週末土曜日は、全国セミナーを開催させていただきました。ご参加の皆さんありがとうございました。最後のパネル・ディスカッションの「今年の注目点」では、今回は5人のメンバーのうち3人が「インフレ」を挙げました。これだけ被るのは少々珍しいです。
確かに、前日に発表された昨年12月の日本の企業物価指数は前年比8.5%上昇と強烈な数字でした。消費者物価指数との差は8ポイントにも上りますから、早晩消費者に転嫁されると考えるのが自然でしょう。
若い方々にとって、モノの値段が一斉に、目に見えて上昇するというのは教科書だけの世界かもしれません。日本で年率2%以上物価が上昇したのは、消費税増税影響を除けば1990年代初頭が最後です。当時の上昇は今回同様、人件費の上昇や原料高に押されたことが主因でした。今回は、コロナからの回復による需要の急速な巻き返しも加わっています。
加えて、海外ではこの機を戦略的に生かす例も見られます。例えば、高級ブランド・シャネルは、昨年だけで4回、合計35%も値上げしました。私の記憶する定番バッグの価格は30万円前後でしたが、今やなんと約100万円です 。価格を引き上げることでプレミアム感を際立たせ、エルメス並みのステータスに仕立てようという意図があるようです。
日本企業は、残念ながらブランド力がある企業でも“値上げ力”が弱い印象があります。行列ができる人気のラーメン屋さんなら値上げしてもいいと思うのですが、値上げに慣れていない消費者に背を向けられないかという恐怖心からか、価格維持にこだわります。
しかし、今後予想されている賃上げとともに値上げの波が広がれば、値上げアレルギーも多少は緩和されるでしょう。そうなれば、唯一無二の商品・サービスには利益率改善の好機となるのではと思います。
90年代にはコカ・コーラやたばこなどの嗜好品が価格戦略で効果を上げたようですが、今回はどうでしょう。日本企業の価格改定は4月が通例です。これまでも消費税増税時にこの話題は出ましたが、今年は格別な年になりそうです。