モトリーフール米国本社、2022年9月13日 投稿記事より

主なポイント

・アボット・ラボラトリーズは、診断薬や医療機器といったさまざまな分野のリーダーであり、多くの成長機会がある
・アッヴィは、2023年に大ヒットとなる薬に挑戦するが、株式市場を上回るパフォーマンスが続く見通し
・ギリアド・サイエンシズは、HIV治療における明らかなリーダーであり続ける

優れているのは配当だけではない

優れた配当銘柄を探すと言っても、選択肢はさまざまです。その中で、事業基盤が強いというのは、1つの判断基準となります。以下では、9月に投資を検討したい、破竹の勢いの配当銘柄3社について紹介します。

アボット・ラボラトリーズ:豊富な成長機会

ヘルスケア企業のアボット・ラボラトリーズは2022年6月に、394四半期連続となる配当を発表しました。つまり同社は、1924年から四半期配当を払い続けているということです。あと6四半期で、100年の大台に到達します。

配当利回りは1.8%と、S&P500指数の平均配当利回りである1.7%と比べると平凡な水準に見えるかもしれません。しかし、アボット・ラボラトリーズが配当銘柄として優れているのは、長期にわたって着実に増配してきた実績です。これまで50年連続で配当を引き上げており、配当王の仲間入りを果たしました。現在の四半期配当額は、5年前と比較して77%上回っており、配当成長株として保有する価値はトップクラスです。配当性向は40%未満であり、目先の配当をカバーするだけでなく、今後何年も増配を継続するためのフリーキャッシュフローは十分です。

こうした安定性をもたらしているのは、堅実かつ多様性のある事業です。同社は診断薬、医療機器、栄養剤、医薬品といったさまざまな事業が収入源となっています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う検査の必要性、患者が糖尿病を管理するための機器、乳児用粉ミルクなど、アボット・ラボラトリーズの事業はその多様な製品構成により、安定しているのと同時に成長機会に満ちています。

業績を押し上げてきた新型コロナウイルスの検査キットがなくなったら、アボット・ラボラトリーズは成長できないと考えるのは間違っています。2022年第2四半期の、新型コロナウイルス検査を除いた売上高の内部成長率は4.1%でした。アボット・ラボラトリーズの事業は、1つの分野に過度に依存していません。同社の強みと潜在的な成長機会を考えると、同社は配当株として過小評価されていると言えます。

アッヴィ:収益性の高い多くの医薬品がパイプラインに

製薬会社のアッヴィには、アボット・ラボラトリーズと多くの共通点があります。アッヴィはかつて、アボット・ラボラトリーズの1部門でしたが、2013年のスピンオフ以降、アッヴィは元の親会社さえ上回る目覚ましい配当実績を上げています。配当はこれまでに250%以上引き上げられており、足元の配当利回りは4%を上回ります。

しかし、アッヴィが優れているのは配当だけではありません。株価も目覚ましく上昇しており、過去10年間で4倍近くになっています。2022年に入ってからは、それほど好調ではありませんが、それでもS&P500指数のパフォーマンスを大幅に上回っています。

アッヴィは、今後10年でも市場をアウトパフォームできる要素を持っています。確かに、米国市場では2023年から、自己免疫疾患治療薬の「ヒュミラ」がバイオシミラー(バイオ後続品)との競争に直面します。アッヴィの2022年第2四半期売上高のうち約37%を同薬が占めていることを考えると、これは重大な問題です。

しかし、アッヴィには他にも、ヒュミラの売上減少を穴埋めできる製品があります。例えば、自己免疫疾患の新薬である「Rinvoq」と「Skyrizi」を合わせると、ヒュミラを上回るピーク売上高になると同社は見ています。さらに、成長の原動力となり得る医薬品として、抗精神病薬の「Vraylar」、血液がんを対象とした「Venclexta」、片頭痛薬の「Qlipta」と「Ubrelvy」などは、特に期待されます。

ギリアド・サイエンシズ:不屈のバイオテック大手

バイオ医薬品企業のギリアド・サイエンシズはここ3年程の間に、規制関連でいくつもの逆風に直面しています。同社は、新たに複数の承認を取得することで製品ラインアップを強化する予定でしたが、計画通りには行きませんでした。とはいえ、新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー」のおかげもあり、業績は堅調を維持しています。

ギリアド・サイエンシズは、たとえ製品ラインアップが期待通りに行かなくても、連続増配をやめる気はないようです。配当金は過去3年間に15.9%増加しており、年平均伸び率は5%を超えています。このように、企業固有の問題や世界的な景気減速にもかかわらず配当を引き上げることができるのは、優れた配当銘柄の証と言えます。

幸いなことに、ギリアド・サイエンシズの未来は有望です。例えば、同社は今でもHIV治療薬市場のリーダーです。抗HIV薬「ビクタルビ」の市場シェアは、2022年第2四半期に前年同期比4%ポイント上昇して44%となりました。また、「デシコビ」もHIV曝露前予防(PrEP)市場で第2四半期に44%のシェアを保持しています。ただし、後者に関しては、ジェネリック医薬品との競争により、シェアは前年同期比で約1%ポイント低下しました。

さらに、ギリアド・サイエンシズは処方薬の分野でも製品ポートフォリオの強化を図っています。8月には、HIV治療薬で有効性が6ヶ月持続する「Sunlenca」が、この種の製品として初めて欧州で承認されました。米食品医薬品局(FDA)は3月に、製造上の問題から同薬を承認しませんでしたが、ギリアド・サイエンシズはその後、FDAが指摘する問題点を解決し、再度、承認申請しています。

ギリアド・サイエンシズのパイプラインには、他にも多くのHIV関連製品があります。同社は、腫瘍分野でも大型製品を生み出そうとしています。最近のトラブルにもかかわらず、同社は今後も安定した業績が見込まれます。平均を上回る4.5%という配当利回りと、極めて手堅い39%の配当性向を持つ同社は、9月に投資を検討すべき配当銘柄と言えます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者David Jagielskiは、記載されているどの銘柄にもポジションを保有していません。Keith Speightsは、アッヴィの株式を保有しています。Prosper Junior Bakinyは、記載されているどの銘柄にもポジションを保有していません。モトリーフール米国本社はギリアド・サイエンシズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。