上海総合指数が弱い動きになった背景とは

2022年7月上旬の中国本土市場・香港市場はともに下落となっています。2022年7月4日終値から2022年7月14日終値までの騰落率は、上海総合指数が-3.6%となり、香港ハンセン指数は-4.9%となっています。

上海総合指数はちょうど200日移動平均線で頭を押さえつけられる形で株価が下がってきており、香港ハンセン指数は株価が100日移動平均線と50日移動平均線を下に突き抜けてしまっています。

上海総合指数が弱い動きになってしまっている背景には2つの理由があると思います。1つは新型コロナウィルスの感染再拡大です。上海市などでロックダウンが解除され、経済指標も良い数値がでてきている中国経済でしたが、新規感染者が1日あたり500人よりも少ない数字ではあるものの増加しており、再度のロックダウンなどの行動制限措置が警戒されているところです。

もう1つの問題は不動産ディベロッパーの資金繰りなどの問題が悪化していて、建設が中断された不動産プロジェクトの物件購入者が住宅ローンの支払いを拒否する動きが全国に広がっていることです。

7月時点で既に100ヶ所以上の開発プロジェクトで住宅ローンの支払いの拒否が起きています。これは当然不良債権の拡大に繋がるため、銀行株への悪影響もありますし、不動産の販売動向や資金繰りの懸念などから不動産株が軟調となる理由ともなっています。

ちなみに、これを受けて中国当局は銀行と会合を開き、打開策を検討した模様ですが、特に具体的な解決案は出なかった様子です。なお、建設が止まっているプロジェクトの割合ですが、全体の1~2%と試算されており、現時点で、中国経済全体に対する影響はそこまでは大きくありません。しかし、建設を休止するプロジェクトが今後増えてきたり、破綻する不動産会社が増えたりするようですと、相場全体に大きな打撃になる恐れがありますので注意が必要です。

香港株はハイテク株が軟調に

一方、前回のコラムでハイテク株に底打ちの様子が見え始めたと書きましたが、その後、やや状況が変わっています。

7月10日にアリババ・グループ・ホールディング(09988)、テンセント(00700)、平安健康医療科技(01833)、ビリビリ(09626)、レノボ・グループ(00992)、ウェイボー(09898)、滴滴出行(DIDI)などが実施した企業買収や出資において、中国当局への申告がなされなかったことが独禁法に違反するとして各社に罰金が科せられたのです。

もっとも、一件あたりの罰金額は1,000万円程度ですのでこれらの企業にとっては、それほど業績に大きな影響を与えるというわけではないのですが、依然としてIT企業への締め付けが続いているという点が市場では懸念され、IT関連銘柄の下落につながっています。

なお、それとは別にアリババ・グループ・ホールディングのクラウドプラットフォームから大量の警察データが盗まれた件を巡り、同社の幹部が上海当局から呼び出しを受けており、これもアリババ・グループ・ホールディングの株価が重くなる原因となっています。

なお、当該期間に発表された6月の中国の経済指標ですが、Caixin中国サービス業PMIは54.5(市場予想49.6、前月実績41.4)、PPIは前年比6.1%増(市場予想6.0%増、前月実績6.4%増)、CPIは2.5%増(市場予想2.4%増、前月実績2.1%増)となっております。

また、マネーサプライ(M2)は前年比11.4%増(市場予想11.0%増、前月実績11.1%増)、輸出は前年比17.9%増(市場予想12.5%増、前月実績16.9%増)、輸入は1.0%増(市場予想4.0%増、前月実績4.1%増)となっています。

基本的には中国経済が堅調に推移していることを示唆しており、ロックダウン解除などからの立ち直りを感じさせる内容です。今後、再度のロックダウンなどの行動抑制などが発生しなければ中国経済は政府が打ち出している各種の景気刺激策によって、2022年後半以降は堅調な経済状況が続くのではないかと見られるところで、これは当然株式市場にとってはプラスとなります。