先週月曜日(5月9日)、S&P500は前週からの弱い地合いを受け3.2%の下げで始まりました。水曜日(5月11日)に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.3%でした。3月の8.5%より若干下がったものの、引き続き1991年来の高い水準で市場予想を超える結果となりました。これにより市場には失望売りが入り、同日のS&P500は1.6%下落しました。
先週1週間でS&P500は2.4%の下げ、ナスダック100も同じく2.4%下落、両指数ともに6週間連続で下げたことになります。
米国の第2四半期の決算発表もほぼ終わりに近づいてきました。先週金曜日(5月13日)までのところでは、S&P500指数採用企業500社のうち459社が決算発表を終えています。発表を終えた企業のうち76%が事前予想を上回っており、前年同期比では9.2%の増益となっています。3月末の時点では5.8%の予想でしたのでインフレ、サプライチェーンなどの問題もあり、市場には業績に対する懸念があったものの、最終的には事前予想を上回る内容となっています。
株価は長期金利との綱引き
先週1週間のS&P500のパフォーマンスはマイナスでしたが、金曜日(5月13日)になるとマーケットは暴騰し、1日で2.4%上げ、ナスダック100は3.7%上昇と久しぶりに市場参加者を喜ばせる見事な上げを演じました。なぜ金曜日に突然マーケットが上がったかについては、これといった理由が見当たりません。ただ、株価は年初から大きく下がっており、個別銘柄に割安感があり、加えて投資家のセンチメントは歴史的に見ても最悪な状況の中、いつ上がってもおかしくない状況でした。そんな中、株価の上げを妨げていたのは金利という重石です。
2021年末1.5%だった米国10年債利回りは5月に入り2018年12月ぶりに3%の大台に乗せ、長期金利の急上昇の展開を株式市場が嫌うという展開になっていました。長期金利の上昇の展開は米国だけではありません。欧州でも5月には、ドイツの10年債利回りが2015年の6月来で1%の大台に乗せています。英国の10年債も2021年末1%を切っていたものが、5月に入って2%台に乗せ、主要先進国においては金利が急激に上昇しています。これまでの歴史を見ると、長期的な金利の上昇局面でも株価は上がっていますが、株式市場は目先の金利の急な上がり方を嫌い、株式を売られざるを得ない状況となったのです。
これまでの急激な金利上昇で債券が売られ過ぎにあったことで、目先の金利の上げは一段落したということかと思います。気になる今後の展開についてですが、個別銘柄で見ると今のマーケットは割安になっています。S&P500指数採用500社の個別銘柄のアナリストの目標株価と先週金曜日(5月13日)の株価との乖離を見ると、平均24%程度割安となっています。この割安な株価が本来価値に向かうかの鍵を握っているのはやはり債券市場でしょう。ここから金利が大きく下がらなくとも、これまでのような急ピッチでは上がらない展開に期待しています。
現在のS&P500の下値抵抗線は4,000~3800ポイント、一方、上値抵抗線は4,114~4,308ポイントの辺りとなっています。
先週金曜日のラリーはアノマリー的にポジティブ
これまでボラティリティの高い環境下で、マーケットは何度もラリーしようとしていましたが、うまくいっていませんでした。それが、ようやく金曜日(5月13日)にマーケットはラリーに成功したのです。この日の上げは、テクニカル的にかなり意味のあったイベントだったようです。同日のラリーではニューヨーク証券取引所上場銘柄の9割以上が上昇しています。
私が週末に読んだBofA(バンク・オブ・アメリカ)の調査によりますと、過去に1日の相場で9割以上の銘柄が上がるのは縁起が良い出来事のようです。これまでに起きた78回の場合では、S&P500は10日後70.5%の確率で上昇、平均で+1.01%、平均値で+1.41%という結果となっています。1ヶ月後であれば74.4%の確率で上昇、平均で+3.04%、平均値だと+3.28%上昇したということのようです。これはあくまでも、マーケットのアノマリーですが…。
決算発表の終盤戦は大手小売企業に注目
決算発表はまだ終わったわけではありません。今週の決算発表は、大手小売企業を含む以下の発表が予定されています。
今週注目の主要企業の決算発表予定
5月17日(火)
世界最大の小売店のウォルマート(WMT)
世界最大のホームセンターのホームデポ(HD)
5月18日(水)
世界2番目のホームセンターのロウズ・カンパニーズ(LOW)
ディスカウントショップ大手のターゲット(TGT)
通信機器メーカーのシスコシステムズ(CSCO)
5月20日(金)
世界最大の農業機械メーカーのディア(DE)