過去2年と異なる年末年始の米金利、米ドル

過去2年連続で年末の12月は米ドル安となった。2022年の年末は130円まで、そして2023年の年末も140円まで米ドル/円は下落した。ところが、年が明けると米ドル高への転換となった。2023年は1月半ばの127円まで米ドル/円は続落したものの、その後は米ドル高へ転換、1月は小幅ながら米ドル陽線引けとなった。一方、2024年は年明け早々米ドル高が広がり、結果的に大幅な米ドル陽線引けとなった。では、今回の年末年始はどうなるか。

日米金利差から考える

日米金利差、10年債利回り差米ドル優位は、2023年以降3~4%中心のレンジで推移してきた。2023年1月はこのレンジを下回り、2024年1月は3.2%程度だったので、ともにレンジの下限近辺だったという意味では、結果的にみると金利差米ドル優位は拡大する余地が大きく、米ドルは買いやすかったと考えられる。

これに対して、足元の金利差米ドル優位は3.4%程度と、2023年以降のレンジの中間点に近い(図表1参照)。これまでのレンジを前提に考えると、過去2年よりは金利差米ドル優位の拡大余地は限られ、その意味では米ドル買いも慎重さが必要かもしれない。

【図表1】米ドル/円と日米10年債利回り差(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米金利から考える

これは、米金利だけで考えた場合、よりそうした印象が強まるかもしれない。2023年以降の米10年債利回りは3.5~5%のレンジ中心に推移してきた。2023年1月の米10年債利回りは一時このレンジを下回っており、2024年1月は4%程度で推移し、やはりレンジの中間点よりは下の水準にあった。これに対して、足元では4.5%程度と、レンジの中間点を上回った水準での推移となっている(図表2参照)。

【図表2】日米の10年債利回りの推移(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

あくまで2023年以降のレンジを前提にすると、足元の米10年債利回りはレンジの上限に近く、その意味ではさらなる上昇余地は過去2年に比べて限られそうだ。これは、トランプ次期大統領の経済政策が財政赤字を拡大させて金利を上昇させる可能性が高く、その影響もあるだろう。逆に言えば、米金利はすでに過去2年の年末年始水準より高くなっているわけで、さらなる金利上昇を期待した米ドル買いは過去2年より慎重さが必要なのかもしれない。

米ドル売り介入の可能性は?

これまで日米金利差、米金利について、過去2年の年末年始と今回を比べてみてきた。過去2年の年末年始は、金利差米ドル優位、米金利ともに最近を下回っており、その意味では当然だが米ドル/円の水準も最近を大きく下回っていた。最近は過去2年の年末年始よりかなり米ドル高・円安の水準にあるわけで、このため過去2年の年末年始より米ドル売り介入への警戒感が高い状況にあるだろう。

2022年以降の米ドル売り介入の実績を検証すると、

1)米ドル/円が120日MA(移動平均線)を5%以上上回る
2)前回の介入が行われた米ドル/円の高値を更新する

という2つの条件を満たしたところで介入は行われてきた(図表3参照)。それを今回に当てはめると、米ドル売り介入が行われるのは、この間の高値161円を超えてきた局面になるが、1)の条件だけなら157円半ばを超えてきたら介入が行われることになる。この観点で見ても、過去2年の年末年始より今回は米ドル買いに慎重さが必要になりそうだ。

【図表3】米ドル/円の120日MAかい離率(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

投機筋のポジションは?

最後に、投機筋のポジションについてみてみる。過去2年間は年末にかけて米ドル安となったことから、米ドル買いポジションも大きく縮小、それは逆に米ドルの「買われすぎ」が修正され、新たに米ドル買いを拡大する余裕が出ていたと見ることができた。足元は12月に米ドル高となった割に、米ドル/円のポジションはほぼニュートラルで、過去2年の年末年始以上に米ドル買いを仕掛ける余裕があると見ることもできる(図表4参照)。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

トランプ次期大統領の経済政策からすると、米金利上昇で米ドル高になりやすいとの声は多い。だからこそ、過去2年の年末年始よりすでに足元でも米金利、米ドルともかなり高くなっている。その上でさらに米金利上昇=米ドル高が続くのか、早々に米ドル安へ転換となるか。当面の方向性が決まるのは早いのではないか。

*注.2024年の「為替デイリー」はこれが最後になります。年明け最初の更新は1月6日の予定です。