6月29日の中国株は急反発となりました。これはEU首脳会議で公的債務や銀行問題に対策が打ち出したことが好感された格好です。具体的には、EU域内の恒久的な支援基金を銀行の資本増強に利用できるようにすることや、市場の安定化に向けた単一の金融監督制度計画などが発表されたのです。しかし、中国本土の市境解説を見ても、反発は一時的なものであり、市場はすぐに中国経済の失速を懸念する相場に戻るだろうとのコメントが多くなっています。中国政府が進めているインフラ投資を拡充するなどの経済対策は効果が表れるまでにはまだ時間がかかり、目先は需要減少や在庫調整などによる利益への圧迫が懸念される相場が続くと見ている関係者が多いようです。

先週の中国本土のニュースとしては、中国工業大手の5月の利益が前年同月比5.3%減となり、4月の2.2%減から大きく悪化したことを中国国家統計局が発表しました。1~5月の累計でも前年同期比2.4%減の1兆8430億元と、1~4月の1.6%減からさらに大きく落ち込んでいます。特に外資系企業の落ち込みがひどく、外資系企業の1~5月の利益は前年同期比13.7%減の4272億元と大きく落ち込んでいます。ただ、これに反して中国民間企業は18.1%増と大きく伸びています。国有資産監督管理委員会(国資委)の邵寧副主任は先日開かれた中央企業における基礎管理強化会議で「(中国の)中央企業は今後3~5年の間、"厳冬"を過ごすための準備をしっかりする必要がある」とコメントしていますが、株式市場が懸念しているように、特に世界経済と密接な関係を持つ企業は当面厳しい状況を迎えていることが数字となって表れてきた様子です。

もっとも株価の方は先にその悪化を織り込んできた様子で、香港H株指数の推移を見てみると、5月下旬からおおよそ9500ポイント前後で下げ止まっている印象があります。香港H株で大きな構成ウェートを占める銀行株については、実績PERで5~6倍前後、実績配当利回りでも5~6%前後と、長期的に見ても割安な水準にあると言え、株価上昇までの時間はかかるかもしれませんが、株式投資のタイミングとしては悪くないように思います。なお、2011年10月初めの急落時には、中国銀行(03988)の配当利回りが8%を超えたあたりで反発しており、ここから下落したとしてもその辺りが下限であるように予想します。

■中国大手銀行の株価とPER、配当利回り