みなさん、こんにちは。2022年の日経平均は、結局のところ4年ぶりの年足陰線となりました。ボックス圏での推移に留まり、年末にかけて値を崩す中、大納会ではそのボックス圏の下限でなんとか踏みとどまった相場となりました。

ロシアによるウクライナ侵攻や安倍首相の事件など、世相も殺伐としたものがあったように思います。本日1月4日は大発会。心機一転、「跳ねる」1年となってほしいものです。

日銀の金融政策転換がもたらした市場の変化

さて、今回は2022年末に相場を大きく揺り動かした金利について採り上げてみましょう。12月20日、日銀は金融政策決定会合において、10年国債利回りの誘導レンジをこれまでの±0.25%から±0.5%に拡大することを決定しました。

利上げではなく、レンジ拡大幅も僅かであり、金利の誘導目標も据置きとしたため、日銀としては市場の影響を反映させる余地を膨らませつつ、金融緩和の姿勢に変化はないというメッセージを発したものと思われます。

しかし、株式市場はこの決定に大きく反応しました。日経平均で言えば、決定が報じられると直ちに1,000円超も急落した上、その翌日以降も軟調な推移を余儀なくされるに至っています。

ここまで大きく反応したのは、ここにきて金利政策の変更を日銀が容認し、金利上昇モードに転換したと資本市場が受け止めたことが原因です。

日銀は現時点で緩和姿勢に変化はないとしていますが、これまで急速な円安があっても頑として緩和方針を堅持していた日銀が柔軟性を示したことで、トレンドが転換したように映ったのです。私もこの政策決定にはサプライズと受け止めました。

今後の金利シナリオ、投資目線から見る傾向と対策

利上げは徐々に上昇モードになるか

ここで考えるべきことは3つあります。1つは株式市場が懸念する通り、今後は利上げモードが徐々に浸透してくるというシナリオです。

当然ながら、金利上昇は株価にとっては逆風となります。難しく言えば、金利上昇により企業に将来期待される収益の現在価値が低下したということになりますが、端的には金利上昇でお金が回り難くなり、その結果として景気を減速させかねないためです。

投資家にとって、金利上昇局面は基本的に我慢の時なのです。とすれば、投資ポートフォリオを「忍耐モード」に切り替えておく必要があります。景気との連動性が低いディフェンシブ銘柄や配当余力の潤沢な高配当銘柄などに対象を意識的にシフトさせるのは、その一例でしょう。

当面は個別銘柄中心の「森ではなく、木を見る」選択が重要になってくると考えます。むしろ、安くなった「成長株」をしっかりと仕込んでおく、投資の好機と捉えることができるでしょう。

また、年末に相場が崩れる中、逆行高を演じた銀行株も要注目でしょう。銀行はこれまでのゼロ金利政策によって利ザヤ収入が期待できない状況が続いてきましたが、金利上昇観測の台頭により、融資で稼ぐ局面が復活するのではという期待が一気に高まりました。これも金利上昇モードを先取りした動きと言えるでしょう。

ただし、これは諸刃の剣であることもお忘れなく。金利上昇で銀行が運用している有価証券の時価が低下するため、銀行各行は運用低下や資産評価損に直面する可能性があります。株式市場は徐々にそういったリスクも今後は織り込んでいくのではないかと考えます。

円安から円高へと逆回転するか

2つ目は為替対応です。金利上昇局面入りの可能性が出てきたことで、為替市場も早速反応し始めました。一時は151円まで進んだ円安が一気に切り返しとなり、現在は130円を割り込む水準まで押し戻されるに至っています。

米国では金利引上げの打ち止めが観測されるようになってきた中、日本はこれから金利上昇になるとすれば、当然これまでの「円安シナリオ」は逆回転することになります。円高へと流れが転換すれば、円高メリットの発生する銘柄には追い風が吹くことになるはずです。

もちろん、金利上昇に伴う景気減速の影響により、その分は円高メリットが減殺されることになりますが、企業によっては円高メリットの方が大きいというケースも少なくありません。景気連動性が比較的低く、製品や原材料の海外仕入れ比率の高い企業などは投資対象候補として浮上してくるのではと期待したいところです。

日銀はどこまで市場に反応するか

そして3つ目は日銀への信頼です。今回の政策決定は、見方によっては日銀が市場の圧力に屈したように捉えられる可能性があります。とすれば、今後、投機筋は日銀がどこまで市場に反応する方針なのかを確かめるような仕掛けをしてくるケースも考えられます。

市場の圧力に後追いで追従するような姿勢が日銀に見え隠れしてしまうと、それは彼らの絶好のターゲットになってしまいます。どこで確固たる線引きを行うのか、そのラインを投機筋は見極めてくることでしょう。私は当面、攪乱要因が跋扈してくるかもしれないとも懸念しています。