モトリーフール米国本社、2022年10 月2日 投稿記事より

主なポイント

・2020年当時、投資家はアップルよりもアマゾン・ドットコムに強気だった
・2021年になると、アマゾン・ドットコムがコロナ後の成長鈍化に直面し、アップルがシリーズ初の5G対応iPhoneを発売したことで形勢は逆転
・アップルは新たな製品やサービスの投入によってエコシステムを拡大させ、今後数年間にわたってリードを維持する可能性

2大ハイテク企業の時価総額競争

2020年4月、アマゾン・ドットコム・ドットコムの時価総額はアップルを一時的に上回りました。当時、両社の時価総額は約1兆2,000億ドルでした。その後、アマゾン・ドットコムの時価総額は今でも1兆2,000億ドルほどですが、アップルの時価総額は2兆4,000億ドルに倍増しています。アップルがアマゾン・ドットコムをこれほど大きく引き離すことができたのはなぜでしょうか。そして、アマゾン・ドットコムは2025年までに再びアップルに追い付くことができるでしょうか。

アマゾン・ドットコムがアップルを追い越した理由

2020年初め、アマゾン・ドットコムは、アップルよりも魅力的な投資先に見えました。新型コロナウイルスの感染拡大で実店舗が閉鎖し、消費者が自宅にとどまり、クラウドベースのサービスやアプリへのアクセスが増加したことで、アマゾン・ドットコムのEコマース事業とクラウド事業は、パンデミックの期間中に成長が見込まれていました。

2020年のアマゾン・ドットコムの売上高は前年比38%増の3,861億ドル、純利益は、新型コロナウイルス関連で数十億ドルの費用がかかったにもかかわらず同84%増の213億ドル、1株当たり利益(EPS)は同82%増でした。強気派の論拠はシンプルで、アマゾン・ドットコムのEコマース事業は、アマゾン・ドットコム・プライムで買い物客を囲い込むことで拡大し続け、利益率の高いクラウド事業のアマゾン・ドットコム・ウェブ・サービス(AWS)の成長が、利益率の低いEコマース事業の成長を補完するというものでした。

当時、5G対応のアンドロイド端末が市場に出回る中、アップルはまだ4G対応のiPhoneを販売していました。中国市場ではXiaomi、Oppo、Vivoといった現地のスマートフォンブランドにシェアを奪われていました。iPhoneシリーズで初の5G対応となるiPhone12は、2020年後半にようやく発売されました。米中間の貿易戦争も、中国でのアップルの生産能力を脅かす問題でした。

その結果、アップルの2020年度(2020年9月期)の売上高は、前年比わずか6%増の2,745億ドル、純利益は同4%増の574億ドル、EPSは自社株買いに押し上げられて、同10%増となりました。こうした精彩を欠く数字は、アップルの高成長時代が終わったことを示唆しており、多くの投資家はアップルよりもアマゾン・ドットコムを選好しているようでした。

アップルがアマゾン・ドットコムを抜き返した理由

しかし、パンデミック関連の追い風が弱まると、前年比という厳しいハードルによりアマゾン・ドットコムの成長率は低下しました。それでも、2021年の売上高は前年比22%増の4,698億ドル、純利益は同57%増の334億ドル、EPSは同55%増となりました。

残念ながら、マクロ面での複数の課題により、アマゾン・ドットコムのコロナ後の減速は2022年に悪化する見通しです。インフレは消費者の購買力を抑制し、マーケットプレイスを運営するアマゾン・ドットコムにとってはコスト増につながります。また、マクロ面の逆風は、クラウドサービスに対する企業の支出意欲を徐々に減退させると思われます。創業者のジェフ・ベゾス氏が2021年7月にCEOを退任したことも、アマゾン・ドットコムの成長とバリュエーションが当面のピークを過ぎたことを強く示唆しています。

2022年について、アナリストはアマゾン・ドットコムの売上高が前年比11%増にとどまり、純利益は投資の拡大により同98%減という大幅減になると予想しています。この衝撃的な減益予想に投資家は怯え、株価は年初来で33%下落しています。

アマゾン・ドットコムの成長が冷え込む一方で、アップルはiPhone12の発売やサブスクリプションサービスの拡大を背景に、成長が加速しました。2021年度の売上高は前年比33%増の3,658億ドル、純利益は同65%増の947億ドル、EPSは同71%増となりました。こうして、コロナ時代を支えた投資テーマが燃え尽きると、アマゾン・ドットコムは再び魅力的なグロース株として返り咲きました。

アナリストはiPhone13が発売された2022年度の売上高を前年比7%増、純利益を同5%増と予想しています。こうした着実な成長率と、富裕層の顧客はインフレに強い特性があることから、アップルは間違いなくアマゾン・ドットコムよりも魅力的な投資先となっています。株価が年初来で15%下落にとどまっているのも、それが理由です。

2025年までに再逆転はあるか

インフレやサプライチェーン問題といった逆風がなくなれば、アマゾン・ドットコムの成長は安定すると見られますが、パンデミックの頃のような急成長は期待しない方が良いでしょう。アナリスト予想によると、アマゾン・ドットコムの売上高は2021年から2024年にかけて年率14%増、EPSは同6%の伸びが見込まれます。

一方で、アップルは数年以内に新たな拡張現実(AR)デバイスの発売が広く期待されており、iPhone、iPad、Macにとどまらない収益の多様化が見込まれます。将来的には電気自動車の発売も予定しています。2022年4-6月期末時点で、同社のサービスエコシステム全体の有料会員数は8億6,000万人に達し、この壁に囲まれた巨大な庭が将来の製品やサービスの発売を後押しするはずです。道筋はまだ不透明ですが、アナリストは、アップルの売上高が2021年度から2024年度にかけて年率6%、EPSは同8%で成長すると予想しています。

アマゾン・ドットコムは、アップルよりも力強い売上成長を実現するかもしれませんが、事業の利益率がはるかに低く、自社株買いもアップルほど積極的ではないため、利益の伸びは低調が続くと見られます。アマゾン・ドットコムの足元の株価は約120ドル、2024年予想株価収益率(PER)は30倍を上回ります。一方のアップルは、株価は約150ドル、2024年予想PERは22倍です。

1桁台の利益成長があと数年続くとの見方を投資家が織り込めば、アマゾン・ドットコムの割高なバリュエーションは低下する可能性があります。一方で、アップルは、新たな製品やサービスの投入に伴ってPERは横ばい、あるいは上昇する可能性もあります。

アップルとアマゾン・ドットコムが2025年にどのような状態になっているか、正確に予測することはできません。しかし、上記の事実を踏まえると、今後3年以内にアマゾン・ドットコムの時価総額がアップルを上回る可能性は極めて低いと思われます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Leo Sunは、アマゾン・ドットコム・ドットコムおよびアップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム・ドットコムおよびアップルの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。アップルの2023年3月満期の120ドルコールのロング、アップルの2023年3月満期の130ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。