先週の米国株式市場は大幅下落
先週、S&P500は5.05%下落と1月来の大幅な下げ記録し、ナスダック100も5.7%と大きく下げました。
先週のハイライトは6月10日(金)に発表された米国のCPI(消費者物価指数)です。市場予想の8.3%に対し、発表されたのは8.6%と1981年12月来の高い数字でした。3月にマーケットを驚かせた8.5%を上回るインフレ指数が発表されたことでインフレは暫く続きそうだという見方が支配的となりました。
また、ガソリン価格も週末には1ガロン=5ドルを超え、根強いインフレに対する警戒感も高まっています。このような状況下、6月10日(金)には米国債10年利回りも3.16%へ上昇、2018年10月来の高いレベルに到達しました。この日S&P500は2.91%、ナスダック100は3.56%と市場は大きく下げる展開となりました。
6月10日(金)のS&P500の引値は3,900.9ですが、要注意の下値抵抗線は3,858-3,810、3,500となります。 一方、上値抵抗線は4,114-4,160です。
ナスダック100は11832.8で終えていますが、次の下値抵抗線は11,692-11,492となっています。一方、上値抵抗線は13,020-13,065となっています。
このような悲観的な状況下のマーケットのセンチメントは最悪です。直近のブルベア指数を見てみるとブル(強気)指数は21ポイントと1989年来のネガティブなセンチメントとなっています。
このような状況下ですが、6月10日(金)引け後には、テスラ(TSLA)が3対1の株式分割を発表し、引け後の同社の株価は1.8%上昇しています。8月4日の株主総会で承認後実施される見込みです。これは前回2020年8月31日に5対1の株式分割を行ってからほぼ2年ぶりとなります。
過去のデータを見ると必ずしも悲観的なものではない
インフレについて述べると暗くなりがちですので、視点を変えて2つのポジティブなデータを紹介したいと思います。
S&P500は6月8、9、10日それぞれー1.08%、ー2.38%、ー2.91%と3日連続で1%以上下落しました。このように3日連続で1%以上下がるのは長い米国株の歴史の中でも珍しいことです。
ビスポークの調査によると1945年からこれまで13回しか起きておらず、今回で14回目となっています。さてその後ですが、翌日は46.2%の確率でプラス、平均の変化率は−0.32%ですが、翌週は53.8%の確率でプラスとなり、平均変化率は+0.07%となります。その半年後は84.6%の確率でプラスとなり、平均では9.78%のプラスとなっているのです。過去の状況は現在と異なるものの、過去の事実としてご紹介しておきたいと思います。
直近のコンファレンスボードが発表するデータで興味深い結果が見られます。コンファレンスボードは、今後の株価の見通しと金利の見通しについてアンケートをとり、その結果を「株価が上昇すると思う指数」と「金利が下がると思う指数」として、月に1回発表しています。
実はこの2つの指数が共に同月中に52週間の安値をつけたのは1987年からこれまでに5回しかなく、2022年の2月28日で6回目のこととなります。
理由は何にせよ、このようなことが起きるのは稀なことです。こちらはS&P500と10年債利回りでそれが起きた時を赤丸で示しています。
その5回の後S&P500のパフォーマンスは以下の通りとなっています。これをみると3ヶ月後はまちまちですが、半年後には毎回プラスになっておりそのリターンは9.55%、1年後も毎回プラスとなっており、そのリターンは20.69%となっています。
株価が上がると思っている人が少なくなり、金利も下がると思っている人が同時に減ってからのリターンは株式市場にとっては悪くないというのがこれまでのところなのです。もちろんこれらのデータをもって今後このようになるというものではありません。ただ、現在マーケットが悪化している状況ですが、過去を見るとこのようなことが起きていたということがわかります。
今週のハイライトは15日水曜日のFOMC
今週火、水曜日(6月14、15日)には市場が注目するFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されています。マーケットのコンセンサスでは0.5%の利上げが予想されていますが、先週の予想を上回ったCPI(消費者物価指数)が40年来の8.6%となったことを受けて、0.5%でなく0.75%の可能性も出てきました。発表は日本時間木曜日(6月16日)の朝3時で、その後3時半にはパウエル議長の記者会見が予定されています。
また、月曜日(6月13日)にはオラクル(ORCL)、木曜日(6月16日)にはアドビ(ADBE)の決算発表が予定されています。企業のテクノロジー支出についての洞察がうかがえるかもしれません。