N計算値から考察する株価の動き

前回のコラムで、久しぶりに「米ドル/円の8年高値サイクル」の話題を取り上げました。それは、ドル米/円の150円前後という水準が「2011年10月安値」と「2015年6月高値」、「2021年1月安値」を元に弾き出される“N計算値”に相当する水準であるというものです。

細かく計算すると、それは125.85-75.57+102.58=152.86(円)という数値になり、直近(10月22日)高値の151.94円は同計算値に近いと言えます。つまり、「水準」という点では、既に転換点を迎えていると見ることもできるものと思われます。

一方、転換点を迎える「時期(日柄)」としては、前回高値がつけられた2015年6月の8年後=2023年6月あたりが見込まれるということになるわけですが、これは必ずしもぴったりというわけにはいきません。

ちなみに前々回の高値は2007年6月で前回高値までは、ぴったり8年ということになり、その点については当時少なからぬ市場関係者が驚きの声を挙げていました。肝心の今回ですが、足元の状況を勘案すると「どうやら8年経過時よりも少々前倒しとなる公算が大きいのではないか」と思われます。

カナダ銀行や欧州中央銀行は利上げベースを鈍化

周知のとおり、このところ市場ではいわゆる“引き締め過ぎ”への懸念が囁かれはじめています。場合によっては、そろそろ米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする主要中銀の多くが利上げペースを鈍化させるのではないかというのです。

実際、先週10月26日にはカナダ銀行(BOC)が政策金利である翌日物金利の誘導目標を0.5%ポイント引き上げ、7月の1%ポイント、9月の0.75%ポイントから利上げペースを鈍化させました。

翌10月27日には、欧州中央銀行(ECB)が市場の予想通りに0.75%ポイントの利上げ実施を決定しましたが、市場はラガルド総裁の会見内容なども考慮に入れた上で「全体として想定よりもハト派的な内容」と受け止めていました。

今週行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.75%ポイントの利上げ実施が有力視されていますが、市場の関心は「果たして、12月は?」という点に既に移っている模様です。

先週10月27日に発表された米国の第3四半期におけるGDPデフレータが4.1%と予想を大きく下回ったことや、10月28日に発表された9月の米個人消費支出(PCE)価格指数においてコアデフレータが前年比5.1%上昇と、これまた事前の市場予想を下回ったことなどが、足元の市場心理に大きく影響している部分もあるでしょう。

米ドル/円はもう一段高値にトライするか

もちろん、米ドル/円については直近高値がピーク(8年サイクル高値)だった可能性はなくはないものの、場合によってはもう一段の高値にトライする可能性も十分にあると見られます。

その1つの目安として、9月22日安値から10月21日高値までの上昇に対する61.8%押しの水準=114円台後半の水準を割り込むかどうかを見ておきたいところです。

同水準をクリアに下抜けると、当面のピークアウト感は拡がりやすくなるものと見られます。思えば、145円処というのは少し前まで政府・当局の介入警戒に伴う“上値の壁”と見られていた1つの重要な節目です。それだけに一旦上抜けると今度は強い下値サポートとして意識されやすくなる可能性もあります。

また、他の主要通貨に対する米ドルの評価というものも見逃せません。今週11月1日には豪中銀(RBA)の政策会合があり、前回と同様に市場を少々揺らす可能性もあるものと心得ておきたいところです、

また、11月3日にはBOEの会合も控えており、豪ドルや英ポンドが対米ドルでやや大きく動く可能性も否定できません。個人的には、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルが「戻り一服から一転弱気に転じるかどうか」を見定めておきたいと考えており、場合によってはユーロ/円、英ポンド/円の戻り売りを検討するのも一法ではないかと考えています。