モトリーフール米国本社、2022年10月4日 投稿記事より
主なポイント
・ピンタレストのユーザー数はパンデミックの収束に伴って減少したが、事業は絶好調
・ピンタレストの主要株主は売却を望んでいるようだが、グーグルが関心を寄せているとの見方もある
・今後3~5年を見据えるのであれば、ピンタレストは独立を維持する方が良いと思われる
ピンタレストを巡る噂が絶えない理由
画像共有サイトを運営するピンタレストが振り回されています。ここ数週間の株価の乱高下もありますが、とにかく異常なほどに忙しい夏でした。共同創業者であるベン・シルバーマン氏がCEOを辞任し、アルファベット(GOOGL)のグーグル・コマース部門のトップを務めていたビル・レディ氏が後任となりました。その後、投資会社のエリオット・マネジメントが、ピンタレストと決済サービス大手ペイパル・ホールディングス(PYPL)の株式を大量に取得しました。これだけの出来事が起これば、ピンタレストが買収されるという噂が飛び交うのも無理もありません。
エリオットが何らかの売却を進めているとの報道があり、ペイパルが2021年にピンタレストの買収を目論んでいたことを考えると、エリオットが両社の株式を保有していることは単なる偶然とは思えません。しかし、レディCEOにはグーグルとの古いつながりがあり、アルファベットのサンダー・ピチャイCEOが謎めいたコメントを発したことは、同社もピンタレストに関心を寄せていることを示唆している可能性もあります。
買収はピンタレストの株主にとって最善の結果なのかもしれませんが、ピンタレストが独立を維持することを望み、今後数年間の動向を見守りたいと考える人もいるでしょう。
買収が実現する場合、好ましい買い手はどこになるのか
ピンタレストが買収されるとしたら、ペイパルは買い手として最善ではないと思われます。ピンタレスト株を足元の株価に対してプレミアムで売ることができれば、決して最悪の事態ではないでしょう。しかし、ペイパルは厳しい競争にさらされており、財務上の問題や成長の大幅な鈍化に直面しています。ピンタレストの買収はペイパルを一時的に盛り上げるかもしれませんが、必ずしもペイパルの中核事業を強化するとは思えません。
一方で、アルファベットに関しては、ストーリーが異なります。ピンタレストの画像検索エンジンは、グーグルのインターネット帝国に自然な形で馴染むのではないかと思われます。また、ピンタレストはEコマースプラットフォームとしての機能強化に取り組んでいるため、オンラインショッピングの分野で存在感を高めようとしているグーグルにとっても有益なはずです。
さらに、アルファベットにとってピンタレストは楽な買い物です。ピンタレストの現在の企業価値は130億ドルです。大幅なプレミアム価格(例えば、200億~250億ドル辺り)を提示したとしても、資金繰りに苦労することはありません。同社は6月末時点で、1,250億ドルの現金および有価証券を保有しています。
グーグルにとっては、おそらく独占禁止法の方が大きな問題でしょう。インターネット検索における事実上の独占は、すでに監視の目が向けられており、規制当局の介入を求める声が上がっています。いずれにせよ、事業統合の観点で見れば、インターネット検索企業2社(グーグルとピンタレスト)が一緒になることは、決済と検索(ペイパルとピンタレスト)が一緒になるよりもはるかに理にかなっています。
買収は本当に良いことなのか
ピンタレストの株価は、2021年初頭に付けた過去最高値から70%超下落しています。足元の株価にプレミアム付きですぐに売却できれば、最高値付近で買った投資家にとっては、マイナスながらも妥協できるかもしれません。さらに、買収側の企業に投資すれば、回復を試みるピンタレストに間接的であれエクスポージャーを持つことができます。
しかし、ピンタレストは急いで身売りをする必要はありません。確かに、月間アクティブユーザー数は、ピークとなった2021年第1四半期の4億7,800万人から2022年第2四半期は4億3,300万人に減少しています。それにもかかわらず、広告を通じてユーザーの価値を引き出し、マーチャントがオーディエンスのエンゲージメントを管理するためのツールを充実させたことで、売上高は増加し続けています。第2四半期売上高は、前年同期比で9%増加しました。レディ新CEOが月間アクティブユーザー数を安定させることができれば、増収率は加速する可能性があります。
それに、ピンタレストを過小評価してはいけません。同社には絶対的な強みがあります。ここ数年間に一気にもてはやされた多くのインターネット企業と異なり、ピンタレストは高い収益性を誇ります。過去4四半期に6億8,500万ドルのフリーキャッシュフローを生み出し、フリーキャッシュフローマージンは25%と、極めて健全な水準にあります。6月末時点の現金および有価証券は26億6,000万ドルに上り、負債はありません。現金及び現金同等物は、ピンタレスト足元の時価総額の17%に相当します。
言い換えると、買収によってピンタレスト株は目先のリターンをもたらすかもしれませんが、同時に長期的な潜在性を大幅に過小評価することにもなりかねません。特に今は、極度の恐怖からバリュエーションが大きく押し下げられている弱気相場の最中です。
数年間の保有を視野に入れた長期投資家であれば、現時点での情報を見る限り、ピンタレストにとって最善の結果は独立を維持することだと考えます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Nicholas Rossolilloおよびその顧客は、アルファベット(クラスC)、ペイパル・ホールディングス、ピンタレストの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット(クラスA)、アルファベット(クラスC)、ペイパル・ホールディングス、ピンタレストの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。