直近のJ-REIT価格動向

J-REIT価格は9月上旬から続いていた不安定な値動きから離れ、安定的な推移となっている。東証REIT指数は11月中旬以降、概ね1,950ポイントを挟んだ値動きが続いている。

これはJ-REIT価格に対する影響が強い、米国長期金利の上昇基調が収まり、やや低下していることが背景にあると考えられる。ただし、米国10年債利回りは低下したとは言え、3.8%程度と9月中旬よりは高い水準であるため、J-REIT価格の反発には繋がっていない。

8月までJ-REIT価格の上昇を牽引してきた外国人投資家から見れば、J-REITの利回りと米国債利回りには差異が少なくなっていることから、売越し基調が続いているためだ。

従って、景気悪化懸念が強まり、J-REITの分配金安定性に対して投資家の関心が移るまでは、大幅なJ-REIT価格の大幅上昇は難しいと考えられる。

光熱費上昇の影響を受けるJ-REIT

米国が金利引き上げを続けている背景にはインフレ抑制がある。日本も米国ほどでないがインフレ傾向にあり、特に資源価格高騰による悪影響に対して、日本では政府が補助金などで対応を模索している。

既にガソリン価格に対しては補助金が投入されており、電気代・ガス代についても2023年1月から補助金で負担増加への対策が講じられる予定となっている。

J-REITにおいても、光熱費上昇は一部銘柄で業績に悪影響を与えている。一般的に光熱費は、専有部分はテナント負担とし、供用部は貸主負担となっている場合が多い。

従って、供用部の面積比率が低い賃貸マンションやテナントに一括賃貸している物流施設などは影響が少ない。一方で複数テナントが入居している商業施設やオフィスビルなどでは光熱費上昇の影響を受けやすい。

前回のコラムでは物件売却が分配金の増加となっているという事例が挙げたが、光熱費上昇の影響を受けて売却益が分配金増加に繋がらない事例も生じている。

例えば、投資法人みらい(3476)は10月28日に、前期(2022年10月期)と当期(2023年4月期)の2期に分けて物件を売却し、売却益2億円強が発生すると公表している。

この売却益は分配金に対して、前期で63円、当期で65円の増配要因となっている。しかし、水道光熱費収支の悪化が前期及び当期ともに39円の減配要因となることや賃貸収益の悪化によって、分配金は1,285円のまま据え置きとなっている。

前述の通り、2023年1月から企業向けの電気代・ガス代に対しても補助金が投入される見込みとなっている。しかし、一部負担減に留まることを考慮すると、今後も業績に対して悪影響が続く可能性がありそうだ。

当面は米国長期金利が高い水準で推移することが想定される中で、J-REITの魅力は分配金の安定性となるため、業績面での不透明感がつきまとう銘柄の価格上昇は難しいと考えられる。従って、銘柄選択の上で水光熱費の影響を決算説明会資料などで判断することが重要になりそうだ。