先週の米国株式市場は大幅下落

先週、S&P500は4.65%、ナスダック100は4.64%下落しました。

先週金曜日(9月23日)NYダウは29,250をタッチ、1月3日の史上最高値から20.8%下落、2022年の最安値を更新しました。S&P500も同日に3,647.47まで下落しましたが、かろうじて6月につけた2022年の最安値である3,636.87を下回ることはなく1日を終えました。

先週水曜日(9月21日)のFOMC(米連邦公開市場委員会)にて、FRB(米連邦準備制度理事会)は2022年に入り3回目のフェデラル・ファンド(FF)金利引き上げを行い、FF金利を現状の誘導目標1.5~1.75%から0.75ポイント引き上げ、3~3.25%とすることを決定しました。

ドットプロットによると、年内のFF金利もこれまでの3.4%から、4.4%へと見通しが引き上げられました。インフレを退治するまで徹底的に利上げを継続するというパウエル FRB議長のコミットメントが再確認される内容でした。

これを受け、先週FOMC後の米国株式市場は下落しました。では、現在のマーケットのレベル感を確認してみたいと思います。

短期的に株価がリバウンドする可能性も

先週金曜日(9月23日)の下落により、S&P500採用銘柄のうち50日移動平均線を上回る銘柄の割合は5%を切ってしまいました。言い換えると、95%以上の銘柄が50日移動平均線を下回っているということです。歴史的にここまで多くの銘柄が売り込まれることは滅多にありません。

また、マーケットの転換を測る指標の1つであるCBOE(シカゴオプション取引所)のプット・コール・レシオ(プットオプション[売る権利]とコールオプション[買う権利]の建玉残高を元に相場の強弱感を示す指標)のレベルを見ても過去にあまり例を見ないほど現在のマーケットは弱気であると判断できます。

AAII(米国個人投資家協会)が毎週発表している直近のブル・ベアレシオを見ると、弱気な投資家の比率は60.9%となっています。これは1987年7月に同指数が発表されてから5回目に弱気なレベルとなっています。35年間の平均である31%を大きく超えるレベルです。2022年6月にマーケットが大きく下がった時、また2020年3月のコロナショックで最初にマーケットが下がった時を超える投資家の弱気なセンチメントを表しています。

だからと言って、翌日から株価が反転するというものではありません。ただし、少なくとも短期的に株価がリバウンドしても良いレベルに近づいていると言ってよいでしょう。

ブル・ベアレシオの弱気の見方が60.9%に達しましたが、もちろん、この弱気のレベルがもっと悪化する可能性もあります。しかし、過去4回とも1年後の株価が上がっているというデータがあるのです。

今後の焦点は10月半ば以降発表される企業業績

株価を動かす大きな要因の1つは金利のレベルであることは間違いありません。しかし、決して金利が全てではありません。企業業績も大事な要因の1つです。

米国では10月半ばからは第3四半期の業績発表が本格化します。現時点では前年比3.2%の増益予想になっています。ただし、6月25日時点での予想では10.3%でしたが、約2ヶ月の間に下方修正されてきたのです。

【図表】米国企業業績の見通し
S&P500 EPS成長率予想(四半期)
期間:2021年第4四半期〜2023年第4四半期
2022年6月25日、2022年7月22日、2022年8月19日、2022年9月24日時点の比較
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

このところの金利の上昇を受け、今後どの程度の業績の下方修正が起きるのか、または起きないのかというところが焦点となります。

今週発表予定で注目したい経済指標は、FRBが参考にしているPCE(個人消費支出)コアデフレターです。前回の前月比0.1%上昇に対し、今回は先月比0.5%上昇が予想されています。

今週テスラ(TSLA)の「AIデー」

あまりにもネガティブな話が多いので、ポジティブな話もご紹介しましょう。

今週金曜日(9月30日)にはテスラ(TSLA)の「AI(人工知能)デー」が開催されます。テスラはこの時期に各種イベントを行っています。2021年は「AIデー」、2020年は「バッテリー・デー」でした。アップル(AAPL)の製品発表会では新商品が発表されますが、テスラのこのイベントでは、将来発表されるかもしれない技術についての説明が行われます。世界中の投資家を含む数百万人がイーロン・マスクCEOの既成概念の枠を超え、限界に挑む考えをライブ配信で観て、テスラの将来像を描くのです。

例えば、2021年のAIデーでは、世界最速のAIトレーニング用のスーパー・コンピューター「Dojo(ドージョー)」の研究開発を発表しました。同イベントで投資家の興味を引いたのが、人型汎用ロボット「テスラ・ボット」(現在オプティマスと呼ぶ)の発表でした。これは、人間に代わってルーティンワークを行うロボットです。このロボット開発は、今後の世界的な労働力不足をサポートするだけでなく、マスク氏が描く将来的な火星への移住の際に火星での力仕事のロボットにさせることも視野に入れてのことです。

当初AIデーは8月19日に予定されていましたが、9月に延期されました。その理由はオプティマスのプロトタイプを間に合わせるためではないかと言われています。

マスク氏は、10年以内には子どもが親孝行として親にロボットをプレゼントするような時代がやってくるだろうと述べています。