先週の上海総合指数と深セン総合指数は週末にかけて大きく下落し、香港市場も同様に調整しています。中国経済は本当に年末に向けて回復するのかという懸念と、共産党大会の開幕は11月8日に控えているものの政権交代に伴う手続きなどがしばらくは続き、具体的な政策がでてくるのはまだ先になるとの思惑が株価に影を落としました。また、中国政府は今回の共産党大会のような大きな政治的な動きがある時期には株価の急激な変動を好まない傾向があるとの見方もあります。つまり経済面から見ても、政策面から見ても、現在は急激に株価が上昇するような時期ではないと見る投資家が多いようです。

一方で明るい兆しも出てきています。まず、10月24日にはHSBC中国製造業景況指数(PMI)の10月の速報値が発表されました。10月の速報値は49.1となり、9月の確報値である47.9を上回りました。これで12ヶ月連続して景況感の境目である50を下回る結果となったものの、9月に続き、2ヶ月連続で前月よりも改善したことが、中国経済が徐々に回復していることを示しています。また、中国工業情報省の報道官は2012年第4四半期の中国の鉱工業生産の伸びは第3四半期比で加速する見通しであり、景気支援策が次第に効果を発揮してくればさらに景気の安定が進むだろうと述べました。これらを見ても中国経済や中国企業の業績は第3四半期に底打ちし、第4四半期は回復に転ずることが期待されるところです。

もう1つの明るいニュースは先週、中国鉄鋼大手の宝山鉄鋼が2012年8月28日に発表した50億元の自社株買い計画の一部として10月15日時点で9億9800万元相当の株式を買い戻したことを明らかにしたことです。宝山鉄鋼以外にも株価が低迷している中で自社株買いを計画している企業は多いのですが、宝山鉄鋼は国営企業です。つまり、この自社株買いの動きは、以前に指摘した政府系ファンドや保険会社による株式投資の加速と同じく、中国政府が株価下落の下支えをしているとも取れるわけです。