新型コロナウイルスからインフレへの対応へシフト

先週は、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする主要中央銀行の金融政策会合が立て続けに行われました。その結果判明したのは、ここにきて米・英・欧の中央銀行がともに「新型コロナウイルスへの対応」を優先する姿勢から目の前で進む「インフレへの対応」の方をより重要視する姿勢にシフトし始めているということです。

既知のとおり、米連邦公開市場委員会(FOMC)ではテーパリングのペース加速を決定し、参加メンバーらが2022年に3回、2023年に3回の利上げを想定していることも明らかになりました。

また、欧州中央銀行(ECB)理事会ではパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の2022年3月終了を再度確認し、終了後の具体策を詳細に示しました。いずれも大方予想されていたことではありましたが、FRBは予想以上にタカ派的、ECBは一部の期待ほどハト派寄りではなかったという印象も残りました。

英中央銀行は利上げを決定するも、市場にはリスク回避の懸念も

何より市場を驚かせたのは、英中央銀行が金融政策委員会(MPC)において0.15%の利上げを決定したことです。

周知のとおり、このところ英国では新型コロナウイルスの新規感染者数が爆発的に増加しており、行動規制などによる経済への影響も危惧されていることから「今回も利上げは見送られる」というのが事前の大方の見方でした。

それにも拘らず今回利上げを選択したのは、やはり「コロナ禍」よりも目の前の「インフレ高進」の方が経済に及ぼすリスクは高いと判断したためでしょう。

今回の「英中銀サプライズ」がベイリー総裁による市場とのコミュニケーション障害(対話を適切に行わなかったこと)にあったことは大いに憂慮されますが、インフレの抑圧に動くこと自体は適切な措置であると思われます。

その実、先にECBのラガルド総裁も「多くの人々がワクチン接種を済ませ、ブースター接種のキャンペーンも勢いを増している。結果、パンデミックの波とそれに伴う行動制限に社会はうまく対応するようになり、経済への打撃は減退している」と述べていました。

ただし、現実問題として目の前でオミクロン株への感染が世界で急激に拡大していることも事実です。いくら主要国の社会がウイルスとの「共存」の方法を徐々に把握しつつあるとはいえ、行動規制などで経済が多少なりともダメージを被ることは免れ得ず、実際にそのことを危惧して米株価は先週12月17日には大幅な下げを演じていました。

結果、市場のムードはリスク回避に傾きやすくなっており、同時に米ドルが買われやすくもなっています。

つまり、リスク回避の買いが入りやすい米ドルに対して英ポンドやユーロの上値は今後も押さえられやすいと考えられ、実際に先週12月17日のユーロ/米ドルは同日の高値から100ポイント超もの下落を見ました。

同時に、英ポンド/米ドルも同日高値から100ポイント超の下落となりましたが、ユーロ/英ポンドも弱含みの展開を続けており、それだけ余計にユーロ/米ドルの上値は押さえられやすくなると考えられます。

仮に、ユーロ/米ドルが再び21日移動平均線を上抜ける場面があったとしても、やはり再び1.1300-50ドル処までの戻りがあれば、そこは戻り売りで対応したいと考えます。

米ドル/円は米ドル買いが優勢か

一方、米ドル/円はなおも一目均衡表の日足「雲」上限に下値を支持されており、先週12月15、16日には一時114.20-30円処までの戻りを試す動きとなりました。

同水準で上値を押さえられたことから一旦はロング勢が見切り売りを出し、12月17日には欧米株安の進行に伴うリスク回避の円買いが進む場面もありましたが、最終的には113.70-75円処まで値を戻しており、リスク回避の米ドル買いが勝る格好となりました。

目先は、再び114.20-30円処を上抜けるかどうかに注目したいところです。すんなり上抜ければ、再び115円処を試す可能性も十分にあると見ています。