GAFAMの2022年1-3月期の決算が出揃いました。全体としてはまちまちの結果となり、企業によっては良い決算もあった一方、予想よりも悪い決算もあったという印象です。ここからは各企業の業績を個別に解説していきます。

アップル、利益率の高いサービス部門の売上・利益構成比率が徐々に拡大

引き続きサプライチェーンが供給を優先したことが好材料に

まずはアップル(AAPL)です。アップルの2022年1-3月期の業績は売上が8.6%増の973億ドルで純利益は5.8%増の250億ドル、1株あたりの純利益は8.6%増の1.52ドルでした。市場予想の1株あたり純利益は1.42ドルであり、市場予想よりも高い結果となり、過去の1-3月期の決算と比較して、最も高い売上と1株当たり純利益となりました。

部門別に見ると収益力の高いサービス部門の売上が17.3%増の198億ドルと大きく伸びて、売上全体の20.3%を占め(上半期では17.8%)、粗利益は21.5%増の118億ドルと力強く伸び、粗利益の33.8%を占めています(上半期では29.5%)。利益率の高いサービス部門の売上・利益構成比率が徐々に拡大していることはアップルの業績を見る上での長期的な特徴と言えるでしょう。なお、iPhoneなどのプロダクト部門は売上が6.6%増の775億ドル、粗利益が7.4%増の282億ドルとなっています。

2021年の10-12月期の決算ではサプライヤーが最大手携帯電話メーカーであるアップルに供給を優先したことが好材料となりました。2022年1-3月期決算でもその強みは活かされた模様です。ティム・クックCEOはサプライチェーンが改善したことを示唆しています。

売上ベースでは主力のiPhoneの売上は5.5%増の506億ドルとなり、売上全体の54%を占めています。地域別には米国での売上が19.2%増と大きく伸びて全体を牽引しています(中国は3.5%増と比較的小さな伸びになっています)。

好決算にも関わらず、株価がやや軟調気味に推移した2つの理由

アップルは好調な決算にもかかわらず株価はやや軟調気味に推移しました。1つ目の理由としては、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めを行っていることで米国株全体が軟調に推移していることです。ただし、これはアップルだけでなく、その他のGAFAM銘柄にも悪影響を与えています。

2つ目の理由としては、中国が新型コロナウイルスの感染拡大に対し、ロックダウン(都市封鎖)を行うなどのゼロコロナ政策をとっているため、4-6月期に売上が40億~80億ドル押し下げられる可能性があることを同社が決算発表の説明会で明らかにしたことによります。

しかし、これらの影響を受けながらも好業績は今後も続く見通しで、中長期的な見通しは悪くはないと思います。

マイクロソフト、市場予想よりも好決算。インテリジェントクラウド部門は今後の成長も期待される

マイクロソフト(MSFT)の2022年1-3月期(第3四半期)の業績は売上が18.4%増の494億ドル、純利益は8.2%増の1673億ドル、1株あたりの純利益は9.4%増の2.22ドルでした。1株あたり純利益は市場予想の2.19ドルを上回り、こちらも予想よりは良い決算だったと言えます。

大きく伸びたのはインテリジェントクラウド部門で、売上は26.0%増の190億ドルと大きな伸びに。特にクラウドサービスAzureおよびその他のクラウドサービスが46%増と非常に大きな伸びとなっています。同部門は営業利益では28.9%増の83億ドルとなっており、営業利益全体の40.7%を占める主力部門となっています。

プロダクティビティビジネスプロセス部門は売上が16.5%増の158億、営業利益は19.2%増の72億ドル。こちらではビジネス向けSNSのリンクトインが34%増となるなどしています。Windows関連の各製品Xbox、Surfacなどのハードウェアや検索サービスなどのモアパーソナルコンピューティング部門は売上が11.4%増の145億ドル、営業利益が6.6%増の49億ドルとなりました。

マイクロソフトの業績を見ると、新型コロナウイルスの影響でリモートワークや企業のDX化が進展する中で同社のデジタルツールの利用が拡大している様子がうかがえます。個人・企業でデジタル化、クラウド化が加速しています。特にインテリジェントクラウド部門は高い伸びが続いており、今後の成長も期待出来るでしょう。

なお、決算発表後の株価は下落基調が止まり、横ばい気味の株価推移となっています。

アルファベットは市場予想を下回る決算で株価は軟調な動き、YouTube広告が苦戦

アルファベット(GOOGL)の2022年1-3月期(第1四半期)の業績は売上が23.0%増の680億ドル、純利益は8.3%減の164億ドルとなり、1株あたりの純利益は6.4%減の24.62ドルでした。市場予想の1株あたり純利益は25.89ドルでしたので、予想を下回る決算であり、また、売上も増収ではあったものの市場予想の550億ドルを下回っていたことから、決算発表後の株価は軟調な動きとなっています。

部門別に見ると、売上の主力であるGoogle検索とその他の売上は24.3%増の396億ドルと大きく伸びています。小売業の広告が牽引し、旅行業の広告が回復しました。また、Googleネットワークの売上もAdSenseとAdMobに牽引されて20.2%増の82億ドルと成長しました。

一方でYouTube広告が14.4%増の69億ドルと伸び悩みました。YouTube広告が減速している要因として会社側は前年同期の成績が良かったことを指摘していますが、オンライン広告の同業他社が新型コロナウイルスやサプライチェーン、労働供給の向かい風の影響を受けて軟調な煽りを受けている中で、YouTube広告にも影響が出ているとも言えそうです。

アルファベットはメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)と異なり、グーグルという独自の検索エンジンという強力な集客手段がカスタマーダイレクトに広告を訴求できるという点で強みがあると見られていましたが一概にそうではなかったとも言えそうです。その他、TikTokとの競合の影響もありそうです。

オンライン広告の厳しい環境はまだ続きそうであり、最大手である同社もその影響を受け、株価はもう少し軟調な推移を続けそうです。

アマゾン、クラウドAWSは伸長するも、配送費・人件費増の影響大

1株あたり純利益、四半期ベースで2015年1-3月期以来の赤字

アマゾン(AMZN)の2020年1-3月期の業績は売上が7.3%増の1164億ドル、純利益が38億ドルの赤字(前年同期は81億ドルの黒字)、1株あたり純利益は7.56ドルの赤字となっています。市場予想による1株あたり純利益は8.40ドルでした。四半期ベースで赤字となったのは2015年1-3月期以来のこととなります。2021年10-12月期は売上が98.3%増、純利益も98.3%増となっていたことから2022年1-3月期も好業績が見込まれていただけに衝撃は大きく、決算発表後に株価は急落しています。

クラウドAWSは好調、ネット販売の売上は北米と北米以外で傾向に差

部門別には引き続きクラウドサービスのAWSの売上は36.6%増の184億ドル、営業利益が56.6%増の65億ドルと大きく伸びています。一方、北米のネット販売は売上が7.6%増の692億ドル、営業損益が16億ドルの赤字(前年同期は35億ドルの黒字)、北米以外(インターナショナル)は売上が6.2%減の288億ドル、営業損益が13億ドルの赤字(前年同期は13億ドルの黒字)となっています。

インフレ、エネルギー価格上昇によるコスト増が影響

ネット販売が伸び悩んでいる理由は新型コロナウイルス感染拡大の中で、前年同期は売上が伸びていたことがあります。また、営業利益ベースで赤字となっている理由はインフレ高進によってエネルギー価格が上昇するなどして配送コストが上昇したこと、米国の賃金上昇、世界的なサプライチェーン問題への対応などにコストがかかったことが挙げられるでしょう。

新興EVメーカーのリヴィアンへの出資により純利益が赤字に

一方、全体の営業利益は58.6%減と大幅な減益ではありますが、37億ドルの黒字を保っています。しかし、営業外損失が合計89億ドル計上されており、純利益が赤字となっています。これは新興EVメーカーのリヴィアン(RIVN)への出資が影響しています。同社の株価は2021年末に103.69ドルだったものが2022年5月3日終値で31.99ドルまで急落しており、76億ドルの損失を計上していることによるものです。

アマゾンは設備などに投資する期間、今後の業績への影響は

アマゾンは設備などに大きく投資する時期には株価は横ばいで推移し、それが終了して業績に結びつくと株価は上昇する傾向があります。現在は投資を強化している時期ではありますが、今回の決算は予想を上回る悪い決算であったと言え、原油高や人件費上昇が続いていることを考えると、もうしばらく厳しい業績・株価が続く見通しです。

メタ・プラットフォームズ、割安感もあり今後底堅い値動きを期待できるか

売上は市場予想を下回るも、純利益は市場予想を上回る

最後にメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック、FB)ですが、こちらは市場予想よりも良かった点もあり、決算発表後に株価は上昇しました。

2022年1-3月期の業績は売上が6.6%増の279億ドル、純利益が21.4%減の75億ドル、1株あたりの純利益も17.6%減の2.72ドルと増収減益でした。売上の伸び率は上場来で最も低い水準となっており、市場予想の283億ドルを下回りました。一方、純利益は2四半期連続の減益となりましたが、市場予想の71億ドルは上回り、1株あたりの純利益も市場予想の2.564ドルを上回りました。

業績が軟調な理由はアップルIDの「IDFA」というIos端末に割り振られる広告識別子に取得制限がかかっている問題やTikTokとの競合、欧州の個人情報規制、メタバースへの投資など、前四半期と同じような理由となります。そして前四半期(2021年10-12月期)の決算発表後、株価は大きく下がっていました。

軟調な決算にもかかわらず、株価が上昇した2つの理由

今回も軟調な決算なのに、なぜ株価が上昇しているのかと言うと、2つ理由があります。1つは純利益が市場予想を上回っていたこと。2つ目の理由はデイリーユーザー数が前年同期比4%増の平均19億6000万人となって、市場予想を上回っていたことがあります。前四半期(2021年10-12月期)は7-9月と比較して200万人減とユーザー数が上場来初のマイナスとなっていました。また、あえて言えば、前日に決算発表のあったアルファベットが広告事業で苦戦していたことと比較して良い決算であったとも言えるでしょう。

なお、同社は2022年4-6月期の売上が280億~300億ドルの範囲になるとの見通しを発表しています。

メタはGAFAMの中でも2021年10-12月期に最も悪い決算を発表し、株価は大きく下落してきましたが、その分、割安感が出ており、ここからは底堅い値動きを期待できるかもしれません。