中国本土市場・香港市場が上昇となった背景とは

2022年3月末~4月初めの中国本土市場・香港市場はともに上昇となっています。2022年3月25日終値から2022年4月1日終値までの騰落率は、上海総合指数が+2.2%、香港ハンセン指数が+3.0%です。

中国本土市場は清明節で4月4日は休場(4月5日まで休場で4月6日から取引再開)だったのですが、香港市場は4月4日も大幅続伸となっています(香港市場は4月5日が清明節のため休場で4月6日から取引再開)。

中国ではゼロコロナ政策が続いており、上海などではロックダウンがされています。しかし、中国株が全般的に好調なのは、中国当局がハイテク企業への規制強化をすみやかに完了させ景気優先の政策を採るとしたことで、政策期待による上昇サイクルが続いていることがあります。そのため、特に同期間は香港市場の方が強く上昇しています。

この背景には、ロシアによるウクライナ侵攻の株式市場への影響が一段落してきたことで、海外の株式市場が好調だったこともありますが、中国企業の米国預託証券(ADR)を巡る米国と中国規制当局の対立への懸念が後退したこともあります。

米国に上場する中国企業の監査について、中国証券当局は米国に上場している中国企業の米国預託証券の上場廃止を回避するため、現地での検査は中国本土の監督管理機関を主として実施されるべきといった条文を削除するなど、譲歩の姿勢を見せ、監査規則の変更を提案しました。

もちろんまだ米中当局が合意に達しているわけではないのですが、ポジティブなサインと取られ、米国預託証券の上場廃止への懸念は後退しています。その他、テンセント(00700)や小米集団(01810)が自社株買いを続けていること、ウェイボー(09898)や京東健康(06618)が新規の自社株買い計画を発表したこともIT大手銘柄が回復する材料となっています。

経済指標は中国経済のスローダウンを示す

一方で、3月中旬以降に発表された経済指標を見てみると足元の経済がスローダウンしている内容となっています。3月15日に発表された1-2月の鉱工業生産は前年同期比7.5%増(市場予想4.0%増、前月実績9.6%増)、固定資産投資は12.2%増(市場予想5.0%増、前月実績4.9%増)、小売売上高は6.7%増(市場予想3.0%増、前月実績12.5%増)とこちらは好調でした。

しかし、その一方で3月31日に発表された3月の中国国家製造業PMIは49.5と景況感の境目とされる50を下回り(市場予想49.8、前月実績50.2)、中国国家非製造業PMIも48.4(市場予想50.3、前月実績51.6)と50を下回っています。4月1日に発表されたCaixin中国製造業PMIも48.1と市場予想の49.9や前月実績の50.4を下回っています。

PMIが予想よりも悪化している理由は中国政府がゼロコロナ政策で厳しい措置をとっていることが反映されているからとみられます。Caixin中国製造業PMIについては生産指数と新規受注指数が両方とも2020年2月以来の低水準でした。

もちろん、インフレ率が上昇して投入コスト指数と生産物価格指数が5ヶ月ぶりの高水準になっていることや海外からの需要減少や輸送状況の悪化で新規輸出受注指数が悪化していることも要因です。

中国でのゼロコロナ政策はまだ続きそうですし、ウクライナの問題もまだ長引きそうです。3月のPMIが示すように中国経済はそれらの影響からスローダウン傾向にあります。しかし、その対応のために中国当局が今後、一段の金融緩和や財政政策拡大をしてくる可能性が高まってきたと思われます。

中国当局が設定した2022年のGDP成長率目標は前年比5.5%前後増ですが、これを達成するには一段の預金準備率の引き下げなどの金融緩和や不動産市場に関する引き締め緩和、インフラ投資拡大などが必要となってくる見通しです。もちろんこれは株式市場にとっては支援材料となります。