先週、米国株式市場は金曜日が聖金曜日(グッド・フライデー)で休場だったため、4日間の商いでしたが、軟調な展開で終わっています。先週1週間でS&P500は2.1%の下げ、ナスダック総合は2.6%の下げとなっています。ウクライナ情勢の解決の目処が立たない中、米国ではタカ派的な連銀高官のコメントを受け、10 年債券利回りは2018年来の高値である2.8%台に乗せ、マーケットは下落となりました。

企業経営陣によるガイダンスから見える今後の見通し

米国では第1四半期の決算発表が始まりました。まだ始まったばかりですが、企業のマネジメントによるガイダンスから今後の経済やインフレ、イノベーションについての見通しを垣間見ることができます。

今回の決算発表はウォール街の事前予想を下回りました。世界最大の銀行であるJPモルガン(JPM)のジェイミー・ダイモンCEOは、「我々は引き続き、少なくとも短期的に経済の見通しについては楽観視している。消費者やビジネスのバランスシート、そして消費支出も引き続き健全なレベルにある」と述べるとともに、インフレ高、サプライチェーンの懸念、ロシアによるウクライナ侵攻が地政学的、経済的な懸念材料であるとしています。

その一方、旅行や外食でのクレジットカードの利用は伸びています。このトレンドは、今後数四半期は継続すると見られています。カードローンの残高は前年同期比で11%増えているものの、未だコロナ前より低いレベルにあるとのことです。

世界最大の航空会社であるデルタ航空(DAL)のグレン・ハウエンスタイン社長は「航空業界は旺盛な消費者の需要を経験しており、ビジネスや国際トラベルの回復が加速している」と語り、同社のエド・バスチャンCEOは「ビジネスの再開、ビジネス客の回復のお陰で売上が増えた」としています。また、ダン・ジャンキCFOは「(同社の)燃料以外のコストについては2019年と比べて1桁半ばの改善が見込める」とコメントしています。

米国企業におけるテクノロジーの進化

また、テクノロジーのイノベーションが引き続き起きていることもうかがえます。

JPモルガンのダイモンCEOは法人向けにブロックチェーン技術を使い、リアルタイムの支払いができるシステムを構築中であることを語りました。

全米最大の中古車販売のカーマックス(KMX)のビル・ナッシュCEOは、最近開発した中古車の売り手に瞬時で現金を払うことができるオンラインテクノロジーは業界一位のポジションを強化しているとしています。

ソフトウエアメーカーのアドビ(ADBE)のシャンタヌ・ナラヤンCEOは、「エンターティメント、教育、企業であろうが、我々が見るところ全ての分野において、コンテンツはグローバル経済に活気を与えている」と述べています。

住宅建設会社ケービー・ホーム(KBH)はガイダンスの中で、2022年の同社の平均住宅販売価格は495,000ドル(約6,240万円)になるとの見通しを発表、これは前年比で17.1%の値上がりとなります。同社は目先の住宅価格の下落を予想していないようです。同社のジェフリー・メッツァーCEOは、住宅ローン金利の上昇による需要の低下は起きておらず、これは同社の顧客のバランシシートが健全であるためだとしています。

インフレへの懸念があるものの個人消費は堅調

良い話だけではありません。金利上昇の原因であるインフレへの懸念もうかがえます。

アルコール飲料会社のコンステレーション・ブランズ(STZ)のビル・ニューランズCEOは、「様々なサプライチェーンの試練、悪天候、インフレ上昇、消費者の好みの変化は同社にとって向かい風になっている」としています。

半導体のマイクロン・テクノロジー(MU)は、中国における政府主導のコロナ対策の都市封鎖は同社の西安工場の生産に悪影響を与えたと発表しています。

スポーツウエアのルルレモン・アスレティカ(LULU)は、引き続き戦略的な値上げを行なっていくとしています。

小売ドラッグストアーのウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)は、インフレは起きているが、そのほとんどを販売価格に転嫁できると見ているとコメントしています。

このようなコメントからうかがえるのは、引き続きインフレ懸念がある一方、ポジティブな材料としては、テクノロジーの進化は引き続き起きていること、米国経済の約7割を占める消費者の動向はしっかりしていることです。

決算発表が本格化するなか、各社の経営陣からどのようなコメントが出てくるか引き続き注目していきたいと思います。