経済指標の低迷が市場心理に影響

2022年4月上旬の中国本土市場・香港市場はともに調整基調となっています。2022年4月1日終値から2022年4月18日終値までの騰落率は、上海総合指数が-2.7%、香港ハンセン指数が-2.4%となっています(香港市場は、4月15日がグッド・フライデー、4月18日がイースターマンデーで祝日のため休場でしたので4月14日の終値ベース)。

4月上旬で特に軟調だったのは4月11日です。中国の新型コロナウイルス感染拡大や上海など、一部地域でのロックダウン、そしてそれに伴う中国経済のスローダウンへの懸念が市場心理の重しとなっています。中国の製造業・サービス業PMIが軟調だったことは前回のコラムでも解説していますが、その後に発表された3月の経済指標も2月よりも悪い数字となっています。

3月の経済指標を見て見ると、鉱工業生産(年初来)は前年同期比6.5%増(市場予想6.2%増、2月実績7.5%増)、小売売上高(年初来)は3.3%増(市場予想2.8%増、2月実績6.7%増)、第1四半期のGDPは4.8%増(市場予想4.2%増、前四半期4.0%増)、不動産投資(年初来)は0.7%増(市場予想1.2%増、2月実績3.7%増)となっています。

市場予想よりは良い数字も多いのですが前月の数字よりは悪化している状況で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウンが続いている影響から、全体として経済指標は低迷しています。中国政府指導部が設定した2022年のGDP成長目標は「前年比5.5%前後」と高い数字であり、これを達成するためには今後、金融緩和+財政政策を強化していく可能性が高いとみています。

なお、ロックダウンが続いている上海市は工業企業の生産再開と防疫措置についてガイドラインを発表しています。サプライチェーンの安全と安定確保を促す内容ですが、徐々にコロナ抑制後の状況に動き出している様子がうかがえます。

中国人民銀行では預金準備率引き下げが発動

一方、中国人民銀行は4月25日付けで預金準備率を0.25-0.5%引き下げる方針を打ち出しています。これは2021年12月以来4度目の預金準備率の引き下げで預金準備率は8.4%から8.1%に低下し(加重平均ベース)、約5,300億元の長期資金が市中に放出されることになります。

ただし、市場予想よりも引き下げ幅は小幅であり、1年物の中期貸出制度(MLF)金利も2.85%で据え置かれました。4月20日に発表される最優遇貸出金利(ローンプライムレート)も引き下げは見送られる可能性が高いとみられます。

最優遇貸出金利の引き下げ見送りが高い理由の1つは米国が積極的な利上げを行っていることです。米ドルとの金利の乖離は為替レートにおいて元安を促す恐れがあります。このため、おそらくは小出しに預金準備率の引き下げが続く可能性が高いものと思われます。

そしてその一方で、中国国務院は医療・ヘルスケア、自動車、家電などで消費刺激策を打ち出す方針を表明しています。さらに中国当局は株価下支えの自社株買いを支持しており、これは株価にプラスの材料となります。このように金融緩和や財政政策が徐々に打ち出されているところです。

むろん、本格的な経済・株価の回復は新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、ロックダウンが解除されてからになると思われますが、ゼロコロナ政策からの転換までには時間がかかる見通しです。

おそらく2022年秋に、通常であればトップが交代するタイミングである、中国共産党第20回全国代表大会がありますが、共産党への批判を抑える意向もあってゼロコロナ政策は維持される可能性が高いのではないかとみています。

そして中国共産党第20回全国代表大会後には緩やかにゼロコロナ政策からウィズコロナへの政策に転換していくのではないでしょうか。このように考えていくと秋口頃までは中国株は横ばいのような株価推移が続く見通しで、秋口頃までは中国の優良銘柄の買い場になる可能性が高いのではないかと考えます。