為替も知る日銀の「スーパーレディ」

止まらない円安が展開する中、9月8日に、財務省と日銀、金融庁の3者会合が開かれた。これを受けて、財務省の神田財務官は「ファンダメンタルズだけでは正当化できない急激な動き」「あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」などと述べたという。

この中で、「為替市場において必要な対応を取る」といった表現は注目されるものだろう。なぜなら、これは普通なら為替市場介入を行うといった意味で使用される表現だからである。

例えば、G7(先進7ヶ国)財務相会議では、最もよく知られた1995年4月、米ドル安・円高阻止の協調介入が実施された後、1995年4月25日の共同声明は「為替市場において緊密な協力を継続することに合意した」となっていた。

また、これまでにおいて「最後のG7協調介入」とされるのは、「米国における同時多発テロ事件」などを受けた例外的ケースを除くと、2000年9月のユーロ安阻止の協調介入だ。これを受けたG7共同声明も「為替市場において適切に協力していく」となっていた。

文章を素直に読むと、「為替市場における協力」とは、まさに為替介入だろう。逆に言えば、為替介入で合意に至らなかったケースの共同声明の表現は、「為替市場をよく注視し、適切に協力」とされるのが基本だった。両者はとてもよく似ているものの、「為替市場における協力」といった具合に、直接的な為替市場介入を意味する表現か否かの違いは、極めて大きかったと言えるだろう。

以上を見ると、財務省を代表する立場でこの3者会合に参加した神田財務官の発言は、いよいよ円安阻止の為替介入を決めたと受け止められるものだった。ただし、同会合に参加した3者の合意を意味すると考えられる共同声明の発表は、今回なかった。それは普通に考えれば、円安阻止介入について、財務省が覚悟を決めた可能性はあったものの、他の2者の合意がなかったということではないか。

仮に、財務省が為替介入を行う覚悟を決めたとして、それが日銀、金融庁との3者会合の合意を得られなかったとするなら、それはなぜか。この3者会合への日銀の出席者の1人は清水理事。「女性初の日銀役員」など、ことごとく「日銀における史上初の女性」とされてきた同氏における、まさに「日銀史上初の女性」のポジションの1つが為替市場介入の陣頭指揮役である為替課長だった。要するに、「日銀のスーパーレディ」とされる清水理事は、為替政策にも極めて精通していると見られる。

客観的に見ると、日銀が金融緩和を続ける中で、円資金を吸収するといった意味では金融引き締めとなる円買い介入は逆行する政策であり、効果は見込みにくいと考えられる。そういった中で、財務省が円安阻止介入を決めても、為替政策の知識と経験もある「日銀のスーパーレディ」が、それに同意しないということは十分あり得ることではないか。