習近平総書記が3期目入りした中国共産党大会とは

中国の指導政党である共産党は1億人程度の党員を有しているが、その中から選ばれた2,000人を超える党代表が5年に1度開催される「中国共産党全国代表大会(略称:党大会)において、中国を率いる党指導部を選出する役割を担う。これが中国の党大会が世界から注目される最大の理由である。

2022年10月に北京で開催された党大会を経て、新たな党指導部(任期が5年)が10月23日に発足した。習近平総書記は予想された通り3期目に突入した。

同氏の続投により、中国の内政や外交政策などは、これまでの軌道から大きく逸することが無いだろうとみられている。その一方、党大会の場で行われた同氏の演説では目立った変化も見られた。

今後5年間の内政外交政策の方向性

10月16日の党大会開幕式では、習近平総書記が党指導部を代表して演説を行い、党が目指す2つの大きな目標のうち、小康社会(ややゆとりのある生活ができる社会)の全面的完成を最大の実績に挙げた。

そして、今後5年はもう1つの目標である「21世紀半ばまでの強国入り」に向けた重要なキックオフ期と位置付け、内外情勢における「波乱万丈な試練(これまでで最も厳しい表現)」にも備える必要性を強調した。

また、米中対立を念頭に、先端技術での「自立」を党大会の場で初めて呼び掛け、高度人材の育成やイノベーションの促進を急ぐ方針を示した。台湾との統一は「中華民族の偉大な復興」のラストピースと位置付け、平和的な統一に向けて最大限の努力をするとしつつ、独立勢力や外部勢力を対象とした武力行使の権利は決して放棄しないと表明した。表現自体は従来よく使われていたものだが、党大会の場で武力行使に言及したのは初めてのことである。

中国は建国当初の革命路線を1980年代の改革開放を機に軌道修正し、イデオロギー色を抑えてきた。しかし、今般の演説では中国独自の発展モデルを意味する「中国式現代化」を初めて前面に出し、さらにそれを「人類が現代化を推し進める上で(西側の資本主義と並ぶ)もう1つの選択肢」であると誇示したことにより、イデオロギーをめぐり西側との対立が先鋭化することが懸念される。

【図表】今後5年間の内政外交政策の方向性(党大会報告)
出所:第20期党大会開幕式における活動報告より丸紅経済研究所作成

楽観できない滑り出し

2023年3月に開催される見込みの全国人民代表大会(全人代)で国家主席や総理、全人代委員長など国家組織のトップ人事が決まる段取りとなっている。経済運営を司る次期総理や対米政策を総括する要職の人選などが当面の焦点だ。

また、ゼロコロナ政策や史上もっとも困難な局面にある住宅不況への対策など、今回の党大会または2023年の全人代を契機に軌道修正が入るか否かにも注目が集まるだろう。

また、公表が延期となっていた7~9月期の実質GDP成長率が党大会終了後10月24日に公表された。前年比+3.9%(4~6月期:同+0.4%)、前期比年率+16.5%(4~6月期:同▲10.4%)と改善を見せた。

年末にかけて景気刺激策のラストスパートが予想されるが、ゼロコロナ政策や住宅不況が重しとなり、年間の実質GDP成長率目標(前年比+5.5%程度)の大幅未達が確実視されている。2023年も低成長が続く可能性があり、新指導部にとって楽観はできない滑り出しとなりそうだ。

党指導部は長い目で2035年までに中進国入り、2050年までに先進国入りを目指し「成長最優先」としているが、構造的な経済成長の低下や対外関係の悪化といった内憂外患へどのように対処していくかが注目される。

 

コラム執筆:李 雪連/丸紅株式会社 丸紅経済研究所 シニア・アナリスト