夫婦で金融資産1億円超えを達成した個人投資家。お金の価値観が根本的に異なる夫婦がぶつかり合いを経て、お互いを理解し、サイドFIREを達成。そこから得た気づきや投資のポイントなどを発信するTwitterやブログ「家族で育てる資産の木」が人気。現在はFIREの動機となった地方移住を計画中。
お金を増やすことに興味がない妻と歩みだしたFIREへの道
――投資を始めたきっかけを教えてください。
私が投資に興味を持ったのは、大学時代に『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)という書籍を読み、「卒業後に会社員だけをしていて大丈夫だろうか…」と漠然とした不安を抱いたことがきっかけです。そこから自分に合った投資方法を探し始め、株式投資、FX、不動産投資等のいくつの選択肢の中から過去のリターンが高く再現性のある株式投資に狙いを定めました。
大学の図書館で本を読み漁ったり、個人投資家の体験談等を参考にして少しずつ知識を身につけ、日本株の投資からスタートしました。
――サイドFIREを目指すようになった経緯を聞かせてください。
私自身は、将来的に不労所得で生活ができるよう少しずつ資産形成をしていました。そんな中、妻が「子どもと一緒に地方の実家近くに住みたい」という思いを持っていることが分かり、本格的にセミリタイアを考えるようになりました。ですので、私たちはFIREを目指したというより、目指していた生活スタイルがFIREと重なった感じですね。
妻は結婚当初、お金を増やすことに全く興味がなく、貯金もほぼしていない状態。座右の銘は「明日死ぬかもしれないから、今、お金を使おう」という人で(笑)。そんな私たちがセミリタイアを目指し始めた当時の準備資金は800万円ほどでした。
10年で800万円を1億2000万円まで増やした投資戦略とは
――ご夫婦で歩み寄りながら10年で800万円から1億円を超えるまでに資産を増やし、2021年にサイドFIREを達成されました。どのような投資戦略を立てられたのでしょうか。
資産を増やすにあたり、ライフステージを「独身期」「DINKS期」「子育て期」「サイドFIRE後」の4つに分け、各ライフステージにどの程度のリスクを取るかを考えました。
例えば、「子育て期」は家族が増える分だけ健康面や想定外のことが起きるリスクが増えます。「サイドFIRE後」は収入が減るために、さらに取れるリスクが制限されます。つまり、早期にセミリタイアを実現するには早い段階でなるべく多くのリスクを取り、資産形成上のアドバンテージを取ることが重要です。そこで「DINKS期」までに、いかに投資でリスクを取って資産を増やせるかに焦点を置きました。
――投資でリスクを取るために実践したことを教えてください。
リスクを取りやすい環境をつくるには、何より日常生活の収支を安定させる必要があると考えました。そこで、私たちはまず家計を見直し、年間100万円程度の支出を削減。具体的には、年間で食費30万円、家賃25万円、被服費20万円、交際費10万円、趣味娯楽費10万円、水道光熱費5万円を減らし、外食費は株主優待などを活用することによって現金支出を減らしました。
さらに、妻が転職することで所得が230万円から200万円ほどアップし、家計の見直しと合わせて300万円程度の収支が改善されました。夫婦の所得水準も同程度になり、どちらかが失業したり、投資で資産が減ったとしても生活できる環境が整ったので、ポートフォリオの100%近くを株式にしました。
功を奏した日本株から米国株へのシフト
――2014年頃に日本株から米国株投資に移行したそうですね。
もともと私は米国著名投資家のウォーレン・バフェットの影響を受けて日本株へのバリュー投資を中心にしていました。ただ最初の数年はブラジル株やヨーロッパ株を買うなど投資方針が定まらず迷走していた時期もありました。
その後、2008年のリーマンショックを機に、投資信託を活用したインデックス投資や長期分散投資に関する書籍などを読み、日本株以外に分散する重要性に気がついたのです。とは言え、当時は最良な方法を目指したいという思いが強かったので、平均的なところを目指すインデックス投資は私自身の性格に合わない気がしていました。
そのような中、取引手数料や情報収集のハードルが下がるなど米国株投資の環境が整ったので、2014年頃から本格的に日本株から米国株投資へ切り替えました。当時は投資信託、ETFの信託報酬率が今のように低くなかったので、個人的には個別銘柄の方が良いと考えたのです。
――パフォーマンスが良かった銘柄を教えてください。
米国株の個別銘柄を複数保有している中で、良い結果が出たのはアマゾン・ドットコム(AMZN)とアップル(AAPL)です。ただ、これはあくまでも結果論です。良い結果が得られていない銘柄もそれなりにあります。インデックスと比較するとそれほど良い結果ではなかったかもしれませんが、上記の2銘柄は資産形成に大きく貢献してくれました。
――その後、資産額は年間でどの程度増えていったのでしょうか。
2014年、米国株にシフトした当時の資産は約3100万円でした。そこから2015年に約4200万円、2016年に約5200万円、2017年~2018年に約6600万円、2019年に約8800万円、2020年に約1億1000万円、2021年に約1億3000万円となりました。
平均的には毎年500万円前後を投資資金に充て、年間1000万円の資産が増えたことになります。まさに複利の効果ですね。
「今」を生きる妻vs.「未来」を生きる夫。夫婦で決めたお金のルール
――FIREへの道のりの中で最も大変だったことは何ですか?
夫婦間の価値観のすり合わせに苦労しました。というのも、妻は「今」を生き、私は「未来」を生きるタイプなんです。これはストレングス・ファインダーという「強みのもと=才能」を見つけ出すツールを活用し、お互いの根本的な部分を理解したことで分かりました。
もちろんお金の使い方に対しても価値観の違いが表れます。妻は「今の生活を充実させるもの」にお金を使いたい一方で、私は教育や自己投資など「未来に生かせるもの」にお金を使いたい。投資をしているのも「未来」がより良いものになるという確信があるからです。
そんな2人なので、夫婦で資産形成をスタートした数年間は、しょっちゅうお金のことでぶつかり合っていましたね。
――どのようにお金に対する価値観をすり合わせたのですか?
お金の使い方などで問題が起こるたびに、その問題の原因について夫婦で話し合って解決策を探りました。それを繰り返す中で、自分だけ、夫婦だけ、子どもだけが満足するのではなく、「家族全体の幸福度が上がるものにお金を使う」というルールを決めていきました。
妻はもともとお金に執着しないタイプでしたが、お金について夫婦で真剣に向き合っていくなかで、「今という点がつながって未来になる」という考え方に変わったと言います。私たちの場合、夫婦の価値観のすり合わせに最も時間をかけましたが、これができなければ、FIRE達成はなかったと思います。
>> >>後編「サイドFIRE達成後の投資戦略、将来を見据えた資産の考え方」
※本インタビューは2022年6月7日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。