前回、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙える既発債を紹介しました。

ただ債券の市場自体は大きくなく、いつでも「欲しい」と思える既発債が存在するとは限りません。注意深くアンテナを張っておく必要があります。
もちろん既発債に限らず、新発債でもタイミングよく販売時期に申込みをしないと手に入れられないものです。

タイミングといえば、外貨建て債券を検討するときに気になるのはその時点の為替水準と今後の為替予想です。

現在が歴史的円高の水準にあることは事実ですが、これ以上円高が進まないという保証があるわけではありません。満期時点(もしくは売却時点)で今より円安になって為替差益を得ることも外貨建て投資の期待の一つですよね。
しかしながら、この為替の値動きによって、インカムゲインを簡単に超える為替差損が発生するリスクもあります。

さて債券投資において「外国債券」でありながら外貨建てではない、つまり為替リスクのない債券も存在します。それならば、今後の為替の値動きを心配する必要はありませんね。

外国債券というのは発行市場、発行体、通貨のいずれかが外国である債券の総称です。

【1】 日本企業の外貨建て債券

【2】 海外市場(ユーロ市場)で発行された債券

【3】 海外の企業や団体等が発行する債券

上記はいずれも「外国債券」と呼べるものです。

【2】や【3】で円建てのものであれば為替リスクのない外国債券ということになります。なお、【3】で海外の市場ではなく、日本国内で発行し国内債にあたるものは「サムライ債」と呼ばれます。

円建てでは預金なみに低い利率になるはず・・・と思いませんか?
債券の利率は発行体の信用度、発行市場の状況、通貨などによって決まります。円建てであれば通貨は円ですから、世界で最も金利の低い通貨ということになりますが、発行体の信用度等によって「上乗せ金利」があるため円建てであっても発行時点で預金金利などより高い利率(クーポン)がつくことがあるのです。

したがってAAAの国債といった「無リスク(証券分析上の位置付けです)」資産であれば、相応の利率のある円建て資産となり、これは債務不履行に陥ることがない限り、満期までのインカムゲインの確保と満期時に100が戻ってくる投資となるわけです。

上述した「債務不履行に陥ることがない限り」というのは債券投資において最重要ポイントであるといえます。
過去には、円建ての国内債である「サムライ債」が債務不履行となった例がいくつかあります。有名なものでは2001年のアルゼンチンのサムライ債があります。
円建てで為替リスクがない、しかも国内債、発行体も「国」である、ということで、債券投資初心者の方を含め多くの日本の個人、団体がかなりの巨額投資をしていたため大問題となりました。

円建てであっても債券投資をする限り、発行体の信用リスクだけは注意をして、無事満期を迎えられるかどうか随時チェックをしておくようにしましょう。
廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員