2022年に提出する2021年(令和3年)分所得の確定申告は前年と比べて大きな変更点はありません。とはいえ、今回から便利になった点や注意したい点もいくつかあります。本記事ではそれらの変更点について解説します。

ふるさと納税の添付書類が簡素化

ふるさと納税の申告手続が簡素化されました。ふるさと納税は原則として所得税の確定申告が必要です。これまでは確定申告書に寄付先の自治体が発行する寄附金ごとの「寄附金の受領書」の添付が必要でした。しかし、2021年分の申告からは、例えば「ふるなび」や「さとふる」などのポータルサイトが発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」(※)の添付も認められるようになりました。

なおe-taxによる申告では、寄付金控除証明書の添付は省略できます。

(※)「寄附金控除に関する証明書」を発行することのできる事業者は、地方公共団体と特定寄附金の仲介に関する契約を締結している者であって、特定寄附金が支出された事実を適正かつ確実に管理することができると認められるものとして国税庁長官が指定した者とされています。

セルフメディケーション税制、書類の添付が不要に

セルフメディケーションとは、健康診断の受診や疾病予防などによって健康管理しつつ、軽微な症状であれば自主服薬で治すことです。それを支援するセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)では、一家で年間12,000円を超えて対象医薬品を購入した場合に、その超過分を所得から差し引き、税負担を軽減できます。

この適用を受ける場合、確定申告で医薬品の領収書を提出する必要はなく、各自で5年間保管すればよいとされています。一方で、従来は健康診断を受けたことの証明書など「健康の保持増進及び疾病の予防への取組を行ったことを明らかにする書類」(取組関係書類)の添付が必要でした。

しかし2021年分の申告からは、この「取組関係書類」の提出も不要となり、健康の保持増進への取組の内容を「特定一般用医薬品等購入費の明細書」に記載して提出すればよいこととなりました。但し、「取組関係書類」と「医薬品の領収書」は5年間ご自宅で保管する必要があります。

上場株式等に係る配当所得等の住民税の申告手続きが簡便に

上場株式等の配当所得等については、総合課税、申告分離課税、申告不要の3つの申告方法から自由に選択することができます。また、現在は所得税と住民税で異なる課税方式を選択することもできます(異なる申告方法を選択することのメリットについてはこちらの記事をご覧ください)。

従来は所得税と住民税で異なる課税方式を選択する場合、所得税を確定申告してさらに住民税の確定申告書を提出しなければならず、手間がかかっていました。

しかし2021年分と2022年分の申告においては、所得税の確定申告書の第2表の下の方にある住民税に関する事項の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に丸印を入れるだけで、「所得税は申告」「住民税は申告不要」を選択できます。

添付漏れに注意!経営セーフティ共済

思わぬ利益が出て何とか決算までに節税したいというときに、よく活用されるのが「中小企業倒産防止共済制度」、通称「経営セーフティ共済」です。

本来、この制度は取引先の倒産による経済的な損失に備えるための、中小企業や個人事業主向けの共済制度ですが、節税につながるという理由で活用している方も多いようです。経営セーフティ共済に支払った掛金(月額掛金5千円~20万円)は、全額必要経費となり、40ヶ月以上掛金を納付していると、掛金全額を解約手数料ゼロで払い戻すことが可能です。いわば、貯金が経費となるようなものです。

ただし、この制度は申告書に必要書類が添付されていなければ、必要経費として認められません。これまで個人事業主については、定まった書式の添付書類はありませんでした。しかし、2021年6月に国税庁は「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を公表しています。

定まった添付書類が公表されたこともあり、今後は添付漏れに対してより厳しい対応になると考えられますので、2021年に掛金を支払った方はご留意ください。

申告書は押印不要に

2022年の確定申告から押印が不要になりました。確定申告書や青色決算書などに「印」の文字はありません。

これ以外にも、最近では毎年のように確定申告書の様式(第一表・第二表)が少しずつ変わっています。そのため、確定申告の申告書用紙は必ず申告年のものを使用しましょう。

パソコン作成の申告書のe-Tax送信がより便利に

2022年1月からスマホを使ったパソコン作成の申告書のe-tax送信がより便利になりました。

パソコンで確定申告書を作成する際に、パソコン上に表示される2次元バーコード(QRコード)をスマホ(マイナンバーカード読み取り対応)のアプリで読み取ることにより、マイナンバーカード方式でのe-Tax送信ができます。従来と異なり、パソコンの事前の設定は不要となります。

2021年(2020年分所得)確定申告の変更点のおさらい:青色申告特別控除額

2021年の確定申告の変更点のなかで、自営業者(フリーランス)や不動産貸付業などに関係する青色申告特別控除額について再確認しましょう。

自営業者(フリーランス)や不動産貸付業をしている人で青色申告により確定申告をしている場合は、青色申告特別控除額を差し引くことができます。青色申告特別控除額は日々の取引を記録して帳簿を作成し、それを7年間保存している場合の特典です。これらの記帳作業や保管に手間や時間、費用がかかるために収入から最大65万円差し引くことができます。

2020年分の確定申告からは65万円の控除を受けるための要件が追加されています。その追加要件とはe-taxによる電子申告か、電子帳簿保存をしていることです。この追加要件を満たさない場合、55万円(または10万円)しか差し引くことができません。

【図表】
出所:筆者作成

65万円控除を受けるにあたって電子帳簿保存方式による方法はあまり一般的でないようです。

一方、e-taxによる電子申告は、比較的やりやすい方法といえます。自宅のパソコン等から国税庁のホームページの確定申告の画面の指示に従って、青色決算書や確定申告書を作成して電子申告すると65万円控除を受けられます。(もちろん、複式簿記での記帳をしているなどの要件を満たしている必要があります)

マイナンバーカードとICカードリーダライタ(またはマイナンバー読み取り対応のスマホ)があればe-taxによる電子申告ができます。また、マイナンバーカードがない場合は、運転免許証などの本人確認書類を持参して、税務署で利用者識別番号(ID)を発行してもらう方法があります。この利用者識別番号とe-Taxの暗証番号であるパスワードがあれば、e-Taxによる電子申告ができます。

国税庁の「確定申告特集」のウェブサイトでは、動画やQ&Aなどで確定申告について丁寧に説明されていますので、活用すると良いでしょう。