中国人民銀行(中央銀行)は2012年5月12日、預金準備率を5月18日から0.5%引き下げると発表しました。これは5月10~11日に発表された中国の各種経済統計が中国経済の明らかなスローダウンを示すものであったためです。まず5月10日に中国海関総署が発表した4月の輸出と輸入の前年同月比の伸び率は4.9%増と0.3%増で、市場予想であった8.5%増と10.0%増を大幅に下回る結果となりました。
次に中国国家統計局が5月11日に発表した4月の鉱工業生産は前年同月比9.3%増に留まり、こちらも市場予想の12.2%増を大きく下回る実績でした。3月の11.9%増からも大きく減速しています。4月の小売売上高も3月の15.2%増から14.1%増に減速。さらに中国人民銀行が発表した4月の人民元建て新規融資額は6,818億元となり、3月の1兆100億元から急激に減速しています。これは資金需要減退を示すものです。
また、消費者物価指数(CPI)も下がっています。4月のCPIは3.4%増となり、3月3.6%増から更に落ち着いたものとなりました。ただ、経済指標の方が予想を上回るスローダウンであったのに対し、消費者物価指数は予想通りの落ち着き方でした。とはいえ、これらの経済指標発表後の中国本土市場は失望感から下落しています。経済は確かにスローダウンしているものの、依然としてインフレ圧力があるために中国政府は思い切った緩和策を実施することができないと見た投資家が多かったわけです。
しかし、現在の中国の状況は景気の底へ向けた最終コーナー付近にある状況です。物価上昇が落ち着く中、金融の緩和と経済指標の鈍化が同時進行する時期だと見ることができます。このあとも経済指標が鈍化を続ければ、ソフトランディングとなり、いよいよ景気サイクルの底打ち完了とともに株価の上昇反転開始となります。
但し、性急な金融緩和や景気刺激策はインフレなどの副作用を招くことを、2008年末に実施した4兆元の景気刺激策で中国政府は学びました。したがって投資家が期待するほど早いタイミングや大規模な実施は行われないでしょう。しかし、今回の預金準備率引き下げのように、緩やかにではありますが金融緩和が行われていることは間違いありません。少し時間はかかるでしょうが、いずれ、これ以上経済指標が悪化しなくなるタイミングが来ると考えられます。そこが景気の底です。株は短期的な経済指標に反応するので、底地点では安値で優良株が買える絶好の機会となりえるでしょう。更に言えば、中国の経済指標は確かに鈍化していますが、先進国の成長率水準から見れば、経済が物凄いスピードで長期成長している国に違いないと考えられます。