3月決算企業の第4四半期の決算発表がほぼ終わりました。本レポートではその結果を踏まえつつ、注目銘柄などをご紹介します。
3月末決算を採用しており、業績を前年同期と比較可能な1,225社の第4四半期の業績について業種別に筆者が集計したところ、以下の表のとおり全体では8.4%の増収・13.1%の経常減益となりました。経常減益ではあるものの、実はソフトバンクグループ(9984)の2兆を超える巨額赤字の影響が大きく、それを除けば実質的には増益となっています。
簡単に業種別に見ていくと大きく以下の傾向が見て取れます。
・「石油・石炭製品」「鉄鋼」「卸売業」など資源高の恩恵を受けやすい業種が好調
・逆に「電気・ガス業」「陸運業」など資源高が逆風となる業種は厳しい業績
・「空運業」「小売業」などコロナ禍でのダメージが大きかった業種に回復の兆し
今期のマーケットのポイントは
さて、3月決算企業は2022年3月期が終了し、2023年3月期に入りました。5月23日の日経平均の終値は27,001円、予想PERは13.28倍、実績PERは13.05倍です。ここから逆算すると、日経平均の予想EPS(1株あたり利益)は2,033円、実績EPSは2,066円となり、今期は2%弱の減益見込みとなっています。果たして現時点の予想通り減益となるのか、はたまた増益となるのかが日本株の方向性を決める上で非常に重要となりそうです。そこで、業績のプラスになりそうな要因をいくつかご紹介します。
筆者の考える業績のプラスになりそうなポジティブ要因
・日銀の金融緩和姿勢の維持
・円安進行による輸出企業の利益増とインバウンド増
・新型コロナウイルスによる落ち込みからの本格回復による消費増
それぞれ簡単にご説明します。
日銀の金融緩和姿勢の維持
日銀の黒田総裁は従来から行っている金融緩和を維持・強化していく姿勢を鮮明にしました。1ドル130円を超える円安が進む中、日銀の緩和姿勢継続に対する批判を一蹴した格好です。日銀の目標は為替レートの変動ではなく、賃金上昇と物価上昇のバランスの取れた2%インフレの達成ですから目標が達成できていない現状ではそういったスタンスで望むのが当然かと思います。足元の1ヶ月でNYダウ平均が7%程度下落している一方、日経平均は1%程度のプラスと日経平均がアウトパフォームしています。この理由としては日銀が緩和姿勢を継続していることが大きいのではと考えています。
円安進行による輸出企業の利益増とインバウンド増
日本全体にとって円安はメリットもデメリットもありますが、上場企業の業績という意味ではプラスの要因が大きいと考えています。ご存じの通り、日本で時価総額の大きい上場企業の多くは輸出関連企業です。以下は、海外売上高比率が50%以上ある会社のうち今期の想定為替レートを公表している時価総額上位10社の想定為替レートを記載した表です。
トヨタ自動車(7203)は115円、日本電産(6594)に至っては110円と今期の想定為替レートを実勢より大幅に円高に見ています。トヨタ自動車では1円の円安で400億円程度、掲載した他の企業も数十億円程度は営業利益が増加する場合が多いようです。これらの保守的な見通しは、業績の上振れ余地として抑えておく必要があります。
さらに、筆者が一層期待できると考えているのが外国人観光客(インバウンド)の来日です。コロナ前の2019年は年間で約3200万人が来日し、約4兆8000億円の消費が行われていました。それがコロナの影響で2021年は20万人、1200億円程度にまで落ち込んでしまいました。コロナを完全に克服し、再び門戸が開かれれば円安進行もあって多くの方が来日されるでしょう。時期は不透明ながら5兆円またはそれ以上のインパクトがもたらされる可能性があるわけで、関連事業を行っている会社については非常に大きなインパクトになるはずです。
新型コロナウイルスによる落ち込みからの本格回復による消費増
これについては言うまでもないでしょう。我々はこの数年間、いろいろな我慢をして過ごしてきました。特に旅行や人との飲食などは思うように行うこともできませんでした。コロナの影響が払拭されたら、旅行に行きたいと考えている人は非常に多いと思います。これらの関連消費も非常に盛り上がるでしょう。
ここまで日本企業の業績の追い風になるであろうファクターを見てきました。一方で、「FRBによる金融引締め強化」「上海ロックダウンの影響などによる中国経済の成長鈍化」「ウクライナ問題をきっかけにした東西対立の深刻化」などのネガティブな要素ももちろんあります。
ただ、ポジティブ要因としてあげた関連企業では業績拡大と株価上昇に高い期待を持ってよいのではと考えています。次回の後編では業績拡大や株価上昇に期待できそうな関連銘柄についてご紹介します。