米国では11月24日から年末商戦が始まり、初日から5日間の実店舗とオンラインの買い物客数が1億9,670万人と前年比で1,700万人増加、調査開始以来の最高水準となった。また、民間企業の調査によると、11月28日のサイバーマンデーのオンライン売上高は、前年比で5.8%増と事前予測を上回る結果となった。
今回のオンライン販売の好調は、インフレ進行下での一部商品の大幅な値引きなど様々な要因によるものだが、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大以降、その利便性の良さから注目された電子商取引(以降、EC)市場は、今もなお拡大しているのだろうか。そして、米国のEC市場では今後どのような分野の成長が期待されているのか。
米国EC市場の成長率はやや鈍化するも、今後も拡大が予測される
まず、米国の小売全体とEC市場の推移について見てみよう。2020年Q2にコロナ感染拡大を受けて、小売全体は一時低下するもEC市場の売上は拡大した。
その後もEC市場は緩やかに拡大していったが、EC市場の成長率よりも小売全体の成長率の方が高くなった。これは新型コロナワクチンの接種が本格化する中で、ECではなく実際に店舗へ行って取引する人が増えたことを表している。また今後、コロナ収束に伴いEC市場の成長率が鈍化すると予測されているが、小売全体の拡大につられる格好でEC市場は拡大していく見込みだ。
リセール・プラットフォームを活用した衣料品EC市場の需要拡大に期待
では、堅調な拡大が予測される米国EC市場において、今後どの分野の成長が期待されるのだろうか?その1つとして衣料品が挙げられる。
2000年代半ばより、最新の流行を取り入れた低価格の衣料品(ファストファッション)が注目されると、人々の衣料品の購入量並びに廃棄量も増加した。その後、2015年国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されると環境問題などへの関心が高まった。そしてコロナ感染拡大で自らの衣料品を整理する時間が増えたことを機会に、比較的安価に購入ができる2次販売された衣料品に注目が集まっている。
ここでの2次販売とは、リサイクルショップでの販売の他、消費者や小売店が衣料品を出品し、そこから消費者が自由に購入できる場である、リセール・プラットフォームを通した販売も含める。
今までは1度使用された衣料品に対して、消費者の「質が悪い」という印象が根強かった。しかし、多くの人がリセール・プラットフォームへ出品することで、一定の量と質を確保出来るようになったため、リセールされた衣料品の需要は拡大しており、米国の2次販売の衣料品市場において成長要因となっている。eMarketerのレポートからの推計では、衣料品市場に占める2次販売の割合は2021年で8%、2022年は9%、2023年には11%と拡大する見込みだ。
他の側面でも、2次販売の衣料品市場の成長を裏付けることが出来る。THREDUPのRESALE REPORT2022によると、米国では41%の消費者が衣料品を購入する際に、2次販売されている同様の衣料品を調べ比較する。
また、Z世代やミレニアム世代の46%が衣料品を購入する際、将来売却した際の市場価値を検討しているというデータもある。また、EC化率も徐々に高まっており2024年には2次販売の衣料品市場の50%をECが占める見込みだ。
このような消費者の行動変化に合わせ、新たにオンラインでリセールビジネスを開設する企業の割合も2022年には2021年の倍以上となることが予測されている。具体的なビジネスの例として、アディダスは2021年10月にリセールサービスを開始。消費者が不要になった衣料品(アディダス製品以外も対応可能)をアディダスへ送付し、その後、衣料品の状態によってはリセールされる。
今後も2次販売された衣料品のEC市場、そして新たにリセールビジネスを開設する企業の動向に注視していきたい。
コラム執筆:冨永 健悟/丸紅株式会社 丸紅経済研究所 産業調査チーム