長い「上ヒゲ」の示唆とは!?

3月の米ドル/円の月足チャートは、長大な米ドル陽線引けとなった(図表参照)。近年において長大な米ドル陽線引けの代表例は2016年11月、「トランプ・ラリー」と呼ばれた米ドル急騰相場で記録したもので、この時は翌12月にかけて米ドルは続伸し、高値も更新となった。今回も3月に記録した125円丁度近辺の米ドル高値をこの4月に更新するだろうか。

【図表】米ドル/円の月足チャートの推移(2015年~)
出所:マネックストレーダーFX

2016年11月と2022年3月の米ドル陽線では、「上ヒゲ」の長さの差が目立った。この場合の「上ヒゲ」とは、月中の米ドル高値と月末米ドル引け値の差だが、前者では僅か0.04円だったのに対し、後者は3円以上と長い「上ヒゲ」だった。経験的には、月足の「ヒゲ」が長い場合、一相場の終わりを示すケースが少なくなかった。

例えば、2015年後半~2016年前半にかけて米ドル急落が広がった中で、比較的長い米ドル陰線が続出した(図表参照)。具体的には、いわゆる「チャイナ・ショック」と呼ばれた米ドル急落が起こった2015年8月、日銀マイナス金利決定が円高のきっかけとなった2016年2月、そして「Brexit(英国のEU離脱)ショック」のあった2016年6月だ。

このうち、2015年8月と2016年6月に記録した米ドル安値は、その後しばらく更新されなかったのに対し、2016年2月の米ドル安値は、翌3月に早速更新されるところとなった。この3回の下ヒゲ(月中米ドル安値と月末米ドル引け値の差)は、2015年8月が5.21円、2016年2月が1.67円、そして2016年6月が4.397円だった。このように、米ドル陰線の場合も、月足の長い「下ヒゲ」は、結果的に下落相場の一段落となっていた。

米ドル急落から、一転して米ドル急反騰となり、上下に長大な「ヒゲ」を残したのは、いわゆる「コロナ・ショック」があった2020年3月だった。この時に記録した米ドル高安値とも、その後1年以上更新されることはなかった。

一方向への大きな動きは、かなりエネルギーを使うと考えられる。月足チャートの「ヒゲ」が長くなるのは、その後逆方向へ大きく動いたということで、それはそもそもエネルギー切れにより一相場が終わった可能性の示唆と解釈できる。そうではなくて、逆方向への動きが限られることで、「ヒゲ」が短い場合は、まだ同じ方向へさらに動くだけのエネルギーが残っている可能性の示唆ということではないか。

米利上げなどを受けた日米金利差拡大に沿った形で展開してきた米ドル高・円安の流れはなお続いている可能性が高そうだ。ただ、1ヶ月程度で一気に約10円といった具合に記録的なペースで米ドル高・円安が進み、その上で比較的大きく米ドル安・円高に戻すといった最近のプライス・パターンは、3月に記録した125円程度の米ドル高値を大きく更新するまで、予想以上に時間のかかる可能性も感じさせるものだ。