みなさん、こんにちは。株式市場はロシアによるウクライナ侵攻を契機に大きく下落した後、直近では日経平均が9連騰するなど、急速に盛り返してきたというところでしょうか。

まだ予断を許さない状況ではありますが、ロシアの侵攻停滞によって、(1分1秒でも早い戦闘終結が最重要であることは言うまでもありませんが)地政学面におけるかなりの悪材料は織り込み済みという認識が広がったように考えています。上値を追っていくにはまだまだ問題が山積している状況ではあるものの、次の展開に向けて目線を上げていくことが重要になってきたと位置付けます。

加速する円安相場

さて、今回は「円安」をテーマに採り上げてみたいと思います。3月28日週には、対米ドルの為替レートが6年7ヶ月ぶりに125円を割り込みました。3月の1ヶ月だけで実に10円も円安が一時的に進んだことになります。この円安が実体経済に影響を与えるのにはもう少し時間を要しますが、既に株式市場ではこの円安の影響をどんどん前倒しで織り込み始めているというのが実情でしょう。

ロシアによるウクライナ侵攻やコロナ禍、資源高、金融税制改訂観測などといった様々な要因も同時複合的に発生しているため、円安の影響が見え難くなってはいるのですが、この影響は今後徐々に浮彫りになってくると考えておきたいところです。

短期間で円安が進んだ背景とは

なお、短期間でここまで円安が進行したのは、日米の金利差拡大基調がより鮮明になってきたことに加え、「有事の米ドル買い」も背景にあると考えます。

かつては健全な財務基盤を背景に「有事の円買い」が通説となっていましたが、戦後の世界秩序が根本から覆りかねない状況において、世界最強・最大の経済と軍隊を持ち、基軸通貨である米ドルへの信認が高まったということなのでしょう。ご存知ない世代の方もおられるかもしれませんが、冷戦時には「有事は米ドル買い」こそが実は定石だったのです。

とすれば、円安水準は当面継続する可能性が否めません。国際秩序の変化に拠る米ドルの信認向上に加え、景気動向の制約を受ける日本当局の金利政策には半ば限界があると目されるためです。

円安メリットを享受した銘柄を見つけるポイント

では、今後円安水準が定着してくるとすれば、どういった株式投資戦略が有効なのかを考えてみましょう。定石通りのアプローチでは、自動車や電機といった輸出比率の高い企業群が円安メリット銘柄として認識されていました。円安によって輸出競争力が増すうえ、外貨収入も円換算で膨らむことになるからです。

しかし、そういった企業は今やかなり減少してしまったのも事実です。各社とも為替に業績が振り回される状況の回避を狙い、海外生産シフトの推進や輸入仕入れを増やして外貨の受払をバランスさせるなどの対策を推進してきた結果です。既に輸出企業だから円安メリットという単純な構図ではなくなってきているのです。

それでも、円安メリット銘柄の中心は輸出産業になるでしょう。ただし、国内生産比率の高いグローバル企業がその中核を担うことになるはずです。電子部品や精密機器、電子材料などでは、前述の電機や自動車とはやや様相が異なり、国内生産を主体としつつ、世界を相手にビジネスをしている企業が多数存在しています。

中には、高い品質を武器に圧倒的とも言える世界シェアを持っている企業も少なくありません。彼らは、円高時ならばその高いシェアを背景に米ドル建て価格の引き上げを(しようと思えば)実現できるだけの実力を有している企業群です。だからこそ、海外拠点に生産を敢えてシフトすることなく、国内操業で充分な国際競争力を保持できているのです。

言うまでもなく、円安時には米ドル建て価格に手を付けることなく円建ての売値が上昇することになります。まさに円安メリットをフルに享受できる企業群と言えるでしょう。こういった企業群は少し調べれば簡単に見つけ出すことができます。ポイントは、国内生産比率が高く、世界シェアが高いという点です。

海運や非鉄金属といった資源業界にも注目

また、私は海運や非鉄金属などの資源業界にも注目したいと思います。ここでもポイントは、売値が米ドル建ての国際市況で決まるコモディティということです。

コモディティは世界的に同じ規格が適用されているため、企業の差別化余地は決して大きくないものの、一定規模の需要が安定的に存在しています。そのため、円安で円建て売値が上昇すれば、それは利益率の改善に直結すると予想できるのです。

非鉄では鉱石輸入が、海運ではバンカーオイルなどが、いずれも輸入品であるために円安はコストアップとの懸念もあるかもしれませんが、コモディティの世界で原材料市況が製品市況を上回って上昇する(つまり、コストアップが売値上昇を上回る)ことはまずありません。これらは円安メリットの王道的構図で円安メリットを享受できる業界と位置付けられるのです。

ちなみに、これらコモディティの価格はインフレと強くリンクしていることも特徴に挙げられます。貨幣価値が減少(=インフレ)したとしても、コモディティの本質的は変わらない(=インフレに応じて価格が上昇する)ためです。世界的にインフレの影が忍び寄ってきている中、円安メリットのみならず、こういった切り口でもこれら業界への注目度は高いと考えます。