2021年、名優アンソニー・ホプキンスが「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞したことで話題になった映画「ファーザー」をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。同作品で、アンソニー・ホプキンスは認知症の父親役を演じています。記憶を徐々に失い、時間の感覚が薄れていく当事者の視点を巧みに描いた名作です。この映画を観ると、認知症の当事者の当惑がよくわかると同時に、家族による介護の大変さも垣間見ることができます。

公益社団法人「認知症の人と家族の会」による現役介護家族に関する調査では、認知症の方に必要な介護として、まずは服薬や生活のサポート(食品などの買い物、食事の用意、掃除のサポート)と並んで、お金の管理のサポートが挙げられています。

投資によって資産をどのように築いていくかという点は、皆さんの関心も高いでしょう。しかし、資産を築くだけでなく、将来的にその資産を管理・活用・継承していくために事前に認知症に関する知識を持っておくことも大切です。

そこで今回のコラムでは、認知症と予防策についてご紹介したいと思います。

認知症とは:「もの忘れ」とは違う

認知症とは、「さまざまな原因で脳の細胞が機能停止する、または働きが悪くなることによって、記憶・判断力の障害などが起こり、意識障害はないものの社会生活や対人関係に支障が出ている状態(およそ6か月以上継続)」をいいます。

混同されがちですが認知症は、「加齢によるもの忘れ」とは異なります。朝ごはんに「何を食べたのか(体験の一部)を忘れる」のがもの忘れ、朝ごはんを「食べたこと自体(体験自体)を忘れる」症状が認知症、と例えられる事が多いです。

生活習慣を改善して、認知症のリスク要素を軽減しよう
内閣府の「平成29年度版高齢社会白書」によると、65歳以上の認知症の頻度(有病率)は16.7%となっており、「ありふれた疾患」とも言えるかもしれません。では、認知症の予防策はあるのでしょうか。

認知症の危険因子(発症の危険性を高める可能性があるリスク要素)の研究では、そのうちの35%は変更可能と言われています。その内訳は以下の通りです。

【図表】
変更不可の要因:遺伝子7%、未知の要因58%
出所:Livingston G,. Lancet 2017

認知症の予防という観点では、生活習慣の改善によって、上記のようなリスク要素を排除することが重要です。

認知症予防の運動、コグニサイズとは

今回は、認知症の予防に取り組むため、認知症の危険因子の1つである運動不足の改善を企図して開発された「コグニサイズ」という運動を紹介します。

コグニサイズとは、計算やしりとり等を体の動きと組み合わせた運動のことです。(英語のコグニション (認知) とエクササイズ (運動) をあわせて「コグニサイズ」とした造語です)

コグニサイズは、運動で体の健康を促すと同時に、脳の活動を活発にすることを目的としています。

コグニサイズをやってみよう

ここで、「コグニサイズ」の1つをご紹介します。

「イチ、ニイ、サン、シ」と数をかぞえながら足踏みをしてください。
(その場で立っても、座ったままでも結構です。)

このとき、3の倍数のステップのときには、数を数えるのではなく、手を叩くようにしてみるとどうでしょうか。

足踏みにあわせて、「イチ、ニイ、パン!(手を叩く)、シ、ゴ、パン!(手を叩く)」といった具合です。やってみると意外と難しいと感じられるかと思います。

コグニサイズの学術的な裏付け

遊びのような運動ですが、コグニサイズは国立長寿医療研究センターによって開発された認知症予防プログラムで、学術的な裏付けのあるプログラムだとされています。国立長寿医療研究センターのパンフレットには、「MCI(軽度認知障害)高齢者を対象に、コグニサイズを含め、筋力トレーニングやバランストレーニング、有酸素運動からなる複合的運動プログラムを、週1回、40回実施した結果、記憶を中心とした認知機能の維持、改善の効果が認められました。」と書かれています。

同パンフレット上では、イラスト付きで各種運動が紹介されています。
「コグニサイズ 認知症予防に向けた運動」(国立長寿医療研究センター)https://www.ncgg.go.jp/ncgg-overview/pamphlet/documents/cogni.pdf

他にも、「コグニサイズ」をYouTubeで検索すると、様々な関連動画が観られますので、参考にされてみてはいかがでしょうか。なかには、読売新聞や、第一生命といった企業が、国立長寿医療研究センターの監修を受けて制作した本格的な動画もあります。

「人生100年時代」におけるマネックス証券の取組み

何歳になっても元気に投資を続けるためには、脳が健康であることが大切です。人生100年時代を見据えて、マネックス証券では認知症の予防や財産管理の対策についての情報提供にも力を入れています。

●関連記事:認知症になる前に知っておくべき「成年後見制度」「家族信託」の問題点と事前対策 

●関連記事:親や配偶者が突然、認知症に!家族間トラブルへの備え