Minさんが実践してきた資産形成のポイントや投資を継続する秘訣についておうかがいしました。

●Minさんプロフィール●
sideFIREを目指すアラサー研究者。九州の片田舎で育ち、旧帝国大学の大学院博士課程を修了。その後、業界最大手企業で、かねてからの夢だった研究開発職に従事。「共働き×複業×投資×節約節税」を実践し、夫婦で年間1000万円を積み立て投資中(ジュニアNISAの年80万円を含む)。主に株式、不動産、暗号資産に投資。また複業の1つとして妻と共に中小企業の経営も行う(大学院在学中に小売業で起業)。

投資を始めたきっかけは、夫婦で「経済的自由のsideFIREを目指す」ため

――投資を始めようと思ったきっかけを教えてください。

妻との結婚を考え、将来や仕事観について話し合った際、仕事を続ける理由の1つとして「お金を得て生活をするため」という意見が出ました。

私は、お金があることのメリットの1つは、人生の選択肢が広がることだと考えています。仮に将来に不安がないほど十分な資産があれば、好きなことに専念できます。もちろん、仕事が好きなら続けても良いでしょう。

また、私たち夫婦は旅行が趣味の1つなので、もしお金も時間のゆとりもあるならば、例えば長期休暇を利用して遠方に旅行したり、半年~1年かけて地球1周旅行などもしたいなと考えています。もちろん、お金が全てだとは思いませんが、お金があれば人生の選択肢が増え、自由度がアップし、ゆとりのある生活を送ることができるのではないでしょうか。このような背景から、経済的自由を得るために投資を始めてみようと思いました。

投資に興味を持ち始めた当時、FIREという言葉自体は知りませんでした。しかし、私はFIREの「FI(Financial Independence)」とは、人生の選択肢が増え、心のゆとりに繋がるためのものだと考えています。

――「FIRE」ではなく「sideFIRE」をめざしているとのことですが、その理由を教えてください。

私は、「FIRE」が経済的に自立した上で完全に仕事から引退することであるのに対し、「sideFIRE」は経済的に自立しながらも、仕事から完全に引退するわけではなく、好きな仕事をしたり、社会と繋がりを持つことだと考えています。

私が「sideFIRE」を目指す理由は3つあります。

1.夫婦で経営する中小企業を継続するため

私たちは九州で小売業を経営しているのですが、いずれ子どもが大きくなったら事業承継したいと考えています。しかし、その時まで私たちが従業員の生活を守る必要があります。

2.暴落時や生活費、家族の増加や教育費などへの備え

株式などの資産が暴落した時や、生活費と家族の増加、子どもの教育費の準備、また私たち夫婦の老後資金の準備などを考えると、今のところはsideFIREが現実的だと考えています。

3.社会との繋がり

仕事を通じて社会と繋がることが大切だと考えています。社会との繋がりを保つことで、メンタルヘルスにも良い影響があると思います。

FIREはゴールではなく、あくまで人生を楽しく生きるための手段の1つであり、通過点であることを忘れないようにしたいと考えています。また、お金を稼ぐ、資産を増やすことだけに注力し、今しかできないことを我慢するのは本末転倒だとも考えています。

一時は800万円の損失を抱えたことも。失敗を糧に「諦めない投資」を実践

――投資はいつから始めたのですか? 

2017年に27歳で株式投資を始めました。その時の投資資金は1000万円ほどです。原資は、学生時代のアルバイト代と、大学院の時の奨学金(修士、博士の第一種奨学金全額免除)です。大学時代は、親からの仕送りもありましたが、あまり負担をかけたくなかったので、家庭教師や塾、TA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)のアルバイトをしていました。

現在も続けている小売業の事業を始めたのは学生時代です。学部時代は年間50万円~100万円、大学院時代は年間250万円を貯め、そこに、一切手をつけず免除になった奨学金(約650万円)を加えたお金を元手にして株式投資をスタートしました。

――投資を始めた初期の頃、800万円の損失を出したそうですね。それでも投資を続けた理由、また失敗から学んだことは何ですか?

投資を始めた当初は、日本株の個別株を中心に投資をしていました。その当時は相場環境が良く、何に投資をしても利益が出ていました。「自分には投資の才能があるのでは?」と過信するほど好調で、数ヶ月で資産が1.5倍に増えました。

その後、高配当株に魅力を感じて、妻も私もその企業の製品を利用し、かつ新聞に業績好調と書かれていた銘柄に投資しました。ところが、しばらくすると株価が下がり始めたのです。

それでも最初の頃は「すぐに株価も安定するだろう」と安易に考えていました。しかし、実際は下落がなかなか止まらない。それにも関わらず「ここで買えば、株価が上がったときに儲けが出る」と考え、保有する他の銘柄を売却して、その資金で追加投資をしたり、給料が入ると、生活費を節約してナンピン買いするということを繰り返しました。その結果、350万円程度だった損失がどんどん膨らみ、結果的に800万円の損失を抱えることになってしまったのです。

ビギナーズラックではあるものの実際にお金が増える経験、そして800万円の損失を抱えるという苦い経験をしました。しかし、私は自分が好きなことをして過ごす時間を手に入れるにはお金にも働いてもらうことも効率的だと考えていたので、投資をやめようとは考えませんでした。

その一方、自分の勉強不足や経験不足、保有銘柄に対する客観的な視点が足りなかったことは身に染みて感じました。そこで、早い段階で失敗を経験できたことを良しとし、「ここで投資をやめるのはもったいない」と考えていました。

金融資産1億円超えを達成するには“収入”と“支出”の見直しが大事

――現在では世帯の金融資産が1億円を超えているそうですが、そこに至るまでの取り組みについて教えてください。

資産を形成するには、収入を増やすか、支出を減らすかのどちらかしかありません。特に、投資を始めたばかりの頃は、投資に回すお金を増やす力(入金力)を上げるために、支出管理が重要だと思います。

支出削減のために行った4つの取り組み

(1)家計の把握(支出の見える化)
(2)固定費の削減(一度見直すことで、手間なく継続的に削減できる)
(3)「先取り投資」をし、残ったお金を生活費に充てる
(4)モノやサービスを購入する際の基準を設定する
 
収入が増えたからといって生活の質まで上げてしまうと、元に戻すのが大変です。しかも、支出が2倍になったところで、幸福度が2倍になるわけではありません。モノやサービスを購入する際には、それが消費なのか、浪費なのか、はたまた投資なのかを見極め、必要なところに必要なお金を充てることが大切だと考えています。

また、米国の株価指数であるS&P500は、どんなに運用成績の悪い20年をとっても、年平均6%のリターンをあげていたのを知りました。72の法則(72÷金利=お金が2倍になる期間)に当てはめると、12年で2倍、24年後には4倍になる計算です。もちろん、将来も年平均6%のリターンをキープできるとは限りませんが、「24年で4倍になる機会を逃すのは惜しい」と考えれば「不要なものを買うのはやめておこう」と思えるようになります。

ただし、支出の削減には限界がありますし、過度な節約はQOLを下げることにつながります。無駄な支出を見直した後は、さらに支出を削るのではなく、収入を増やすことを考えたほうが得策だと考えています。

収入を増やすために取り組んだ3つのこと

(1)労働収入アップ(本業だけでなく複業にも注力)
(2)収入アップの仕組み作り(2018年から個人および法人名義で不動産投資を開始し、家賃収入を株式に再投資するという形で複利を効かせている)
(3)暴落時に投資できるように備えて、キャッシュを持つ

特に3つ目を実践したことで、コロナショック時に割安になった株に投資できたことが、今思えば資産を大きく増やす要因の1つになったと考えています。

>> >>【中編】次なる目標は世帯金融資産2億円!家族が増え、“今しかできないこと”も楽しみたい 

※本インタビューは2022年11月28日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。