米ドル/円が140円の節目へ

ついに、米ドル/円が140円の節目を超える動きとなりました。さして過熱感もなく、ファンダメンタルズに即したごく自然な流れです。

取り巻く状況を考えれば、1つのわかりやすい目標であった140円を攻略したことに何ら違和感はありません。逆に言えば、当面の大きな目標水準にもはや到達してしまったわけで、目先としては一定の達成感が拡がりやすい状況であるとも言えるのではないでしょうか。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による「ジャクソンホール講演」のインパクトが大きかったことは間違いないでしょう。その結果、9月の米利上げ幅について「0.75ポイントもあり得る」との見方が改めて市場で強まり、米ドル/円を一段と押し上げました。

ここで再認識しておきたいのは、さすがに今回「1ポイント」は考えにくいものの、「0.5ポイント」の可能性は十分に残されているということです。その意味で、当面の米ドルの上値余地がある程度限られると見ることもできると思われます。

8月の米消費者物価指数に注目

先週末9月2日に発表された8月の米雇用統計の結果は、足元の米雇用の底堅さを再確認させるものでしたが、それはFRBの利上げ加速に対する市場の懸念をやや和らげるものでもありました。

雇用者数が順調に増加したうえ、労働参加率が上昇した結果、失業率が上昇したことが将来的なインフレ率低下への期待につながりました。むろん、次に最も注目されるのは9月13日に発表される8月の米消費者物価指数(CPI)でしょう。7月分の米CPI発表後、米ドル/円が一気に3円分ほど値を下げたのは記憶に新しいところです。

パウエル議長のジャクソンホール講演は現実味を増すか

市場の一部には、いまだパウエル議長のジャクソンホール講演の内容に対する疑心暗鬼が浮き沈みしています。これまでにも、議長は“風見鶏”と言うべきか、それとも“日和見的”と言うべきか、時と場合によって平気で姿勢や発言を変えるということがしばしばありました。

そうしたことから、ジャクソンホール会合の閉幕後には、SNS上のツイッターにおいて“パウエル・ピボット”というトピックで投資家らの議論が白熱したといいます。つまり、近い将来において再びパウエル議長が、またハト派に「ピボット」しても全くおかしくはないということです。

総じて、なおも米ドルは基本的に強気の流れにあると見られるものの、ここから一段の上値を追うことには少し慎重でありたいと個人的には考えます。

9月13日の米CPI発表後、一気に相場の基調が変わる可能性もないではありません。遅くとも、今月下旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)に相前後して米ドルが調整含みとなる可能性もあるでしょう。仮に9月の利上げが「0.75ポイント」であったとしても、11月、12月の利上げはそのペースが鈍化する公算の方が今のところは大きいと考えられます。

仮に米ドル/円がひとたび調整含みとなった場合は、当面の下値を一目均衡表(日足)の転換線や50日移動平均線(50日線)がサポートするかどうかに注目しながら、基本的には短期目線で臨機応変に対応したいと考えます。

米ドル/ユーロは強含みの可能性

今週9月8日には欧州中央銀行(ECB)理事会が開催されますが、このほどシティグループはレポートで「0.75ポイントの利上げに反対するのは困難になった」と指摘しました。「9月と10月は2回とも0.75ポイントとなる可能性がある」とも指摘しており、9月の結果次第で一旦は対米ドルでユーロが強含みになる可能性も否定はできなくなっています。

足元でユーロ/米ドルは0.99ドル処で下値を支えられたような格好となっており、当面は1.00ドルを軸とした0.99-1.01ドルのレンジ内での動きを続けると見ますが、ECB理事会や米CPIの結果発表など、相場を大きく揺るがしかねないイベントが控えていることも考慮したうえで、暫くは慎重に向き合うことが肝心と思われます。