円安、インフレ…外部要因には振り回されない

――現在のポートフォリオを教えてください。

米国株が半分以上の56%、米国債券が18%、インデックスファンド15%、日本株が8%、残りが現金で3%です。米国株の内訳はアマゾン・ドットコム(AMZN)、アップル(AAPL)のほか、アメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)、メタ・プラットフォームズ(META)、チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)など10銘柄ほど保有しています。日本株はソフトバンクと株主優待株が中心です。

現状、インデックスファンドを取り入れるようにしています。以前は、最良を目指したいという考え方でしたが、結婚後、妻と話していていく中でその考え方が変わっていったように思います。

基本的に、投資スタイルはあまり変えていません。ただ、2019年頃からは資産額が大きくなったことや、自分自身の中で優先するものがお金でなくなってきたこともあり、株式100%の運用から、企業分析などの手間がかからず、リスクを抑えることを重視して債券も入れています。


――現在、円安やインフレ、ウクライナ侵攻など様々な状況下にありますが、こうした外部要因で投資戦略を変えることはありますか?

基本的に、外部要因で投資戦略を変えることはありません。外部要因の情報を即座に入手できる状況でもなければ、入手できても適切に戦略を変えられるような投資スキルもないので、大体は後追いでの行動になるからです。その状態で行動しても資産形成上はプラスの行動にならない可能性が高く、無駄な取引が増えて、逆に取引コスト分だけリターンが下がる確率が高いと考えています。

また、長期投資を前提としているので、資産配分を考える際にもどの程度のリスクを取るかを各ライフステージごとに大枠を決めています。その想定範囲内での動きなら特に行動に移さないというのと、長期で見た場合には右肩上がりになるという前提で投資しているため、「長期で見た場合は問題ない」という判断をしています。

その上で、想定外の動きをした場合の備えとして、サイドFIRE後も支出と同程度の収入は確保するようにしています。また、家計の見直しをして支出を最適化しているのも、想定外のことが起きて資産が減った時にも、支出が少ない分だけお金の面で対応しやすくなるという一面もあります。こうした観点からも、投資だけでなく、収入や支出を含めて全体を見て判断するというのが大切だと思っています。

――アセットアロケーション(資産配分)についてはいかがでしょう。

アセットアロケーション全体では、2030年ぐらいを目途に、株式の比率を50%程度まで下げる予定です。株式の中身は、米国の個別株から、全世界を対象にした投資信託やETFにしていく予定です。「債券」や「金」などの比率を下げていき、手元の現金は夫婦で行う事業投資に使っていくことを想定しています。

配当金については、今の段階では重視していないので、特に目標金額はありません。ただ、完全に仕事を辞める時には、生活費を補う程度に増やすことを検討する可能性はありますね。

手間と時間がかからない投資スタイルへシフト

――今後も現在の投資スタイルを維持される予定ですか?

今後は、期待リターンを追うというよりも、インデックス投信など、投資に手間と時間がかからない形にシフトしていきたいと考えています。個別株の方が自分の気質には合っているし好きなのですが、やはり銘柄分析や売買の判断など、時間も手間もかかりますから。

サイドFIREはお金で時間を買っている状況なので、得た時間を投資よりも家族との時間や、お金をどう使っていくかということを考える時間に使っていきたいですね。


「資産を減らす」ことも想定しながらライフプランニング

――資産の活用についてはどのようにお考えですか?

お金の観点でいくと、4つのフェーズで考えています。
・お金を貯める
・お金を増やす
・お金を使う
・お金から離れる

サイドFIREするまでの期間は、お金を増やすことに集中して取り組んできました。今は「お金を増やす」から「お金を使う」に徐々にシフトしている段階です。資産を積極的に増やすのは1.5億円(生活費の約40年分)ぐらいまでと考えています。それ以降は徐々に減らして、20年後には1億円を切り、45年後には5,000万円を切るぐらいを目標にしています。それまでには資産を使う、または寄付等も含めて次世代への継承を考えています。

――資産を減らすことも既に想定されているのですね。

『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社)という書籍を読んだことも影響しているのですが、使いきれないお金を所有していても誰のためにもなりません。お金は、これから必要になる人に使ってほしい。60代くらいの早いタイミングで贈与等をして、自分自身は最低限生活できるお金だけあればいいのではないでしょうか。最終的には、お金のことを考えずに生きていきたいですね。

FIREは理想のライフスタイルを実現する手段

――これからFIREを目指す方へメッセージをお願いします。

FIREを目指す上での課題は人によって違います。私たちの場合は「夫婦間でお金に対する価値観が根本的に違う」というものでした。価値観の違いをどう理解し、受け入れ、お互いにフォローしあえるかという部分に注力したことが、結果的に夫婦喧嘩ばかりだった時間をお互いの目標のための時間に変え、サイドFIREを達成するまでにつながりました。

FIREは自分たちの理想のライフスタイルを実現するための「手段」に過ぎず、目的ではありません。大切なことは、自分や家族の価値観を理解し、価値観に沿った目標を立て、その目標を実現するための「手段」としてFIREすることだと思っています。

世の中は固定概念であふれていますが、その多くに大した意味はありません。自分たちが一番幸せだと思う生き方を実現できるとよいのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

 

※本インタビューは2022年6月7日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。