全盛期の「NFP大相場」も上回る

11月10日は米10月CPI(消費者物価指数)発表が予定されている。このところのCPI発表は、発表直後に一方向へ大きく動くケースが多かっただけに、今回の場合も大いに注目されることになりそうだ。

特定の経済指標の発表で、発表直後に大きく相場が動くものとしては米雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)がよく知られてきた。NFPの結果が、予想より良ければ米ドル買い、予想より悪ければ米ドル売りで、それぞれ一方向に1~2円も動くという具合だったが、この数ヶ月は、それがCPIに取って代わったようになっていた。

8月10日の7月CPI発表の際には、予想を下回る結果だったことを受け、約3円もの米ドル急落となった。また、9月13日に発表された8月CPIが予想を上回ると、今度は約3円の米ドル急騰となった(図表参照)。

【図表】最近の米CPI発表と米ドル/円の関係
出所:経済指標カレンダー等をもとにマネックス証券が作成

ちなみに、7月13日に発表された6月CPIは予想を上回る結果となったが、この時は約1円程度の米ドル上昇にとどまった。ただ、翌日のPPI(生産者物価指数)発表も予想を上回ると、その直後に米ドルは約2円の急騰となった。

以上のように見ると、7~9月にかけて3ヶ月連続で、CPI単独の発表直後、またはCPI+PPI発表の後に、一方向へ3円程度も米ドル/円が大きく動くパターンが繰り返されてきたわけだ。それは、まさに全盛期の「NFP大相場」並みの高いボラティリティー(変動率)と言えるだろう。

これは、米国が約40年ぶりのインフレ局面にある中で、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策もインフレ対策を最優先しているため、代表的なインフレ指標であるCPIの結果に対して、為替相場も敏感に反応する状況が続いているためと考えられる。

10月13日に発表された米9月CPIは予想を上回ったものの、米ドルは1円程度の上昇にとどまったが、これは日本の通貨当局による米ドル売り介入への警戒感が影響した可能性が高かっただろう。当時は、CPI発表直後に、1998年の米ドル高値を更新したものの、その直後に米ドルは一時急反落となるなど、まさに介入を警戒した値動きと見られた。

では、今回のCPI発表で米ドル/円はどのような動きになるだろうか。CPI発表後に一方向へ3円動くなら、146円を基準とした場合、米ドル高なら一気に150円に迫り、逆に米ドル安なら143円程度まで米ドル急落となる計算だ。

ただ、米ドル売り介入への警戒から、米ドル高への反応は限られる可能性も考えられる。一方で、CPIが予想を下回っても、次回12月FOMCでの利上げ幅が、これまでの0.75%から一気に0.25%といった小幅に縮小する可能性でも出てこない限り、約3円もの米ドル急落が起こることも想像しにくいところだ。