米ドル/円 日足

週間予想レンジ:144.50~149.50

メインストラテジー:レンジ取引

・FOMCや米雇用統計に翻弄される
・米利上げ余地の拡大でも頭は重い
・内部構造の示唆なら弱含みへ

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週やや波乱になった。米連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、パウエルFRB議長のタカ派発言を受け、一時145.86円の安値から切り返したものの、148円前半に留まり、米利上げ余地の拡大が想定されるものの、上値追いの勢いは示されなかった。先週11月4日の米雇用統計自体もさらなる利上げを支持する内容となったが、一転して米ドル売り優勢の展開となり、146.59円にて大引けし、多くの市場参加者を驚かせた。

言ってみれば、米利上げ見通しの強化自体が米ドル買いに繋がらず、円売りの限界が見えてきた。しばらく高値圏での保ち合いに留まると推測され、また今週米CPI指標次第では一波乱も想定されるが、総じてレンジ内における弱含みの展開になりやすいとみている。

もっとも、先々週の保ち合いでは一旦145円関門を試したものの、底堅く推移し、レンジ変動の様子を一層強めたわけで、FOMC通過後一段とレンジの上限を拡大してもおかしくなかった。10月21日の介入は、米長期金利低下のタイミングを狙っただけに、投機筋の逆張りを押さえ、拮抗局面になりやすいため、しばらくはレンジ変動に留まる公算が大きいが、レンジ自体が広く、上方修正の余地があったはずである。

さらに、米雇用統計が良かったにも関わらず、米ドル全体の反落が多くの市場参加者の意表を突いた。円売りの限界というのか、米ドル買いの限界が露呈され、米ドル高一服の機運が暗示されたと思う。今週米CPI指標のリリースに再度試されるが、同じ反応パターンなら米ドル高の一旦終焉を覚悟しておきたい。

振り返ってみると、10月21日に一旦大きく続伸し、32年ぶりの高値を再度更新、そして一時151.96円まで上昇したが、我々はこの提示したターゲットを見事にクリアしたわけで、その後日銀の再度介入で大きく反落した。言ってみれば、ロング筋の目標達成感を狙った介入であったともいえ、介入自体が成功した可能性が大きかった。

ロング筋の目標達成感は、テクニカル上の視点から得られたことも既述の通りであり、9月22日の大陰線を中心に形成した「Ioi」のサインである。9月22日高値の更新が確認された以上、同日値幅の「倍返し」で計算すれば、151円台半ばの打診が推測されていた。同ターゲットをクリアした後の介入だったことに鑑み、計算された根拠が明らかであった。

さらに、2011年円の史上最高値から2015年円安値まで、円安の値幅は約50円だった。今回円安の起点である、2021年年初の102円台から測られ、同じく50円の値幅なら、152円大台が究極なターゲットとして浮上していた。今回そのターゲットに近づいていたわけで、ロング筋の目標達成感に乗った介入だったと理解される。

言ってみれば、介入自体より米ドルロング筋の目標達成や相場内部構造の指示が決定的な要素であった。従って、米利上げ見通しに関するタカ派観測があっても米ドルの上値は限定され、頭の重い構造が暗示される。

日足では、11月4日の大陰線は、早期否定されない限り、FOMC通過当日にあたる11月2日安値の145.68円を再トライしてもおかしくないだろう。要するに、同日罫線が示した「スパイクロー」のサインは、一転して「アンカー」の役割を示し、レートを引き下げる可能性が大きい。さらに、場合によっては145円関門の一旦割り込みも想定される。その反面、米2年国債利回りがなお高い水準にあり、米ドルの下値が制限されるだろう。そのような局面があれば、短期スパンにおける絶好の押し目買いの好機ともいえる。

豪ドル/円 日足  

週間予想レンジ:93.50~97.00

メインストラテジー:押し目買い

・先週の試練は重要
・中段保ち合いを確認
・豪ドルの優位性を発揮

【図表2】豪ドル/円(日足)  
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週波乱となり、値幅拡大させたものの、先々週と同様、保ち合いを維持しながら、堅調な地合いを示した。週足では、先々週の安値を一旦下回ったものの、切り返して陽線で大引けし、これも先々週と同様、大陽線となった10月17~21日の週足と「インサイド」のサインを形成し、これからの上放れにつながるだろう。

理屈としては、同週波乱となったものの、結局のところ大陽線を形成し、10月13日の底打ちを証明した。日銀介入など大きな材料があったが、豪ドルの優位性が発揮され、また基調の改善がむしろ確認されたことにより、一段上値トライの機運が高まっている。これは先々週から先週の試練があったからこそ、蓋然性が一段と証明されたといえる。

10月13日のサインは重要であった。同日一旦90.82円をトライしたものの、強気で切り返し、日足では「スパイクロー」の陽線をもって「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを形成、底打ちを示唆した。その後日銀の大規模介入を想定していたが、結果的に同日のサインを強化することとなり、ブル基調への復帰を決定させた。

32年ぶりの高値を一旦更新した米ドル/円に比べ、豪ドル/円は大きく出遅れた。その大きな背景として、米ドル全面高の中、豪ドルの優位性が試されてきた経緯があった。しかし、先週のFOMCや米雇用統計の結果があったからこそ、豪ドルの優位性が証明され、これから出遅れを挽回してくるだろう。挽回と言えば、年初来高値更新を果たしたユーロ/円や英ポンド/円に比べ、豪ドル/円の年初来高値更新はむしろ自然のなりゆきであり、先々週と同様、先週の値動きが底固い構造を再度証明した。

なにしろ、豪ドルの優位性はなお健在である。豪ドル対米ドルの反落が大分続いてきたものの、水準的にはなおコロナショック直後の安値より大分上に位置し、「底割れ」を果たしたユーロや英ポンドに比べ、豪ドルがむしろ堅調であることを確認できるため、先週の米雇用統計後の豪ドルの切り返しは鮮明であり、これから米ドル反落の受け皿としての役割を果たすと推測される。

11月3日までの反落を、中段保ち合いの一環として扱えるのも翌日の大陽線の形成の他あるまい。底堅さが再度証明された上、11月3日安値の92.95円のトライ自体が「フォールス・ブレイクアウト」のサインと化し、これからの上値トライをもたらす存在とみている。再度95円台後半のトライがあれば、9月22日高値のブレイクも必至とみている。

9月22日は日銀介入日であっただけに、日足における「弱気リバーサル」のサインとしてより支配力があるとみているが、紆余曲折でも同日下落幅を帳消ししていくと推測される。他の主要クロス円に比べ、すでに出遅れている豪ドル/円は、年初来高値の再更新を有力視しているため、押し目買いのスタンスは不変である。