中国人民銀行は6月7日に1年物指標貸出金利と1年物指標預金金利をそれぞれ0.25%引き下げることを発表しました。利下げはおよそ3年半ぶり。これによって1年物指標貸出金利は6.56%から6.31%に、1年物指標預金金利は3.50%から3.25%となりました。そして、日本ではあまり報道されていませんが、もう1つ重要な発表がありました。それは中国人民銀行が金利設定のシステムを変更したことです。具体的には市中銀行は今後、預金金利については基準金利(3.25%)の110%まで金利を高く設定出来るようになり(従来は基準金利より高く設定出来なかった)、逆に貸出金利については基準金利(6.31%)の80%まで金利を低く設定出来るようになりました。(これまでは90%までの引き下げしか出来なかった。)

この金利設定方法の変更は消費者と借入れする企業にとってはプラスであり、銀行にとってはマイナスです。消費者にとっては、今回は利下げにもかかわらず、これまでより高い預金金利が設定されることになります。最終的に消費者の金利収入が増えれば消費拡大につながります。また、企業にとっては、最低貸出金利は従来の5.90%から5.05%へと、0.85%の利下げになりますので大きなインパクトがあると言えます。他方、銀行にとっては預金金利と貸出金利の差が小さくなりますから利ざやが減り、業績は、マイナスとなるでしょう。株式市場にとっては預金金利低下によって株式市場に資金が廻ってくることが期待出来ない点や、株式市場で大きなウェートを占める銀行にとってマイナスであることはマイナスですが、長期的には、金融改革が進むことには評価出来る面もあります。

なお、9日(土)に発表された5月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.0%の上昇となり、4月の3.4%を下回って約2年振りの低水準となりました。また、5月の中国鉱工業生産は9.6%増と4月の9.3%増をわずかに上回ったものの2ヶ月連続で2桁に及びませんでした。いずれも今後の更なる金融緩和を期待させる内容です。

もっとも、これまでも指摘してきたとおり、中国政府が性急な大規模対策を発表する可能性は低いままです。省エネ家電への補助金政策が発表されましたが、総額265億元という小さい規模ですし、規模の比較的大きなインフラプロジェクトが発表されるとしても秋の政権交代後になると思います。当面は調整局面が続き、欧州問題や米国のQE3の動向を睨みながら、政策待ちの中で買い場を探る展開が続きます。