ウクライナ情勢の影響でナスダックはベアマーケットに突入

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が続くなか、米国株の下落が続いています。そんななか、ナスダック総合は2021年11月19日の52週間の高値から今週月曜日(3月7日)までに20.09%下落しました。この下げに要した日数は108日です。これをもって同指数はベアマーケットに突入したことになります。

ベアマーケットとは、広範的な悲観論と否定的な投資家心理の中、株価が20%以上下落した状態のことです。今回のベアマーケットは1971年にナスダック総合株価指数が生まれてから13回目のことです。

【図表1】ナスダック総合52週高値からのベアマーケット(期間1971年~2022年)
※引値ベースで20%の調整のみ、その間20%以上のラリーがあった期間は除く
出所:ビスポークよりマネックス証券作成

このデータから分かることは、ナスダック総合が52週の高値からベアマーケットへ到達するまでの期間は平均102日(中央値は76日)となっています。

ベアマーケットの領域に入ればそれで終わりではありません。大体においてその後も下がり続け、52週の高値からの最終的な底までの下落率の平均は33%(中央値は30%)となっています。

ベアマーケットに達した後、平均で123日(中央値は40日)かけて大底を確認します。つまり、これまで52週の高値からベアマーケットの底を確認するまで平均で225日(中央値99日)かかったことになっています。

今回のベアマーケットについては、2021年11月19日から2022年3月7日まで108日と、これまでの平均の102日より6日長く、過去の中央値である76日より32日長くかかって起きています。

【図表2】ベアマーケット基準値に到達以降のナスダック総合のパフォーマンス中央値(期間1971年~2022年)
出所:ビスポークよりマネックス証券作成

ナスダックはベアマーケット入り後、時間の経過とともに高い確率で上昇

肝心のその後、つまりナスダック総合が20%下落した後の同指数のパフォーマンスですが、1週間後は平均+0.6%(中央値は+1.2%)、1ヶ月後では平均+2.5%(同+0.4%)、3ヶ月後は平均+11.8%(同+10.4%)、6ヶ月では平均+17.7%(同+11.1%)、12ヶ月後では平均+21.7%(同+16%)とそれぞれ上昇しています。
 
次にナスダックが20%下落した後、同指数がプラスになった確率は以下の通りです。1週間後(58.3%)、1ヶ月後(50%)、3ヶ月後(66.7%)、6ヶ月後(83.3%)、12ヶ月後(75%)

これまでの12回のベアマーケットで、ナスダック総合が1年後も下がったのは1973年の第一次オイルショック、変動相場制移行、ニクソンショック、2000年のドットコムバブルの崩壊、2009年の世界金融危機の時となっています。

「ベアマーケットに突入」と聞くと、これからナスダック総合がさらに大きく下がりそうだという錯覚を覚えてしまいそうです。しかし、過去の例を見ますと、ベアマーケットの領域に触れた後の同指数は、時間の経過とともに高い確率で上昇しています。

下落局面における投資の考え方

これまでのナスダック総合の下落は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻という最悪の事態のかなりの部分を織り込んでいると思われます。ただ、今後の戦争の行方は誰にもわかりません。

このような局面においては、売上、EPS、キャッシュフロー、株主還元策においても安心できるGAFAM+TN(GOOGL, AAPL, FB, AMZN, MSFT, TSLA, NVDA)のような大型銘柄への投資が相対的にリスクの低い投資ではないかと考えています。

また、今回のマーケット下落局面で売られ過ぎの銘柄については、今一度、企業の事業に変更がないかを確認しましょう。変わったのが株価だけであるという判断ができれば、それは基本的に事業価値と株価との乖離が拡大しただけであり、時間を分散しながらそれらに投資するのは正しいものと考えます。

(※)本原稿は2022年3月9日18時に執筆した時点の内容です。