NY金2週連続上昇、過去最高値更新が続く国内円建て価格

先週のニューヨーク・コメックスの金先物価格(以下、NY金)は、水準を切り上げた。週末4月15日がイースターのGood Fridayで祭日であったため、先週は4営業日のみだったが、週末に向けて3営業日連続となる1,970ドル超で取引を終えた。4月14日のNY金の通常取引は1,974.90ドルで終了。週足は29.30ドル、1.5%の上昇となった。2週連続の上昇となっている。

先週のコラムでは価格見通しとして、4月12日に発表される3月の米消費者物価指数(CPI)の加速を前提に、「(CPIの加速見通しは)既に金価格の底堅さに織り込まれているとみられるが、どの程度の上振れが見られるかが注目点となる。今週は、水準を1,950ドル超に切り上げるものと予想する。ドル高円安基調が再び強まっていることもあり、円建て国内価格は今週も過去最高値の更新を続ける可能性があるものとみられる」と解説した。

結果は、実際には円建て国内価格の予想を上回る上昇が見られた。JPX(日本取引所)大阪取引所の金先物価格(以下、JPX金)は、週初から週末まで5営業日連続で過去最高値の更新を続けた。4月14日には初めて節目の8,000円台に乗せ、そのまま大台を維持して週末15日の取引を8,055円で終了した。一時は8,076円まで買われた。週足は376円、4.8%の上昇となった。 

1,950ドル超に水準を切り上げたNY金に加えて、3月末の急騰後の日柄調整を終えた米ドル/円相場での米ドルの急伸(円急落)が重なり、円建て金価格を押し上げた。

米ドル/円相場は、4月13日に約20年ぶりの126円前半まで円安が進み、翌14日に一旦は125円台前半まで押したものの、週末15日に高値を更新し、126.45円で先週の取引を終了した。

NY市場は休場となったが、4月16日午前6時に取引を終えたJPX金の夜間取引は8,072円で取引を終えている。一時8,115円まで買われたが、為替要因のみで押し上げられたものであった。

国内価格8,000円突破をどう捉えるか

先週1週間で4.8%、376円上昇し8,055円で終了したJPX金(国内金価格)をどう捉えるか。おそらく8,000円という水準は過去最高値水準であるとともに節目の価格であり、投資家目線で一定の達成感が生まれ、売却を考える方も多いだろう。相場観は人それぞれで、どの時点での判断が正しいか否かは誰にもわからず、その後の結果で答えが出るのは言うまでもない。

個々の金保有状況(ポジションの状況)や買値の水準、他の資産との比率などによって、それぞれがとる行動は一律ではない。したがって一般論として私の捉え方を書くとすると、次のようなものとなる。

まず価格水準を計る上で、米ドル建ての水準に重きを置いている。足元の状況であればNY金は2020年8月7日の過去最高値2,089.20ドル(終値ベースでは同6日の2,069.40ドル)から約100ドルほど下の水準にある。JPX金の上昇ピッチを見る分には過熱を思わせる金市場だが、NY金の値動きに過熱は見られない。

3月8日に至る4営業日で121ドル、6.3%急伸しながら、終値ベースで2,043.30ドルと過去最高値に20ドルほど届かず日柄整理に入ったNY金だが、早晩直近の高値を試す機会があるのではと思われる。テクニカル的には、まず3月の高値を抜けるか否か。抜くことが出来れば、次に控えるのが最高値更新の有無となる。

私としては、円建て価格が8,000円を突破したものの、なお上下動はあれども上昇基調は続くものと捉えている。

もっとも、NY金の眼前には上値を抑える材料が控えている。米連邦準備制度理事会(FRB)が5月以降、金融引き締めを加速させる意向を示しており、市場環境としては明らかに強い向かい風が吹いている。

連休前の最後の取引となった4月14日の米債市場では、10年債の利回りは2.828%と2018年12月以来の水準まで上昇して取引を終えている。米長期金利の上昇に沿って米ドルが主要通貨に対し買われ、ドル指数(DXY)も一時100.71と、2020年4月以来の水準まで上昇している。

この米ドル金利とドル指数の上昇に上値を押さえられながらも、水準を切り上げたのが先週のNY金だった。なお加速しているインフレや先行きの見通せない地政学リスク(対ロシア制裁を含む広範囲のウクライナ情勢)などに対する根強いヘッジ買いが見られていることによる。

金(ゴールド)に対し連日安値更新の日本円

ここに来て連日の最高値更新が続いている円建て国内価格だが、これまでは40年以上にわたり過去最高値を更新できない状況が続いてきた。

金市場版バブル相場と指摘される1979年秋から1980年年始にかけての米ドル建て価格急騰に合わせて記録した6,495円が過去最高値として長らく維持されてきた経緯がある。1980年(昭和55年)1月21日の金現物の店頭小売価格がそれで、当時、消費税はなく日本では金先物市場もなかった。この時に記録した米ドル建て最高値が850ドルだったが、更新されたのは2008年1月のことだ。

一方、円建て最高値が更新されたのは、コロナ禍の金融経済混乱の中で米ドル建て価格が過去最高値の更新に至った2020年7月27日のこと。JPX金がこの日の終値で6,580円を付け、店頭小売価格(税抜き)も6,500円台となった。40年6ヶ月ぶりの円建て最高値更新だった。

米ドル建て価格が2008年1月に28年ぶりに過去最高値を更新した前後に、ユーロや英ポンドなど主要通貨建て金価格もすべて高値を更新していた。その中で円建て金のみが高値更新に至らず、米ドル建てから12年半遅れの2020年7月になってやっと更新されたのだった。なぜ円建て価格のみ未更新だったのか。それは日本円が強かったことによる。

金価格が自国通貨建てで過去最高値を更新する状況を、視点を変え「金(ゴールド)」から通貨を見た場合、円以外の通貨は軒並みゴールドに対し先んじて減価していたことを表す。

金価格の上昇とは、一定金額で買える金の量が減っていることを表すことになる。この状態を「ゴールドに負けている」と表現するならば、ゴールドに唯一負けていない(減価していない)唯一の通貨が日本円だった。その日本円もついにゴールドに負ける日がやってきたのが2020年7月27日だった。

2020年7月はその後もNY金の上昇が続き8月に入って終値で2,000ドル台に乗せ、前述のように8月7日に2,089.20ドルの高値まで買われ、この価格が現在に至る過去最高値となっている。JPX金はその際につけた7,032円が最高値となっていた。その際の高値を今回ロシアによるウクライナ侵攻前の2月21日に更新しており、以後、先週末に至るまで高値更新の動きが続いているわけだ。

無国籍通貨として存在感を高める金(ゴールド)

2020年8月の円建て価格の40年半ぶりの高値更新時と足元で高値更新を続ける価格動向の大きな違いは、上昇の背景の違いにある。2020年当時は米ドル建て価格の上昇に伴い高値を更新した一方で、現在は日本円の急速な減価(円安)によりもたらされている。つまり同じ高値更新でも質的に異なる。

足元の主要通貨に対する円の独歩安は、内外金融政策の方向性の違いによる内外金利差拡大が指摘される。そこに原油などエネルギー価格高騰を背景に日本の経常収支赤字化に対する懸念も台頭した。

すでに足元の円安については輸出を通じた景気押し上げ効果よりも、円建て輸入価格の高騰による貿易収支の大幅悪化など、そのデメリットが強く意識され始めている。一連の円安が全般的な「日本売り」につながるまでには至っていないが、流れとしてはその懸念も膨らむ。

そうした事態に備えた金保有という側面が、ここにきて日本国内での金購入に繋がっている。私はすでに現物を保有する投資家には、ホールドを勧める。

私は2020年8月に「通貨の凋落で金急騰がはじまる!」というタイトルの書籍を上梓した(宝島社)。最終章で日本円の減価による円建て金価格の上昇について言及した。足元で起きている国内金価格の急騰はまさにそうした現象だが、米ドルもまた固有の懸念材料を抱えている。

新型コロナ禍に対する経済対応で、FRBはデフレを恐れるがゆえに、明らかに米ドルを刷り過ぎ、今その是正に乗り出そうとしている。「現在のバランスシートは明らかに過大」というブレイナード理事を含めFRB高官の多くがここにきて同様の発言を繰り返しているのはそのためだ。

為替市場はいわば「通貨の弱さ比べの場」になっている。ウクライナ有事も加わり比較優位に立つ米ドルが安全通貨として買われている。その中で無国籍通貨としての「金(ゴールド)」が存在感を増している。

【図表】ゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週の展望:NY金は2,000ドルを伺う動き、JPX金は7,900~8,250円を想定

ロシア軍が再び攻勢を強める中でウクライナ情勢に対する市場の関心が高まっている。3月上旬にかけて地政学リスクに対する警戒が強まったが、その第2波とも言うべき市場環境が生まれる可能性がありそうだ。

米国関連の指標発表は住宅市場に限られることから、先週に続き予定されている地区連銀総裁による講演が注目材料となりそうだ。先週は、米長期金利とドル指数の上昇が目立ち、いずれも金の上値を抑えることになった。

今週もその傾向は続くと思われるが、逆風の中でNY金は2000ドルの大台を試すものと思われる。一方で、国内価格は引き続き為替要因が大きく影響する展開になりそうだ。想定レンジはNY金1,960~2,050ドル、JPX金7,900~8,250円を見込んでいる。