石油元売り大手のENEOSホールディングスは6月6日、日本電気(NEC)が全国で展開するEV(電気自動車)用の充電サービス事業を譲り受ける契約を結んだと発表した。約4,600基のEV充電器の運営を始めた。EVの普及を見据え、充電設備を充実させて次世代のエネルギー供給網の構築を進める。

なぜ重要?

日本では2021年1月に菅義偉首相(当時)が、国内で販売する新車を2035年までに全てEVにする方針を表明した。2030年までにEVの公共の急速充電器も3万基設置する計画だ。

トヨタ自動車の豊田章男社長も2021年末、2030年までに30種類のEVを投入し、EVを年間販売台数を350万台に引き上げる目標を掲げている。トヨタの2021年度の世界販売は951万台で、実現すればEVが4割弱を占める規模になる。

またドイツのVolkswagen(フォルクスワーゲン)は2030年までにEVの販売台数を全体の過半まで高める方針を示すなど、国内外でEV普及に向けた動きが活発化する。ENEOSは国内で約1万3,000のガソリンスタンドを運営し、国内燃料油の50%を販売する最大手の石油元売り企業だが、環境変化を受けてビジネスモデルの転換を急ぐ。

詳しい内容

NECのEV充電器の運営と管理をENEOSが引き継ぐ。EV充電器の運用システムは継続してNECが提供する。ENEOSが新たに運営する約4,600基は電力が10kW未満で、自宅やレジャー施設での長時間の充電を想定する。

10kW以上の急速充電器については、店舗網を活用して2025年までに1,000基、2030年までに最大1万基を国内に設置する。

ENEOSとNECは2021年、EVなどの充電事業での協業を検討すると発表していた。EV蓄電池交換サービスの米Ample(アンプル)にも出資し、日本で同サービスの提供を目指して協業している。

市場動向

国内ではトヨタや日産自動車、東京電力ホールディングスが出資するe-Mobility Power(イーモビリティパワー、東京都港区)などもEV充電ネットワークの整備を進めている。 2021年には横浜市と連携し、全国で初めて公道でEV充電サービスを提供する実験を始めている。